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決して戦ってはいけません。  作者: グリーンティ
第一章『降臨編』
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始めの一歩目

勘弁してほしい。

心の底からユウキはそう思う。



いつものように大学の帰り道を歩いている時だった。唐突に謎の光が足元から立ち上がり、俺を包み込んだのだ。


光が収まったと思ったら、目の前に見た事のない奇形で巨大な怪物が存在し、俺を襲い、喰らおうと牙を剥いていた。

それに驚き、腰を抜かして尻餅をついた瞬間だった。


目の前の怪物が粉々になって吹っ飛び、周囲の木々は目測20mくらいの範囲でなぎ倒され、地面には亀裂が走ったのだ。



尻餅をついたまま呆然としつつ、俺の頭は混乱の真っ只中である。


……本気でツッコミどころが多すぎる。

ここは一体どこで、さっきの怪物は何で、今の現象は何なんだ!!



ふぅ、心の中で絶叫すると、少しばかり冷静になれた気がする。

とにかく、謎を一つ一つ解いていくことにしよう。

まず、ここはどこなのか。

爆心地みたいになっている周囲の風景については、とりあえず無視だ。


ここはさっきまで歩いていた都市の住宅街の小道だろうか?

答えは否である。

アスファルト舗装はされていない上に、通りの角にあった、人気のカフェも存在しない。そもそも道がない。

爆心地のような範囲を除けば、樹海のように背の高い木々が立ち並び、木々の葉による遮光で木々の奥がほとんど見えないほど、不気味に暗くなっている森だけだ。

こんな深い森みたいな場所は、元いた地域にはない。つまり、郊外であることは間違いないだろう。


では次に、自分が夢遊病のように別の地区へ向かい、この森林へ来てしまった可能性だが。

答えはおそらく否。

強く断言はできないが、俺は夢遊病なんて患ったことはないし、突然夢遊病を発病する。なんていう確率もかなり低いはずだ。

それに、腕時計を確認したがほとんど時間は変わっていない。


つまり、元々いた場所から、数分も掛からずにこの場へ来たということ。


あり得ないことだ。

そんな移動方法は現代技術にない。まだ、そこまでSFチックな技術はないはずだ。



OK。ここまで考えたけれど、ますます分からなくなってきた。


つまり、ここはどこか分からないし、知る為の情報は少ない。


とりあえず。さっきの怪物の存在から、この場所を『異世界』と仮定しよう。


いいね。

なんともファンタジーで素敵な響きだ。日々冒険を求める男子大学生にとっては胸を踊らせずにはいられない。

…待てよ。異世界……ファンタジー……!?

もしかして、魔法なんかもあるのでは無いだろうか。いや、定番の異世界人は使えない設定だという可能性も……。はっ!逆に強すぎる設定なんかもありえる!!


うっはwww興奮してきたwww



ーーっと危ない。脱線するところだった。


異世界は仮定、だ。

まだまだ、確認しないといけないことがある。



次の謎だ。

さっきの怪物は何だったのか。

正直。唐突だったし、驚き過ぎて特徴とかほとんど見ていない。

狼のような顔つき、虎よりも大きな巨体、あと尖ったツノみたいなものも生えていた。

元の世界では見た事のない生物だ。もちろん、テレビで取り上げられたことなどない。


ファンタジー風に仮定すると『魔獣』ってところか。

見た目は狼の化け物だから、とりあえず『魔狼』と呼称しよう。


さて、続く問題はさらに訳がわからない、周囲の光景についてだ。

とりあえず、この惨状を検討しよう。


俺を中心にした地面に広範囲のひび割れが走り、木々は根元から掘り起こされ、直径40m程度の綺麗な円形の広場が出来上がっている。

俺が尻餅をついた場所はくっきり草木が消滅しており、お尻と両手のひらの型がバッチリついていた。


なるほど。爆心地はここか。


俺が尻餅をついた場所に爆弾的何かがあり、それを踏みつぶしたことで起爆。

周囲のモノは爆散した。


というのが簡単に思い付いた仮説だけれど。意外としっくりくる。

まあ、俺が無事だった説明が付かないのだけれど……。

判断材料が全く足りていない。


これは、不明なままにするしかないだろう。まだ、碌な仮説が立てられそうにない。




それよりも、早くここを離れたほうがよさそうだ。

時計の時間と今の時間は大体合っているようで、そろそろ日が傾いている。

森が本格的に闇へと染まるのは時間の問題だろう。

さっきのような魔狼が近くにいないとも限らないし、同じような現象が起きて、また助かるという保証はないのだから。


サバイバル経験などあるわけもない。

食べられる植物なんか見分けられる自信もない。

どこに行けばいいかも分からない。


全くの無い無い尽くしだな。

こんな時は、勘が頼りだ。


落ちかけている太陽に向かって走ろう。

ちょうど、木々も別れて通りやすくなっているし、なによりモチベーションが上がる。


野たれ死ぬかもしれない。獣に襲われるかもしれない。なにより、帰れないかもしれない。

そう考えると堪らなく恐ろしくなってくる。

だが、俺は進むしかないのだ。



俺は、この世界で初めての一歩を踏み出す。

勇気ある一歩が、行くべき道を作り出すのだと信じて。


なんてな。

誤字等所々修正、内容に変化なし。

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