第2話:再び
「創世記」
禁断の果実を食べた結果
原罪として人間は必ず死ぬようになり、男には労働の苦役が、
女には男に支配され出産の苦しみが、もたらされるようになった
蛇は神の呪いを受け地を這いずることになった
呪いを解き放つ為の舞台は整った
土人形から生まれた生命を媒介にし、憎き神共に復讐を果たす
遂に見つけた片割れを利用しエデンに戻る為に
セフィラを集め
エデンを創造し
我は新たな神になる!
さぁ、始めよう
「絶対に覆らないこの世界をお前はどう選択するのかを」
不気味な笑みを浮かべながら、リヴァイアサンは言った
あの日
私達は、久しぶりに会って呑んでいた
私は当時付き合っていた、彼に魅せつける為に彼を呼んだのかもしれない
開夢とは、中学時代のクラスメートだった
何やっても冴えないそんな存在だった彼
だけど、何故か私の心は彼に救いを求めたのかもしれない
私は、愚痴ばかり言っていたが彼は全てを受け止めてくれた
辛いことも悲しいことも、そんな彼の優しさがとても心地良かった
そんな私に彼は
「・・・・綺麗になったね」
と照れながら言ってくれた
私は、この一言で彼がずっと私を好きで居てくれたんだなと思った
「また、逢えないかな?」
恥ずかしげに私は彼に聞いてみた
彼は
「・・・・あぁ、俺で良ければいつでも!」
満面の笑みで言ってくれた
それが、私と彼が交わした最後の言葉だった
嬉しさのあまりか、私は少し浮かれていた
そして、何かに「導かれるように」帰路へと急いだ私達に
突然突っ込んできた車に跳ねられた
気がついた時には、血に染まった彼が横たわっていた
彼は私をかばって死んでしまったのだ
「ああああ・・・・」
涙と悲しみからでた声だった
彼の死を目の当たりにして
私は彼の事が好きだったのを知った
冷たくなっていく開夢を抱きしめながら
私は、この残酷な世界を呪った
「開夢の居ない世界なんて、滅んでしまえばいいんだ!」
その結果、リヴァイアサンに捕まり無数の入り口のある白い世界に取り込まれた
私は覆らない日を永遠と繰り返し、彼の生きている世界を取り戻す為に
無数にあるドアを開ける
「待っててね・・・・・開夢。もうすぐ、だから・・・・」
並行世界
「どーしたんだい?」
不思議そうに私の顔を見ながら開夢は言った
「ううん・・・・何でも無いの」
心配そうに私の顔を見つめる彼に私はそう答えた
私の寿命1日に対しての対価は、彼の生きていた時間60分前
限られた時間に彼を救うチャンスを私は見つけなければならない
私に出来る事は、それしかなかった
何度も何度も、彼の死を見てきた
正直、繰り返される日々が少しづつ私の心を壊し始める
心が痛み悲しみが止まらなかった
それでも、彼を助けたい一心で同じ日同じ時間を繰り返すしかなった
「正直ね・・・・私、開夢が好きなのかもしれない」
突然言った私の言葉に対して、彼はきょとんとした顔をしながら言った
「・・・・ありがとう。俺も・・・・中学時代から君の事がずっと好きだった」
照れ隠しに言ってくれた
そして、二人で乾杯しながら最近どうしてただとか
昔はこうだったとか、他愛の無い会話と時間がゆっくりと流れた
「さて、そろそろ時間だし、帰ろうか?」
会計を済まし帰路についく
もうすぐ、あの時間がくる
車の中で、私はある考えを実行しようとしていた
それはリスクがあるのは重々承知の上だった
私に出来ることは、それしか無いと思ったからだ
「ねぇ?開夢・・・・また、逢えないかな?」
私は、決心して言った
「俺で良ければ、いつでも」
「絶対だよ?」
「あぁ、何なら明日も休みだし・・・・水族館でも行くか?」
「・・・・うん」
そして運命の時を迎える
補足説明
創世記人を騙し禁断の果実を食べさせたのが蛇である
禁断の果実については、諸説あるが「りんご」「いちじく」が有能な説である
因みに股間を隠した葉は、いちじくのモノである