表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
決して戦ってはいけません。  作者: グリーンティ
第一章『降臨編』
5/24

転機の四歩目

(そういうわけで、君には魔力を制御する術を与える代わりに、神獣の仕事の代わりをやってもらいたいんだよ。)


「・・・・・・」

会話の流れから予想していたけれど釈然としない。

仙人は続ける。


(つまりは、世界の守護者『見習い』だね。なーに、簡単なことだから大丈夫。世界中を旅しながら、世界のバランスを傾ける存在を間引くだけだよ。)


「俺にできると思うのか?」


(うん。できるだけの力を持ってるからね。多分自覚は持てていないようだからいうけど、神獣を殺すっていうのは並大抵のことじゃないんだ。特A級の魔物でさえ、近づくことすらできない。間違って、触れることができる程に近寄ってしまったら、あっという間に浄化され消滅する。耐えられるのは魔王級の魔物、一部の古代竜種、人間で言えば真なる勇者か聖人、聖女。外れものである仙人か、天人・・・それくらいかなぁ。因みに、これらは耐えられるだけで、万全な状態で居られるわけじゃない。恐らく全員が集まっても倒すことなんて不可能と言っていいんじゃないかな。神獣ってのは、それほどの存在さ!)


「そうか。」

魔王とか勇者とか古代竜種とかいるのか。

完全に王道ファンタジーだな。


(んん?ちゃんと聞いているのかい。はっ!まさか強い事を自覚して、非道なことを考えていないかい?あわわわわ・・・)


「聞いてるよ。わざとらしく怯えないでくれ。その話は受け入れる気はあるんだが、聞きたいことが幾つかある。」


(何かな?)


「俺は元の世界に帰れるのか?世界を渡る方法が存在するなら教えて欲しい。あと、この神獣の代わりをする期間はどれくらいになる?俺は元の世界に戻りたいから、ずっといる訳にはいかないんだ。」


その質問の回答には少し間があった。仙人は先ほどのような軽薄さを無くした声色で話し始める。


(世界を渡る方法があるか、ね。その質問をボクは20回程聞いたよ。異世界から来たという様々な者たち。勇者や賢者、王族や奴隷、竜種や魔人、果てには魔物までいた。)


異世界転生。そんな言葉が頭に浮かぶ。

魔物に生まれ変わるって・・・


(ボクの返答は「知らない。」だよ。だけれど、彼らから話を聞いて分かったことはある。彼らはボクの所に来る前に、あらゆる場所へ行っていたみたいだからね。)


ひとつ、『世界樹の森』

世界の始まりからあったとされる神聖な大樹を中心に広がる広大な森。エルフや妖精、精霊が住まい、あらゆる歴史や情報が保管されている。人間が使うようになった魔法はここから生まれたとされる。


ひとつ、『天空城塞エルディア』

寿命のない天人が住まう空飛ぶ島。天候、空間、時空を操る魔法の最先端を行く。

それらを用いて島が、空を浮いているのだという。


ひとつ、『魔導王朝マーリアン』

様々な人種が暮らし、世界中の魔術体系が集る魔法使いの国。

効率的な魔術の研究、新魔術の開発を行い、核撃魔術から生活用まであらゆる魔法がここに集約する。


ひとつ、『神獣の丘』

年に数回神獣の一柱が羽を休める神聖な場所。その、周囲には眷属である獣、獣人が多数生活し種族毎に風変わりな固有能力を持つ。


ひとつ、『神龍の山』

神獣の一柱である神龍が生息する山。

古代竜種から龍人まで、龍に纏わる種族の聖地とされる。

神龍こそ、この世界を生み出したという逸話があるらしい。


(彼らの話だとね。それぞれの場所に行って調べたけれど、結局見つからなかったみたいだよ。神龍と話をしたなんて、当時は信じられなかったものだけれど、確認したら本当だったよ。)


「つまり、現存する世界中の魔法では、帰還は不可能・・・。あと可能性があるのは、魔導王朝で新魔法の開発でってことか。」


(希望的にはそうなるね。ただ、意欲的だった異世界人の研究員は少し前に死んじゃったみたいでね。今は後継が細々やってるくらいかな。あとは、不要扱いされなければ続けられるとは思うけど。)


「そうか、分かった。とりあえず、同郷の人間に会って話をしないと始まらないな。その20人はそれぞれどこに住んでいるんだ?」


(ん?あ〜、ごめんよ。彼らの大半は多分生きていて数人かもしれない。人の寿命は短いからね。)


「は?待ってくれ。ええと、その異世界人達が来たのってどれくらい前なんだ?」


(最初に来た勇者は500年くらい前だったかな。それからちらほらやって来て、最近だと8年前にやって来たインクラッドの学生が最後になるね。)


随分と長生きな仙人様だな。

いや、それよりも。

勇者や王族や竜種が探してなお、帰還方法が見つかっていないとは。

もしかして、元の世界への帰還って無理ゲーなんじゃないだろうか。

いや、諦めるにはまだ早い。なんとかなる!そう思おう。


「分かった。あとで、生きている異世界人の場所を教えてくれ。とりあえず、動けるようになるのが先だ!あ、もう一つの質問はどうなんだ?いつまで神獣の代わりをすればいいんだ?」


(それについては安心していいよ。君が殺した神獣『不死鳥フェニックス』は、文字通り死なないからね。5年もすれば、魔力溜まりから発生する。つまり、期間は神獣の復活までだね。)


フェニックスで合っていたのか。いや、そう脳内で変換されているのか?言語体系もまた調べないといけないな。


「5年か・・・短いようで長いな。いや、短いと考えることにするよ。」


聞きたいことは大体聞けただろう。

後は自分で調べるか、気付いた時に聞くとしよう。



「仙人様。俺は、神獣の代わりとして、世界の守護者をすることを受け入れる。その為に、魔力の制御を教えて欲しい。」


(喜んで。)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ