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Xさんの場合

『怨霊の背景を探る!』、このコーナーでは、怨霊の方々にインタビューを敢行!

 なぜ怨霊になったのか? どんな無念があるのか? を通して、社会問題に切り込もう……という、意外と学びのある企画です。

 本日はゲストに、怨霊のXさんをお呼びしておりまーす!


「……よろしくお願いします」


 こちらこそお願いします。

 毎度のことですが、私パーソナリティには、霊界通信を通じて、Xさんのお姿が見えております。

 Xさんは女性の方ですね。20代後半くらいでしょうか。貫禄があって、落ち着いているというか……将来肝っ玉母さんになりそうな印象の方ですね。

 タートルネックの首元やシルエットの感じからすると、割と最近の人ですかね?

 タートルネック、時代と共に多様化しましたよねぇ。昔ながらのまるっと大きく折り返したものもあれば、控えめな詰襟みたいな形もあります。


「……自己紹介してよろしいですか。Xです。30代女性。生き霊です」


 Xさんは生き霊……ご存命なんですね。

 いやー、この番組も、生き霊の方、死霊の方、さまざまな怨霊の方々にご出演いただきましたねー!

 さまざまな無念を紹介してきた気がします!

 それで、Xさんの怨念というのは、どういった内容ですか?


「痴漢に遭ったんです」


 痴漢! 犯人は捕まりましたか?


「はい。警察にも通報して、きっちり逮捕していただきました」


 それはよかった!

 痴漢が捕まらないことって、たまにありますからね。

 満員電車の中で、誰が加害したのかわからない──ただ、加害はあった……そういうことってあります。

 ……あら? 天井から何か落ちてきます……ホコリ? 違うか……もっと何かこう、ザラザラとした──。


「私の無念、聞いていただけますか」


 あ、はい! もちろんです! もちろんなんですが……ここで一旦CMをはさみますね。

 CMのあと、Xさんの怨念の理由について、うかがっていきます! 続きはCMのあとで!


***


 はい。本日の『怨霊の背景を探る!』のコーナーは、怨霊のXさんにお越しいただいております!

 Xさんは痴漢に遭われたということでしたね。犯人は逮捕されている……というお話でした。

 犯人が逮捕されているのに何故、生き霊になられたのか? というところを、引き続きうかがいます。


「はい。痴漢に遭って、犯人が逮捕されて──でもそのときの周りの反応で、ちょっと納得いかない部分があって」


 あー。二次被害ってやつですかね? 性犯罪では、たまにあると聞いています。


「そう……ですね。心配してくれた方や、犯人逮捕を喜んでくれた方もいます。でもその中でも……心ない言葉というのが、あったんです」


 そうでしたか……。

 内容としては、どういったものでしょうか。


「『お前なんか、誰が触るんだよ』って──」


 ……それ、周りの方の言葉ですか?


「はい……」


 いや……それは決して言ってはいけない言葉ですよね。

 警察が認めるほどの被害をうやむやに……「なかったこと」にしてしまう発言です。

 というか、なんでそういう発言って、「痴漢する側」の立場からの発言なんでしょうね。


「他にも、『ブサイクのくせに』『太ってるくせに』って──」


 はああああ……。思わず深いため息が出てしまいます。

 その発言をした方の好みに、Xさんのような痴漢被害者が合致してる必要、まったくないですよね。

 その二次加害をしてきた人が、痴漢してきたわけじゃないんだから。

 さっきも言いましたが、それって「痴漢する側」の立場からの発言じゃないですか?

 お気を悪くされたら申し訳ないのですが……、「蓼食う虫も好き好き」って、昔から言いますよね。好みは人それぞれです。

 あ、Xさんが蓼だって話じゃないですからね!

 Xさんが犯人の好みだったかどうかなんて、他人にはわからないじゃないですか!


「……外見が好みかどうかで、痴漢するんですか? それも上から目線ですよね。自分の好意が受け入れられて当然と認識していることになってしまいます」


 ……。すみません。そうですね。


「犯人は『誰でもよかった』と言っていました。痴漢しやすそうな人なら、誰でも」


 ……それはもはや辻斬りみたいなものですね。

 その被害に、Xさんは遭ってしまった。そうして、二次被害まで受けてしまった……と。

 天井からピシッ、ピシッと音がします……これはラップ音ですかね? ポルターガイスト?


「『冤罪なんじゃないの?』『人違いじゃ?』なんて言う人もいて……」


 警察が犯人を逮捕しているのに?


「そうです。……冤罪事件も、全くないってわけじゃないと思います。美人局的な事件もありますから。……だとしても、被害は被害じゃないですか」


 そうですね……。

 天井から、何かが落ちてきます……砂っぽい?


「痴漢自体も嫌ですけど、犯人は逮捕されました。でも二次被害に関しては──彼らのモラルが問われることはありません。……それが、私の抱える怨念です」


 ……重い言葉ですね。

 私も軽口が多い方ですから、気をつけます。何気ない一言で、被害者の方をさらに傷つけてしまうこともある……ということですよね。

 あっ! Xさんの姿が、さらさらと砂になっていきます──。


「お話、聞いていただいて、ありがとうございました」


 こちらこそ、本日はお話を聞かせてくださって、ありがとうございました。

 本日はXさんにお越しいただきました!


 さて、それでは本日の『怨霊の背景を探る!』のコーナー、まとめです。

 ……『被害者に非があるかのように言うのは、お門違い!』……これですかね。

 痴漢被害者の方は、不幸にも偶然被害に遭われただけです。

 ですから、「露出の多い服を着てたんだろう」とか「足を広げていたからだ」とか、Xさんのおっしゃっていたような「太っている」とか「ブサイクなのに?」とか……そういったことは、被害自体には、全く関係ないことなんですよね。

 最近では、一部の男性も痴漢に対して怒りを持っています。これは真っ当ですよね。

 痴漢に間違えられないようにしないと……なんて聞きますが、それって痴漢をする人のせいであって、決して被害者が原因じゃない。

 ……天井から落ちてきたホコリ? 砂? が、机の上にうっすらと山を作っています……。

 私の指に引っかかって、ちょっとザラザラしますね……。


 この『怨霊の背景を探る!』のコーナーでは、今後も怨霊の方々の恨みつらみについて、お話をうかがっていきます。次回もお楽しみに!

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