希望の三歩目
「隕石衝突地点みたいだな・・・」
最初の広場作成が、なんと可愛らしいものだったのか。そう思えるほど周囲の被害は甚大なものになっていた。
俺は今、クレーターのど真ん中に立ち尽くしている。
直径1キロメートルはありそうなクレーター。その円内には動植物が存在しない代わりに、様々な色の土が縞模様のように現れ、綺麗な文様となっている。まぁ、ただの地層なのだけれど。
周囲の木々が生い茂っていた場所は、もともと何も存在していなかったかのように、綺麗に消え去られている。
また、数百メートル先の距離で、且つ高さが目測50メートルくらいの場所に、折れ曲がっている木々が見えることから、今いる場所がさっきまでの地面より下に来ているのは間違いないようだ。
そんなことより。
上空から墜落して、更にわかったことがある。
俺はどうやら頑丈らしい。
あの高さから墜落しても、怪我を全くしない。逆に地上が大きなダメージを負ったような形になる。地上の今いる層に着地した際も、怪我どころか、良い運動になったような心地良い感覚になる。
最初からわかっていたことではあるが、非常に異常なことだった。
ファタジー世界なんてどうでもいいから帰りたくなってきた。
動くと破壊を撒き散らすなんてどんな罰ゲームだよ。する方もされる方も不幸にしかならない。
そもそも、この世界の人と交流することさえ出来ない異世界転移モノなんて、面白くないだろ!
そんな、考えに応えるよう。
どこかから、声が聞こえた。
(そこの君〜。ボクの声聞こえるかい?)
こいつ・・・直接脳内に!?
「誰だ!」
声に合わせて周囲に衝撃波が発せられるが、気にしない。
(危ないねぇ。まさかここまで衝撃が飛んでくるとは。まぁ、ボクの居場所は気にしないで。というか、知られたら君の魔力暴走の標的になっちゃうから気にしないでくれると助かるよ。うん、本当に。)
どこか飄々とした態度だが、慎重にこちらの様子を伺っているように感じる声。
ピリピリした雰囲気が、そこはかとなく感じられる。
(あ、やっと。ゲップが出たよ。微妙に苦しいよね。出ない時)
気のせいだったようだ。
「それで、あんたは何なんだよ。ここら辺の住人か?」
(いやいや。ボクはしがない仙人だよ。特定の場所には住んでいないし、魔の森は管轄外さ。それよりも、ボク達にとっては君が何者なのかが非常に気になるんだけどなぁ。もしかして、世界を破壊に来た大魔神だったりする?)
仙人ってこんなチャラチャラした雰囲気でいいのだろうか。もっと老人が悟りを開いてるようなイメージだったんだけれど。
「誰が大魔神だよ。俺はただの学生で、気付いたらここにいた。行動したら破壊活動になってしまうから、たった今までずっと困っているんだよ、仙人様。」
(ほほう、ただの学生ね。君はもしかしてニホンという言葉に心当たりがあったりするのかい?)
「え!?」
(いや、何。以前インクラッド魔法学校の学生がそんなことを言っていてねぇ。そっかそっか。その魔法制御の乱暴さは魔法に縁がなかったからなんだねぇ。)
「魔法学校、魔法って・・・やっぱりこの世界にはあるのか。」
(魔法を操れるものは極少数だけどね。まぁ、君にとって不運なことにその魔力は十全に扱うことは出来ないってことに尽きるね。実にもったいない。)
「俺は魔法が使えない・・・のか?」
(いや、使えるよ。ただ、量と質が非常に高いから、まともな制御は不可能なんだよ。指先程度の炎を燈そうとして、都市を消し飛ばす。それくらいの失敗が予想できると言っていいね。)
「大惨事じゃねぇか。・・・まぁ、いいや。仙人様、教えてくれ。この暴走状態はどうにかならないのか?この状態を見てわかるように、切実なんだ。」
(ある。というより、ボクはその為にここに来たからねぇ。世界の危機は見過ごせないのだよ。)
「世界?」
(君、神獣を殺したでしょ。)
覚えは・・・あった。
上空にいたフェニックス(仮)の事だろう。
俺が恐怖で雄叫びを上げた瞬間に、体が霧散するように消滅した哀れな鳥。
「あの鳥が世界にどういう関係があるんだ?」
(簡単なことだよ。神獣達は、世界の守護者として世界を徘徊しているんだ。バランスを壊すほど力を秘めた魔物を間引く為に世界を飛び回っている。その一柱を君が殺したため、押さえつけられていた魔物が動き始める。それも、非常に強力なモノがね。)
なるほど。
つまり、鍵なしの刑務所にパトロールとして雇われていた凄腕の内1人が居なくなり、一部無法地帯と化す・・・と。
なるほど
ごめんなさい。