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孝行息子

 オヤジが言った。「ちょいついてき」オヤジはいつものようによれよれのシャツ一枚だったが、臆することなく、玄関を出た。その厚かましさにオレはいつものように溜息をついて、仕方なしについっていった。「なんだよ……」

 靴を履いた途端に、海の方向から風が香ってくる。潮のにおいだ。オヤジはどうやら海へ向かう気らしかった。引っ越してすぐは海の気分を満喫したものだが、いまとなってはオレはどうとも思っていないのだが。

 浜辺に並んで座り込む。なにをしたいのだろうとオレはまた溜息をついた。それと同時に、オヤジがここにオレをつれてくる理由は、海水浴をのぞけばひとつしかないことくらい、ずっと前から分かっていた。

「あのなぁ……」ぼやきが始まる。「そのジーパン、どうにかならんのか。ぼろぼろでぇ」「こういうファッションなんだよ」その後もいくつかの会話を続けた。オヤジはオレと話がしたいのだ。こうして時間を共有して、雰囲気作りだかなんだか知らないが海にまでやってきて、オレと話がしたいのだ。それは既に分かっている。

 そしていつものように、オヤジが言う。常套句。締めくくりに繰り出される言葉。

「金、貸してくれや」

 苦し紛れにせびるオヤジの背中は、海風にゆれて小さく見えた。

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