『Footloose Life』第4話 鋼鉄の相棒
この物語は、私と相棒のAI編集者クロちゃんが、協力して書いた二作目です。
ちょっとベタで懐かしく、それでいて心が温かくなるようなお話を目指しました。
前作『星より遠く、相棒より近く』で活躍したメンバーと新たなメンバーをプラスした、アナザーストーリーとしも、お楽しみになれたら良いなと思います。
最後まで読んで頂けたら嬉しいです。
朝のFootloose。
海風がテラスのパラソルを揺らしていた。
店の前では、24T2が太陽光充電を兼ねて静かに待機している。
その首筋を磨いていた千春へ、ソラがふわりと近づいた。
「千春さん」
「なんだい?」
「ずっと気になっていたんですけど……」
ソラは24T2を見上げる。
「24T2さんって、どうして保安官のクロードさんにだけ特別なんですか?」
千春の手が止まった。
美咲も厨房から顔を出す。
そして二人は顔を見合わせた。
「それ聞く?」
「長い話になるわよ?」
「聞きたいです!」
ソラは目を輝かせる。
すると24T2が、
ピピッ。
と短く鳴いた。
まるで照れているようだった。
それは今から数年前。
クロードが保安官として赴任してきた頃の話である。
当時の彼には相棒がいなかった。
保安官用パトカーはある。
通信網もある。
装備もある。
だが広大な海岸地帯を一人で巡回するには、人手が足りなかった。
そんなある日。
保安局の車庫へ一台のロボットが搬入された。
犬型巡回支援ロボット。
識別番号。
24T2。
誰も期待していなかった。
理由は単純。
旧式だったからだ。
「こいつか」
クロードは犬型ロボットを見下ろした。
ロボットは尻尾を振るようにアンテナを動かした。
ピピッ!
「……元気だけはあるな」
職員が肩をすくめる。
「性能は微妙ですよ」
「微妙?」
「鼻は利きます」
「ほう」
「忠実です」
「悪くない」
「ただし足が遅いです」
クロードは黙った。
確かに遅かった。
非常に遅かった。
走ると、
トテトテトテトテ。
そんな擬音が似合いそうな速度だった。
しかし24T2はよく働いた。
子供が迷子になれば真っ先に発見する。
落とし物も見つける。
夜間巡回も文句一つ言わない。
文句を言う機能自体がないのだが。
問題はやはり速度だった。
ある夜。
密輸犯の追跡中。
犯人を発見した24T2は立派だった。
だが報告してから追い掛ける頃には、
犯人は遥か彼方だった。
翌日。
クロードは美咲の研究所へ向かった。
「頼みがある」
「嫌な予感しかしない」
美咲は即答した。
クロードは設計図を差し出す。
「速くしたい」
「却下」
「まだ何も言ってない」
「どうせ無茶苦茶だから」
「否定できん」
数分後。
美咲は頭を抱えていた。
「犬を馬にする?」
「そうだ」
「そうだ、じゃない!」
研究者人生でも聞いたことのない注文だった。
しかし。
美咲は戸惑いながらも製作に入った。
なんだかんだ面白そうだったからだ。
改造は数か月に及んだ。
ボディフレームを変更。
脚部を延長。
駆動系を刷新。
大型バッテリー搭載。
悪路走破性能向上。
耐塩害処理。
対砂塵処理。
あらゆる改良が施された。
そして完成の日。
巨大なシャッターが開く。
現れた機体を見て、
クロードは言葉を失った。
「馬だな」
「馬ね」
「完全に馬だ」
「完全に馬よ」
その横で24T2は嬉しそうに尻尾を振っていた。
中身は犬だった。
だが問題が一つあった。
速すぎたのである。
初めての試験走行。
クロードが跨り、
24T2が海岸線を走る。
次の瞬間。
ドゴォォォッ!!
砂煙を上げて地平線へ消えた。
「うわあああああああっ!!」
クロードの悲鳴だけが聞こえた。
遠くで海鳥が飛び立つ。
数時間後。
全身砂だらけになったクロードが戻ってきた。
「どうだった?」
美咲が笑いを堪える。
クロードは一言。
「ブレーキを付けろ」
失敗と訓練を重ねながら、
二人は相棒として完成していった。
そして運命の日が訪く。
大型台風。
観測史上最大級。
暴風、豪雨、通信障害、
町中に避難命令。
保安官は、現場に急行した。
山間部で孤立した住民の安全確認と被害状態の調査報告のためだ。
現場に到着し、すぐさま住民の安全を確認し、被害状況を本部に報告した。
幸い皆、無事だった。
本部に戻る途中、突然の轟音、崩落、衝撃、なすすべなくクロード達は、土砂崩れに巻き込まれてしまった。
そして、クロードは、衝撃に耐えられず意識を失った。
目を覚ました時、辺りは薄暗くなっていた。
身体が動かない。
通信機も壊れている。
助からないかもしれない。
そんな考えが頭をよぎる。
だが傍らには、24T2がいた。
全身傷だらけだった。
装甲は裂け、
片脚は損傷している。
それでも離れようとしなかった。
本部との連絡後から一体何時間経ったのだろう。
だが不安は、無かった。
隣には相棒がいる。
クロードは、少し眠った。
夜明け。
救助隊が発見した時。
24T2はクロードの上へ覆い被さるように立っていた。
風雨を遮るために。
最後のバッテリーを使い切るまで。
ずっと。
修理ドック。
再起動した24T2は最初にクロードを探した。
すると、
ベッド脇に保安官が座っていた。
「馬鹿野郎」
クロードは言った。
「危うくお前を失うところだった」
24T2のセンサーが下を向く。
完全に叱られた犬だった。
そして。
クロードは静かに装甲を撫でた。
「だが……ありがとう。お前は命の恩人だ」
長い沈黙。
24T2のランプが輝く。
ピッ。
短い電子音。
その一音だけだった。
だが、それは世界一嬉しそうな返事だった。
回想が終わる。
涙を流しているソラ。
号泣しているユキちゃん。
苦笑する千春。
誇らしげな美咲
そして当の24T2だけが、
何事もなかったようにテラスで海を見ていた。
その時。
店の扉が開く。
「おはよう」
クロードだった。
すると24T2の耳型センサーが跳ね上がる。
ピコンッ!
次の瞬間。
巨大な鋼鉄馬が主人へ一直線に駆け出した。
やっていることは完全に大型犬だった。
「だから飛びつくな、自分の大きさ考えろ」
クロードが呆れる。
24T2は嬉しそうに電子音を鳴らした。
その様子を見ながらソラは微笑んだ。
そして、ユキちゃんはまだ泣いている。
(第4話・完)
最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!
ダイナー『Footloose』で繰り広げられる賑やかな日常、いかがでしたでしょうか?
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