閑話
「サナギ殿、あなたはこの島々の外からいらしたと聞いている。どれだけのことを学んだか、言ってみるがいい。間違えたところは訂正してやろう」
アキノヒはできるだけ自分を大きく見せようと、身体をできるだけ反らしてサナギを見つめる。その様子が少しおかしくなって、サナギは恐怖のない息をふっと吐き出した。目の前の雀の意図は汲み取れなかったが、どうせまだ時間はかかるのだ。外を見なくていいように、本で覚えたことを復唱してみた。
華表諸島は時鐘島を本島とし、萍水島、潤島、馥郁島、凍晴島、鶯舌島、名花島、清暉島、潜竜島の九つの島から成る。どの島にも潜竜と同じく動物と人間が混じった姿の守り神がおわすこと、島を護っているということはサナギも本を読んで知っていたが、実際に会うとなると緊張してしまう。
「いいぞ」
アキノヒの肯定に、千松の手を握る力が緩んだ。
「それでは、各島々の守り神様の名を答えてみよ」
「潜竜島は玲瓏ヒ、玲瓏スイ。龍の神様が二人」
「神は柱で数える。二柱が正しい」
言い直してアキノヒの肯くのを見、サナギは安心して続けていく。すべて言い終えると、次は島の特徴を答えるよう問題を出された。
「時鐘島……学校とか、大きなお店とか、病院とか、いろんなものがある」
「そうだ。本土が近く、人口も集中している。人間も妖怪も、他の島よりは多いが魍魎の類は他より少ない。人間が多いことにより、立ち入り禁止とされる場所が多いのも特徴の一つだ」
人間が多いと、妖怪の類の住処に人間が知らずに──あるいは度胸試しでわざと入ってしまうこともよくあるらしい。それらの双方の被害を避けるためにも、解りやすく立ち入り禁止という標識があるという。
「大きい島にも、そういう困ったことはあるんだねぇ」
「大きい島だからこそ、と言えるかもしれん」
大きい島だからか。サナギはそう呟くと、これから行く本島を思い出してみた。
「時鐘島を最後にできないかな」
サナギはいまだ夢の中にいる千松を見下ろして呟く。
二人が華表諸島で最初に足を踏み入れたのが時鐘島だったが、いい思い出がない。そこの護役が千松に敵意を向け、二人は海に逃げる羽目になってしまったのだ。
それをアキノヒに言うと、いい顔はされなかった。
「護役となられた今なら、守り神様も見えよう。その時のことを話すことしかそなたたちにできることはないが、なに、神罰を加えられることはないだろう」
「千松くんを祓わないようにしてくれるかな」
アキノヒは答えなかった。その決定を下すのは守り神であって、自分ではないのだから。
ただ、玲瓏の双子龍が受け入れたのだ。その事実をサナギが気づけば、予想はできるだろうに。




