第4話:『勢いあれ』
「文化祭のライブ、出ない?」
そう言った瞬間、少しだけ空気が止まった気がした。
やっぱり急すぎたかもしれない。
そう思った次の瞬間――
「いいじゃん、それ!」
男子はぱっと顔を明るくした。
「ライブ?バンドのやつだろ?」
「う、うん」
思っていた反応と違って、少し戸惑いながら頷く。
「やろうぜ!」
即答だった。
あまりにもあっさりしていて、逆に現実味がない。
「え……いいの?」
「むしろやりたいと思ってたとこなんだよね」
そう言って、背中のギターケースを軽く叩く。
「ギターなら任せろって」
自信満々に笑うその姿に、思わず少し安心する。
「……僕、ドラムなんだ」
「マジで?」
男子の目が一気に輝いた。
「いいじゃん!リズム隊いるならもう勝ちじゃん」
「そんなことないと思うけど……」
「いや、マジで大事だからな」
勢いよく言い切る。
その言葉に、少しだけ背中を押された気がした。
「あとボーカルとベースだな」
「……そんな簡単に見つかるかな」
僕がそう言うと、男子はにやっと笑った。
「それなら問題ない」
「え?」
「当てあるから」
軽く言い切る。
「高校から入ってきたやつで、ちょうどいいのいるんだよ」
その言葉に、少しだけ現実味が増す。
「明日、呼んでくるわ」
「もう?」
「こういうのは勢いだろ」
そう言って笑う。
その軽さが、不思議と頼もしく感じた。
「てか名前なんていうの?」
「あ……大輝」
「俺は南雲!」
南雲は軽く手を上げて名乗った。
「よろしくな、大輝!」
勢いよく差し出された手に、少しだけ戸惑いながらも握り返す。
その手は、思ったよりも温かかった。
「……よろしく」
短くそう返すと、南雲は満足そうに笑った。
「じゃあ明日な。メンバー集めてくるわ」
そう言って背を向ける。
軽い足取りで去っていくその背中を、しばらく見ていた。




