ここまでのあらすじ
天杉進也と姫口梨子は、ある日突然学校ごと異世界へと転移してしまう。
見たこともない怪物に襲われ殺されかける二人だが、いつの間にか手にしていた剣の力によってこれを撃退。他の生徒たちも各々剣を手に入れ、共に危難へと立ち向かう。
啓示により、生徒たちをこの異世界イールドへと召喚したのは、女神ダフニの仕業であることが判明する。
一行は元の世界へ帰る方法を求めて、生徒会長の紅峰を筆頭に、部隊を編成する。
だが周囲は草木ひとつ生えない不毛の大地で、しかも怪物たちが跋扈している。食糧も安全も確保できない中、女神から授かった神剣の力を頼りに苦難を乗り越えていく。
そして徐々に拠点の拡充と探索を繰り返すうち、ようやく異世界の住人との邂逅を果たす。
神剣の能力と権勢により意思の疎通は難なく進み、生徒たちはストレーミア王国との繋がりを得るところまでやってきた。
しかしそんな中、進也は独り燻っていた。
これまでの戦いで、自分は他人のために剣を振るってきたつもりはない。にもかかわらず、熊崎や紅峰を始めとした他の生徒たちと同じ場所に立たされていることに、強い違和感を抱いていた。
自分はそんな上等なものではない。普通の人間からすれば恐怖しか生まない、檎台相司と同じ、社会から弾かれるべき異物なのだと思い込む。
その思いがいよいよ募った時、他ならぬ檎台相司に、進也は自身の葛藤を見抜かれる。元の世界へ帰るつもりが無いことを。
まともな人間のそばにいるべきではないという自虐の念から生まれた、異世界へ自分を廃棄するという考え。それを見透かされた進也は、ここまで培ってきた繋がり全てを捨ててでも、自らの居場所を見つけなければならないと決意する。
邪魔者を文字通り全て斬り伏せ、進也は学校を離れる。梨子さえも置き去りにして。
その背中を、ただ一人、鹿沼皐月だけが追いかけていく。