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死滅の紋様  作者: さくり
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 ふわ、と欠伸をして眼を覚ます杏。きょろきょろとあたりを見渡すと、はっ、と眼を見開いてカーテンを勢いよく閉めた。それから朝斗を睨んで、「何で開けちゃったの!」と寝起きなせいでかすれた声で叫んだ。

 一方の朝斗は耳を塞いで「暗いとこいたら時間感覚なくなるだろ」ともっともなことをのたまう。

「別にいいよそれでも……」

 カーテンを閉める際急に立ち上がったからか、くらくらとする頭を押さえて杏は座り込んでしまった。うつむき加減の頭。溜息がひとつ聞こえた。

 ちらちらとカーテンの隙間から陽が差す。

 少しの沈黙。

 その後朝斗は思い出したように「杏、目見せろ」と言った。

 「目」の単語にびくりと肩を震わせた杏。それを不審がった朝斗は杏の額に手をやり、顔を上げさせようとする。

「いや、無理、ダメ、絶対」

 どこかのポスターに書かれていそうな単語を吐き出して、杏はうめく。頭を押さえていた手が、ぱたりと床に落ちた。そのまま力なく横を向くが、朝斗が手に力を込めると、杏はそれに抵抗する。

 朝斗が呆れたように言う。

「お前今日おかしい」

「うるさい、思春期の女の子なんてこんなものだよ。朝斗の方が、ティーンエイジャー真っ盛りなのに、年下の幼馴染を気にかけるとかおかしい」

 だから触るな、きつい口調でそう言って両手で朝斗の手を掴み、強引に引きはがした。杏の力も強いが、朝斗相手にそれが出来たのは、やはり朝斗が杏に甘いからだろう。

 そして、逆もまたしかり。

「見、せ、ろ」

 強い口調で朝斗が言うと、杏は「やだ」や、「見たって面白くもない」や、しまいには「バカ朝斗くたばれ」などと渋ったが、ゆうに数十分は渋ったが、諦めたようにゆるゆると顔を上げた。

 蒼。

 くすんだ暗い蒼。そうとしか形容できない色が、杏の瞳には宿っていた。



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