初めから壊れているということ
異世界転移ものです。ふわっとしたファンタジーです。緻密な設定やハーレム要素は(多分)ありません。女の子も出てきますが、主人公以外の男の子も活躍します。させたい。誤字・脱字・表記ゆれ・日本語おかしい等ありましたらご指摘お願いします。適宜修正します。「この設定おかしいやろ」という点に関しては基本ふわっとしているのでお見逃しください。
女の手が覆いかぶさる。
「愛しているのよ」
ふざけるな。
「どうして見てくれないの?」
見るわけがない。
この女は自分のことなど見ていないからだ。
父の顔を代わりに見ているだけのくせに。
「母さんの言う通りにしなさい」
縛り付ける言葉。自分にとってはさながら呪いだ。
ただの子供に逆らう知恵も力もありはしない。
手の平を肌に重ね、悪夢に微睡む。
「――――」
父が無言でこちらを見ている。
何の表情も浮かんでいない。
まるで物を見るように、濁った眼を向けてくる。
「クズめ」
ふざけるな。
なんでこうなったと思っている。
お前が母に何もしないからだ。
愛しも遠ざけもしなかったからだ。
代わりを求めることさえ止めなかったくせに、どうして責められなければならない?
どうして、お前たちの思い通りになんて、されなければならないんだ?
気に食わなかった。
何もかも壊してしまいたかった。
母を愛しもしない父のことも。
自分の子供を父に見立てて愛そうとする母も。
――そしてそれをどうにもできない自分自身の弱さも。