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Cさんの場合

 人はさまざまな悩みを抱えるものです……ときにはそれが怨霊の元となることも──。

 怨霊になった経緯をお聞かせいただく『怨霊の背景を探る!』のコーナー! 本日は、怨霊のCさんに霊界通信を通してご出演いただいております。


「いえーい! Cでーす! もうはじまってます?」


 はじまってますはじまってます。怨霊の方には珍しく、お元気ですね。


「いやー。この番組、怨霊界隈で絶賛話題沸騰中なんスよ! 自分も出たい! って人がたくさんいて。出演できてうれしいなあ! やっと出られました! 閻魔さまの審判を待つ人たちと同じくらい、出演希望の人たちが並んでんじゃないスかね」


 そうなんですか!? こちらには反応が届いてないから、気づきませんでした。


「スタジオの周りで、心霊現象とか起こってません? あれ、リスナーの怨霊たちの反応ですよ」


 そ……そうだったんですか!?

 今思えば、あれこれありました!


「大人気っスね! 似たような経験をした怨霊が、自己主張してるんスよ、きっと!」


 最初にこの企画を聞いたときには、祟られたくないから断ろうかと考えたんですが、やってよかったですね。ありがたいことです。

 さて、今回はどのような経緯でCさんが怨霊になられたかを、お聞きしたいのですが。


「あー! 特に理由はないっス!」


 ……え? ……ええー? Cさんが怨霊になった理由はないんですか?


「そっスね……。しいて言うなら、自分、早死にしちゃったんで……もっと遊びたい! みたいなことですかね?」


 あははは! なるほど!


「オレの生前の写真、見ます? これなんスけど」


 えっ……ええー……?

 おかっぱ頭を七三分けにしていて、瓶底メガネで……現在怨霊になったCさんとはまるで違いますね。僕ちゃんって感じです。


「あっはっはっは! そうでしょうそうでしょう! 当時、めっちゃ真面目で。親の言うこととかもちゃんと聞いてたんスよ。今の姿からは想像もつかないって、よく怨霊仲間に言われます!」


 おっと、気になるワードが出てきました。怨霊仲間ですか? 怨霊って単独行動するイメージがありますが……。


「怨霊にも色々いるんスよ。仲間とつるんでワーッと心霊現象を起こすタイプもいます。オレはそっち派ですね」


 なるほど……奥が深い世界ですね。

 あ、一旦CMです。続きはCMのあとで!


***


 ずいぶん盛り上がりましたね! CM中も笑いっぱなしでした。

 さて、それではCさんが怨霊になった背景を、引き続き掘り下げていこうと思……。


「いや……だから言ったじゃないスか。早死にしたから、もっと遊びたかったって。……オレ、もうお話ししましたよね?」


 ……。すみません。

 スタジオの空気が一気に冷たくなりました。


「だからイヤなんスよ。遊ぶなとか、あれしろとかこれしろとか! 怨霊はあの世に引っ込んでろとか!」


 ヒェッ……肩が急にずっしり重くなりました! 私じゃないですからね! 私は言ってません!

 ……しかしCさんはそういう、あれこれしろと言ってくる人たちに不満を持っている……と。


「そっスね」


 ……。

 失礼ですが、Cさんは何歳のときに亡くなられたんですか?


「ハァ? 今それ、関係あります?」


 ……すみません。何歳くらいで亡くなられたかがわかれば、どういった遊びがしたかったのか、わかるかなと思ったものですから。


「15歳」


 15歳ですか。お若かったんですね……。じゃあ、部活とか恋愛とか……これから人生の楽しいイベントが目白押しだったわけですね。


「……S子さん、きれいっスよね。あのー、映画とかに出てる」


 ああ! 怨霊界の大スター、S子さんですね!?


「そうそう。井戸の中から青白い手が出てきたときは、めっちゃドキッとしました」


 おおおお……スタジオに井戸が! 井戸が現れました! 透けて見えます……。


「えっ、S子さん!? 呼んでくれたんスか? 特別ゲスト的な?」


 井戸の縁に、青白い手がかかっています……!


「S子さーん! オレ、ずっとファンなんス!! 死ぬ前から! 死んだ後も!」


 井戸の中から、S子さんの頭が見えています……。チラッとこちらを見て、井戸に隠れてますね。意外とシャイな方なんでしょうか。S子さーん。


「いや……そのままでいいんスよ! 登場はS子さんのタイミングで!」


 ……Cさん、かなり熱烈なS子さんファンとお見受けしました。

 スタジオのあちこちから、謎の音声が聞こえてきます……。空気が振動してるような低音と、カセットテープを巻き戻すようなキュルキュルした音が……。リスナーの皆さんにも、聞こえるでしょうか?


「……カセットテープってなんスか?」


 ……ジェネレーションギャップですね。えーと……音声を記録するテープです。昔はカセットテープというのを使ってたんですよ。


「え、録音ってそんな手軽になったんですか?」


 あ。そっちでしたか……。じゃあCさんにとっては、大きめのカセットリールの方が、馴染みがありますかね?

 ……S子さんのコメント、録音しちゃいます? 今はスマホで録音もできちゃうんですよ。


「する! します! スマホ? めっちゃ便利じゃないですか! ちょっと貸して!」


 Cさんはスマホを構えて録音準備万端ですね。S子さんは……あら。恥ずかしがって井戸の中に隠れてしまいました。


「……いいんス。オレ、待ちます。S子さんが心を開いてくれるまで。なんせ怨霊界の大スターですから」


 ……ピュアですねー。死後であっても、憧れの人に対しては、そういうものなんでしょうか。


「ちょっと黙っててくんないスか。S子さんの声を録音する邪魔になるんで」


 ……。私がしゃべらないと放送事故になってしまいますよ。内容が内容だけに、怨霊に祟り殺されたんじゃ? と疑われてしまいます。


「チッ……。じゃあ小声で、とっとと終わらせてください」


 ……かしこまりました。

 それでは本日の『怨霊の背景を探る!』のコーナー、小声でまとめます。

 ……「怨霊でも、憧れの人に会うと意外とピュア」……今日はこれで決まり、ですかね。


 この『怨霊の背景を探る!』のコーナーでは、今後も怨霊の方々の恨みつらみについて、お話をうかがっていきます。次回をお楽しみに!


「ああっ、S子さんが井戸ごと消えそう!」

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