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決して戦ってはいけません。  作者: グリーンティ
第一章『降臨編』
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不発の二歩目

本当に勘弁してほしい。

ユウキは心の底から絶叫した。


目の前の惨状から、さっきまで不明となっていた爆発の謎が解明出来てしまったことを理解する。




勇気ある一歩を踏み出すと、地に着いた足を起点に大きな爆発が生じたのだ。

その衝撃は前方へと走り、太陽に向かって駆けていく。木々を爆散させ、土を盛り返し、恐らくは、生息する生き物を飲み込んで勢いを殺さず嵐のように進んでいく。

俺の意思を汲み取ったかのように真っ直ぐ。どこまでも。


地平線が見える頃には、静寂が訪れていた。


こうして俺の勇気ある一歩は、新たな道を切り開いたのだ。物理的に。


そして、大きな二歩目は踏み出されることはなかった。


周囲の被害がこれ以上酷くなる前に、これは検証しなければならない。

詰まる所、俺の行動がこの現象の引き金になっているのは間違いないだろう。

できる限り小さく動いて、どういった現象が起きるか実験するべきだ。


実験その一。

手で軽く扇ぐ=大木が折れる。

木に向かって小さくひと扇ぎすると、手から尋常じゃない風が発生し大木の中頃からボキリと折れた。強くやったらサイクロンでも起こりそうな気がする。


実験その二

小さく進む=進行方向の物が破壊される

足の半分くらい歩を進めると、足先から衝撃が生まれ、目の前の木の残骸が吹き飛んだ。

勢いよく進むと、さっきみたいになるのか。


実験その三

小さくジャンプする=地面がひび割れる

3センチほど小さくジャンプすると、大地が若干揺れたと感じる。足は少し土に埋まってその周囲は小さくひび割れが走る。気のせいかもしれないが、標高が少し下がっている気がしないでもない。


なるほど。

俺のパワー(?)がすごい強い。


でも、俺はさっきまでそれなりに動いていた。考えるときも腕を組んでフラフラしていたし、ずっとその場に固まっていたわけではない。

その時にこんな破壊現象は起きなかった筈だ。これほどの爆発に気付かないほど俺は鈍くない。



違いがあるとすれば、意思があるか無意識での行動か、だろう。

意識的に行動しようとすれば、爆発が生じ、無意識ならば何も起きない。


試しに、適当な目標を決めて何も考えず歩いてみる。

結果。

目標が破壊された。


・・・目標を『決めた』ことが意思の範囲内なのか。


では、目標を物にせず、何か空想しながら体を動かそう。


ああ、夕闇が近付いている。

今日は野宿なのだろうか。カラスがギャーギャーと、遠くで鳴いている気がする。

カラスが鳴くから帰りたい。そういえば、この世界にカラスっているのだろうか。

さっきの鳴き声も遥か上空で飛んでいる鳥の影からだろうし、あれは何だろう。

妙に長い尾羽が付いているように見える。


いや、尾羽だけじゃない。真っ赤に燃えるような羽。神々しい雰囲気、孔雀に似た姿。全長10mを超えそうな巨体

これって・・・フェニックス!!?


いや、それよりも。

なんで影しか見えなかったものが、こんな鮮明に。こんな、ちかく、にーーーー!!?


「おおおおおぉ!!?」


全力の絶叫に、フェニックスは断末魔を上げて霧散する。

だが、そんな事を気にする余裕は俺にはない!

フェニックスが飛行していた高度まで、俺が来てしまったことの方が重要なのだ。

高度何メートルだろうか。

寒さは不思議とあまり感じないが、落下には恐怖を覚えずにはいられない。

さっきまでいた直径40mの広場は、よく目を凝らさなければ見えないほど小さく、とてつもない高度に自分が存在している事を表している。


沈みかけの太陽が、まだ、しっかり見える。

その方角に、何やら奇妙な形をした城のような物が見えたけれど、この状態を何度かする事が先決だ!


大丈夫。手段がないわけじゃない。

俺は、足元に爆発を生じさせられるし、手で風を作り出せる。

なんとか頑張れば無事に着地できるはずだ。

いや、むしろ飛べる気がする。

アイキャンフライ!


気合いを入れろ。まだ、地面までは距離がある。大丈夫、問題ない。

落ち着いて考えろ。

まず、着地地点を決めよう。森を抜けられそうな方角はわかった。でも、安全に着地できるのは元いた広場が一番だろう。

その中心に向かって微調整していけばいい。


よし、決まればすぐにでも!!ーーあっ


「『決めて』しまっーーのおおおおおぉ!!?」


俺は急加速して地面に墜落した。


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