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鳥居の島  作者: 青竹煤
始めに
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はじめに

 妖怪や怪物、神様が当たり前に存在する世界。けれどそれを見ることができる人とできない人がいる世界の、とある守り神様に護られた島々のお話。 

 

―――――――――――――――――――――――――――

 

 守護霊といえば、読者の大半は「先祖霊」を思い浮かべるのではないだろうか。既にこの世にはいない自分の先祖が子孫を護るために背後に憑き、様々な危険から護ってくれるものだ。それを見ることができる者もいるため、守護霊は先祖霊であるということは広く知られている。


 筆者もそれが唯一無二の事実であると思っていたのだが、とある地方ではそうではないとの話を聞き、居ても立ってもいられずに編集室を飛び出して取材に向かった。


 その地方というのは、氷魚見(ひおみ)である。

 氷魚見地方は我が国の海に面しており、冬の三か月の寒さは厳しく、夏の三か月となると海水浴客で賑わいを見せるところだ。


 しかし、氷魚見の○○町の食堂で働いている「見える人」に訊いても、先祖霊以外の守護霊は見たことがないと言う。これではただの旅行になってしまうと慌てた筆者に、その店員は思い出したかのように両手を打った。

 「もしかして、華表(かひょう)諸島の守護霊じゃないかしら」


 華表諸島のことなら、かつて我々も取材をしに訪れたことがある。

 九つの島それぞれに守り神様がおわすと言われ、一時期はパワースポットともてはやされた島々のことを、覚えている読者も少なくないことだろう。テレビも携帯電話もなく、タイヤが三つの古い型の車が走る、どこか時代に取り残されたかのような土地である。


 ○○町の隣町△△△から、観光用の定期便が出ていたはずだ。食堂の夫人が言うには、今では観光に訪れる者は少なくなっており、三時間に一本の割合で船が出ているとのこと。筆者は食事を終えると、すぐに○○町を後にした。

 △△△町は○○町と比べると大人しい様子の町である。


 定期船の待合室で船を待っていると、一人の青年が話しかけてきた。青年は二十代ほどの見た目で、細い体に似合わず大荷物を持っていた。聞けば、彼の祖父が独り暮らしをしており、時々こうして必要なものを買い出しに行っては届けてやるのだそうだ。


 筆者の目的を聞きたがった彼に理由を教えると、彼は「ははぁ」と面白そうに話し始めた。その祖父というのが守護霊に詳しく、彼は幼少期からいろいろ聞いていたらしい。


 守護霊は全て、人間以外の動物の姿をしているという。理由はわからないが、そういうことになっているらしい。そして、親が生まれたばかりの子に守護霊を降ろすということも聞いた。厳密に言えば親が守護霊を呼ぶのではなく、専門の職を持つ人物に頼んで降ろすのだと。


 「俺にはいないんですよ、守護霊は」

 彼はあっけらかんと笑った。

 「大昔には守護霊(しゅごれい)()きはたくさんいたらしいんですけど、今じゃもう廃れちゃって」

 彼は小さい頃に、祖父が口にしていたやり方を真似て自己流で降ろしてみようとしたのだが、失敗したという。筆者はそのやり方をご教示願えないかと彼に頼んでみると、すんなりと教えてもらえた。

 「記憶に違いはありませんよ」彼は自信を持って言った。「小学校を卒業するまで、しつこく呼んでましたから」


―――――――――――――――――――――――――――

 

 雑誌はその記事のページが開かれたまま。窓から入ってくる春の風が微かに紙の端をめくり上げ、それを読んでいた少女の細い髪、頬骨の浮いた顔を優しく撫でて病室の空気に溶けてしまった。





 

読んでくださってありがとうございます。

実力不足なので、ところどころ訂正や書き直しをしていく予定です。



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