第1話:『僕と柚木』
僕の名前は大輝。
どこにでもいる、ごく普通の高校二年生だ。
勉強が特別できるわけでもなければ、運動が得意なわけでもない。友達も多い方ではなく、むしろクラスの中ではいじめられる側の人間だった。
この学校は中高一貫校で、ほとんどの生徒が中学からそのまま高校へ進学している。だからクラスの顔ぶれも昔からあまり変わらない。
僕がいじめられるようになったのも、ちょうど中学の頃からだった。
理由は、家庭の事情。
それがクラスの中で知られてから、僕はいつの間にかからかわれる存在になっていた。
きっかけは今となってはよく覚えていない。ほんの些細なことだったのかもしれない。ただ、気がつけば僕はクラスの中で笑い者にされる存在になっていた。
机に落書きをされたり、陰で笑われたり、わざと聞こえるように悪口を言われたり。
そんな日々が続いていた。
僕はそれに反抗する勇気もなく、ただ毎日をやり過ごすように学校へ通っていた。
そんな僕にも、一人だけ普通に接してくれる人がいた。
同じクラスの女の子、柚木だ。
柚木とは、中学一年の頃からの付き合いだった。
みんなが僕を避けるようになっても、柚木だけは態度を変えなかった。
休み時間になると普通に話しかけてきて、「一緒にお昼食べよ」と声をかけてくれることもあった。
周りの目を気にする様子もなく、まるでそれが当たり前であるかのように。
もし柚木がいなかったら、僕はきっと中学の途中で学校に来られなくなっていたかもしれない。
それくらい、柚木は僕にとって大きな存在だった。
しかし、二年生になってから不思議なことに、そのいじめはぴたりと止んでいた。
誰かが止めたわけでもない。先生が注意したわけでもない。
まるで、最初から何もなかったかのように。
それが、かえって僕には少し不気味に感じられていた。




