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Gさんの場合

『怨霊の背景を探る!』──。

 世の中というのは、さまざまな人の思いが複雑に入り組んで成り立っています。

 このコーナーでは、霊界通信を通して、怨霊になった人々にインタビューを敢行!

 なぜ怨霊になったのか? について、うかがっていきます。

 ……はい。怨霊になった経緯をお聞かせいただく『怨霊の背景を探る!』のコーナー! 本日は、怨霊のGさんにご出演いただきます。


「よろしくお願いします」


 こちらこそ、よろしくお願いします。

 美しい女性にじっとりとにらまれると、肝が冷えますね。


「……」


 わあ……ものすごくにらまれてしまいました。

 この番組を聞いているリスナーの皆さんに映像は見えないでしょうが、Gさん、かなりお綺麗な方でいらっしゃいます。女優さんやモデルさんをされていたとか?


「ちゃいますね」


 お、関西の方ですか?

 でもあまりお話されたくない感じですかね……。うんざりみたいなため息をつかないでくださいよー。

 いきなり、スタジオのガラスがピシッ、ピシッと音を立てはじめています……!


「はぁ……容姿のこと言うの、やめてくれません?」


 あっ! もしかして、Gさんが怨霊になられたのは容姿に関することが原因なのでしょうか? ……これは失礼しました。

 まず手短かに、Gさんの自己紹介をお願いしてもよろしいですか? 生き霊か、死霊か。死霊であるなら、何年くらい前にどのような形で亡くなられたか──とか。


「はい。Gです。死霊です。亡くなったんは平成初期ですね。20代でした。刺されて死にました」


 刺されて!?

 えっ……刺されてお亡くなりになったんですか!?

 その割には、ずいぶんあっけらかんとお話されますね。


「自分が死んでしもたことは、そりゃあ恨めしいですけども。原因をたどっていくと、別のところにたどり着いたんですよね」


 そうなんですか。

 怨霊になるくらいだから、死んだこと自体を恨みに思っているのかと。

 ──では、Gさんの恨みというのは、先ほどおっしゃっていた容姿に関することですか?


「はい」


 失礼ですが、おモテになるでしょう?


「そこが、恨みの元ですね。モテてなければ、私、生きてたと思います」


 そ、そうでしたかぁ……。

 これ、核心に近い部分っぽいですね。

 少し早いですが、一旦CMを入れましょう! Gさんがなぜ怨霊になられたのか、引き続きお話をうかがっていきます! 続きはCMのあとで!


***


 さて、Gさんからお話をうかがっていきます。

 Gさんが怨霊になられたのは、容姿に関することが理由でしたね。モテることで命を落としたとのことですが、くわしくお話を聞かせてください。


「自分で言うのもなんなんやけど、やたらとモテたんです。……あまり好きやない相手からも」


 ああー……なるほど。

 私なんかは、モテるのはいいことなのでは? と思ってしまいますが、美男美女はそういうことがあると聞きますね。

 あまり好きではない相手からモテても、うれしくはない──と。


「告白は勇気のいることなんで、それには『ありがとう』って気持ちなんですけど──。中にはちょっと困ったこともあって」


 と、言いますと? ストーカー被害とかですかね?


「はい。盗撮やら、行動を監視するやらは迷惑です。私は芸能人でもないし、芸能人やとしても、度が過ぎたらあきませんよね。違法やったら特に」


 そうですね。

 なるほど……かなり熱烈に、Gさんがモテてたということですか。


「熱烈なのは、そんだけ好きでいてくれるーいうことなんやと思います。ありがたいことです。……せやけど、私にもプライバシーや生活があるやないですか。そこに踏み込まれると困ります」


 そりゃあそうですね。

 最近では、芸能界のアイドルでも『趣味を楽しんでいる最中は声をかけない』という、ファンの間での暗黙の了解ができていると聞きます。

 そんなふうに見守ってくれるなら、よかったのかもしれませんね。


「ほんまにねぇ。令和なんやなーって思います。趣味を楽しんでるとこを、微笑ましく見てくれてたりするんでしょ? 私は平成の初期に亡くなったんで、ええなあって思いますね」


 昭和の終わり頃なんかは、アイドルの親衛隊や追っかけがいましたが、時代とともに変わって来ましたね。

 なんでしょうね、ファン文化が成熟してきたってことなんですかね? 自分の感情を優先するものから、相手のことを考えて……というものに変わりつつある気がします。


「まあ、私は一般人なんで、あんまり関係ないですけどね。……私、生前は美術館とか行ってたんですよ」


 はい。

 ……? スタジオにコツコツと靴音が響いています……美術館の廊下を歩く足音のような……。そうして、なんだか背中が重いです……。怨霊にインタビューしているんだから、重くても仕方ないですが! わははは!


「説明おじさんってわかります?」


 説明おじさん!? 急に話が飛びましたね。

 美術館で、学芸員さんでもないのに、やたらと人に説明してくるおじさんのことですかね?


「そうそれ! 美術館とかで知らん人がいきなり寄ってきて、『この絵はね……』とかうんちく垂れはるやつです。そういうのも、やたらと多くて」


 ああ、Gさん、お綺麗だから。

 そうやって話しかけてくる人、多いのかもしれませんね。


「知ってる人ならええですよ? でも知らん人にいきなり講釈垂れられるんって、どうなんでしょう? しかも間違ってたりするし」


 あはははは! 間違った内容だったら、イラッとしそうですね!

 おおっとぉ……、今の音、聞こえましたでしょうか? バン! とものすごいラップ音が聞こえましたね。Gさんの怒りの声でしょうか。


「ああいうおじさんって、何がしたいんですかね? 自分の知識をひけらかしたいん? 尊敬されたいん? って思ってまうんですよね」


 辛口ですねー!

 ……ん? 今、耳元で何かささやかれています……。

 内容はわかりませんが、もしかして──もしかして、口説き文句!? これ、説明おじさんの霊ですかね!?

 Gさん! これ、説明おじさんの霊かもしれません!


「反論したくて現れたんかもですね。……でもああいうのって、こっちが知らへん前提やないですか? なめとんのかと思って」


 ああ……説明おじさんの霊が「せっかく教えてやったのに」「教わる側の姿勢じゃない」……って言ってますよ。


「教わらんでも知っとることもあるっちゅーねん! こっちは趣味を楽しんでんねんで? なんで邪魔されなあかんねん!」


 わ、私をはさんでケンカしないで──!

 説明おじさんは本日のゲストではありません! 今日のところはお引き取りください!


「情報を取捨選択するのは私! 話を聞き流してええなら、まあ、そない気にしません。でも『せっかく教えてやったのに』は、黙って聞いとけ、従えってことなんちゃうん!? 今日会ったばっかりの人に連絡先渡されても困るんじゃ!」


 まぶしっ! 急に何か、フラッシュのような光がスタジオに発生しました!

 ……あー。おさまりましたが、まだ少し目がチカチカします。肩が軽くなりましたね。Gさんの怒りが、説明おじさんの霊を追い払ってくれたようです。ありがとうございます。

 しかし会ったばかりで連絡先を渡されるのは、趣味を通した出会いを求めてるタイプの人だったのかもしれませんね。


「そんならマッチングアプリとか使えや! ……まあ、私の生きてた頃にはなかったですけど」


 あはははは! マッチングアプリ!

 今はそういう便利なものもありますからねー。

 自分の趣味にチェックを入れてマッチングアプリに登録しておけば、趣味が同じような人から連絡が来ます。

 出会いを求めるのなら、そういうものを使え、と。

 ……Gさん、容姿のことをあまり言われたくないとおっしゃってましたが、行く先々でそんなことがあったら、そりゃあ大変ですね。


「そういうのが高じて、刺されたんですよ。『なんで振り向いてくれない!?』って、よう知らん相手に──。知らんがな! 私があんたに興味ないからとちゃう!? モテてなかったら、生きとったわ! せやのに、電車の広告とかで『モテ特集』組みよってからに!」


 なるほど、Gさんが怨霊になったのは、モテ信仰への反発からだったんですね。

 Gさん、本日はご出演ありがとうございました。

 いやー、モテるというと、いいことのように思えますが、モテる人にはモテる人の苦労があるんですね。


「好かれるのはええとしても、モテはそんなええことばっかりと違いますわ!」


 あはは。Gさん、去り際に見事なツッコミを残していきましたねー。モテる側の苦労ってものも、あるんでしょう。

 それでは本日の『怨霊の背景を探る!』のコーナー、まとめ!

 ……「モテてもいいことばかりじゃない!」「趣味は趣味! 出会いは出会い!」……この2点でしょうかね。趣味を通して親しくなって、交際に発展する……ということはあるでしょうが、出会い目的で趣味を楽しむのは、順序が逆です。下心は、隠しましょう!

 ……Gさん、前回お話してくださったFさんと、もしかしたら気が合うかもしれませんね。


 この『怨霊の背景を探る!』のコーナーでは、今後も怨霊の方々の恨みつらみについて、お話をうかがっていきます。次回をお楽しみに!

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