第3話:『諦めない』
昼休み。
弁当を広げながら、僕はぼんやりと考えていた。
文化祭ライブ。
バンドを組めば出られる。
それだけのことなのに、頭から離れない。
「まだ考えてるの?」
向かいの柚木が呆れたように言う。
「……うん。本気でやろうと思ってる」
そう答えると、柚木は少しだけ驚いた顔をした。
「珍しいね」
「そうかな」
「うん。でも、いいと思うよ」
柚木はそう言って、軽く笑った。
「メンバーは?」
「それが問題なんだよね……」
この学校での自分の立場を考えると、簡単に声をかけられる相手なんていない。
そう思っていると、柚木がふと口を開いた。
「じゃあさ、高校から入ってきた人に声かければ?」
「……え?」
「中学からの人より、その方が話しやすいでしょ」
その一言で、少し視界が開けた気がした。
「……確かに」
高校からの生徒なら、僕のことをよく知らないはずだ。
少なくとも、中学の頃のことは。
「それなら、いけるかも」
僕がそう言うと、柚木は満足そうに頷いた。
「でしょ?」
やってみるか。
放課後。
廊下を歩きながら、僕は周りを見渡していた。
制服の着こなしや雰囲気で、なんとなく分かる。
あの人たちは、高校から入ってきた生徒だ。
……誰に声をかける?
その時、廊下の端でギターケースを背負っている男子が目に入った。
壁にもたれかかりながら、スマホをいじっている。
……あの人、たぶん。
少しだけ深呼吸をする。
ここでやめたら、何も変わらない。
僕はゆっくりと、その男子に近づいた。
「……あの」
声をかけると、男子は顔を上げた。
「ん?」
思っていたより落ち着いた目をしている。
一瞬だけ迷って、それでも僕は言った。
「文化祭のライブ、出ない?」




