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ホラー小説

鳥籠

作者: 無夜
掲載日:2026/06/23

これは、昔やった「お題小説」だったかな。 鳥籠にまつわる短編の、ホラー。

 ピクシブにも掲載

 叔母について、アンティークショップにゆき、彼女が購入した真鍮製の綺麗だが実用向きではなさそうな鳥籠を一つバンに乗せた。

 叔母は車の運転ができないので、こうしたかさばるお買い物の時に、私を呼ぶことがある。

 見返りは、昼食と、多めのガソリン代。

 叔母の私室には鳥籠がたくさんかかっている。 木製の、金属製の、プラスティックの。

 その中には何も入ってない。

 叔母を自宅まで送り、天井から吊り下げるのを手伝う。

 空っぽの鳥籠を見あげた叔母は苦笑して呟いた。

「これも、ダメね」


 これが先日、急死した叔母の思い出らしい思い出で、ほかはなかなか思い出せなかった。

 それから、遺言の開示と遺産分与というものがあり、私は愛用のバンで叔母の家に向かい、私が知らない、新しい鳥籠を目にした。

 銀製の、唐草が絡むような意匠の籠。出口も入り口もないと思ったら、よく見ると底が外れるようだ。

 これを抱え込むようにして叔母は死んでいたという。心臓系の発作で急死であったけれど、口には幸せそうな笑みが浮かんでいたと、叔父から聞かされている。

 私はなぜか、その験の悪い鳥籠を遺産として貰いうけた。

 叔母がしていたように、天井から吊るした。事務所と自宅が兼用だったので、やや殺風景に思えた応接室の窓際に。

 中に何を入れよう。我家には生き物はいない。鉢植えを入れたら、綺麗かもしれない。ポトスのようなものがいい。籠から垂れた緑の葉は、きっと美しく趣きがあるだろう。

 そして私は籠を覗く。

 中で、高校生ぐらいの少女が笑っていた。

 写真でしか知らない、叔母の葬儀の時に並べられたパネルの一枚にあった、高校時代の叔母その人の顔をしている。

 楽しげに笑っている。

 私は溜息をついた。

 これでは鉢植えは入れられない。先住者がいては。でも、蔓植物と鳥籠のインテリアを思いついてしまった私は、それを実際に部屋に飾りたくてたまらなくて、次の週末に鳥籠を買った。

 今度の物は寝室に吊るした。そして中を見ると、二十歳の頃まで飼っていた、気難し屋の犬が愛想よく尾を振っていた。この子は老衰死で大往生だった。

「これも、ダメね」


 鳥籠の数はいつしか五個、六個と増えていった。その中にはいつもいつも、見知った顔の何かが入っていて。

 七つ目を手に入れたとき、あれっと思った。

 よく日焼けした、ドロだらけの男の子のような十歳ぐらいの女の子が、腕白そうに笑ってた。

 私もつられて笑い……。

 ふんわりと体が浮き上がるような感じがした。

 ああ、この子は小さな頃の私……。

 そして、視界が暗くなっていく中で。

 なるほど、と思った……。

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― 新着の感想 ―
鳥籠に囚われちゃった…。でも大切な人を思い出せると考えたら、わたしも手放せなくて、鳥籠に囚われちゃうかも…。
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