Wさんの場合
『怨霊の背景を探る!』──あなたの無念……お聞きします……。
このコーナーでは、怨霊の方々にインタビューを敢行! なぜ怨霊になったのか? どんな無念があるのか? をうかがいます。
人のふり見て我がふり直せ! そういう企画なんですねー!
本日はゲストに、怨霊のWさんをお呼びしております!
「こんにちは」
よろしくお願いしまーす!
例によって、私パーソナリティには、霊界通信を通じて、Wさんのお姿が見えております。
Wさんは壮年の男性の方ですね。ごく普通の社会人といった感じですが……。七三分けじゃないから、意外と最近の方……でしょうか?
「ああ、はい。50歳、男性、突然死しました」
あら、突然死ですか。
それは無念でしょう……。
「仕事中にバターンと倒れて亡くなりました。心配事はありますが、私が亡くなったことで、家のローンもなくなったでしょうし……まあ、遺された家族はうまいことやってくれてるでしょう」
仕事中に亡くなられたんですね!?
たまにそういう話を聞きますが、心の準備も何もできなくて、困りますねぇ。
それにしても、ご家族への信頼が篤い!
「ははは。事故で亡くなったって、心の準備はできませんよ。死というものは、突然訪れるものだと思っています」
そうですか……達観してらっしゃるんですね。
では、Wさんはどういった無念を抱えていらっしゃるのでしょうか?
「前回の放送で、女性の生きづらさの話をされた方がいましたよね」
ああ、はい。Vさんですね。
「男も大概生きづらいぞ! と思って……」
そうでしたか! それでご出演くださったんですね。
おおっと……スタジオにどこからともなく風が吹きはじめました。
エアコンの設定変えた? ……変えてない。あはははは。
「男社会っていうのは、とにかく力関係があります。私もね、若い頃は、上司や取引先に、散々頭を下げてきたものです。……女の人は、そうじゃないでしょう?」
うーん……力関係がある……つまり縦社会、体育会系のノリがある……ということですよね。それ自体は納得できるんですが……。
今は女性も社会進出していますから、上司や取引先に頭を下げる人は、男性だけとは限らないのでは?
「そうですかねぇ。主婦なんて、下げたくない頭を下げなきゃいけない……みたいなこと、少ないと思いますけどね」
いやいや、これがなかなかどうして、あるんですよ。
Vさんも仰ってましたが、お勤めの女性なら、上司や取引先はもちろん、子供の看病で早退しなくちゃいけない……なんてことがありますからね。
専業主婦の方でも、PTAやら学校とのやりとりなんかで、関係各所に頭を下げてますよ。
「そうですかねぇ……。女性相手だと、優しい上司が多いと思いますよ。男性だと、キツく言っても大丈夫……なんて思ってる上司がいます。バシバシ背中を叩かれたり、肩を組んでガシガシ揺らすだとか。女性相手にはやらないでしょう」
そういうところはあるかもしれませんねぇ。ボディランゲージがちょっと手荒というか。
お話は続いてますが、ここで一旦CMに入りましょうか。
CMのあと、Wさんの仰る男性の生きづらさについてうかがっていきます! 続きはCMのあとで!
***
はい。本日の『怨霊の背景を探る!』のコーナーは、怨霊のWさんをお招きしておりますー!
Wさんは突然死された壮年男性。男性の生きづらさについて語りたい……ということで、ご出演してくださいました。
「よろしくお願いします」
はい、よろしくお願いしますー。CM中も、少しお話をうかがってたんですけどね。要約すると「女はずるい」です。わははは!
「そういうわけじゃないですけども……。でも楽してるなぁって思いますよ」
私の個人的な意見としては、隣の芝生が青く見えてるだけじゃないかって気がしますけどねー。
男性側には、女性側の社会が見えにくい。
働いている人には、専業主婦の社会が見えにくい。
だから隣の芝生は青く見えて、楽してるじゃないかと見えてしまう。
実際には違ってることもあるんですがね。お食事会という名の情報交換とか。
おお!? 急に風が強くなりました! こういうミュージックビデオ、昔ありましたよね!?
「それ! それですよ!」
え? ミュージックビデオ?
「違います! お食事会の話です! 男は割と決まった金額の中でやりくりして昼食食べてるっていうのに、なんで女房がそれより高い金額のランチ食べてるんですか? 家計が苦しいからお小遣い減らすねーとか言うくせに!」
ものすごい風です! こ、凍えそう……!
でもランチ会は毎日あるわけじゃないですからねぇ。
ポジション的には、飲み会に近いんじゃないですか? 会社でも歓送迎会とか、月一の会食とかありますよね。
専業主婦の方も、親睦を深めたり、情報交換をしたり、悩みを相談し合ったり……というような機会が必要でしょう。
それでお下がりをもらったり、突然授業で必要になったお菓子の箱とかペットボトルとかやりとりしたりするそうですよ。
「お菓子の箱とかペットボトルぅー?」
いや、本当に子供って、前日に突然「これが必要」って言い出すことがあるらしいんですよ。
私なんて、友達から久々に連絡が来たなーと思ったら、「ペットボトル持ってない!?」って内容で、笑ってしまいました。
お菓子の箱なら、コンビニとか行けば割となんとかなるじゃないですか? 中のお菓子だけ別のお皿に入れておいてもいい。
でも2リットルのペットボトル……なんてことになると、なかなか飲み干せないんですよね。
「そんなの、ないって言えばいいじゃないですか。予備くらいあるでしょ」
まあ、最終手段はそうでしょうね。でもみんながみんな、そうやって持ってこなかったら? ……先生が予備を用意していても、足りませんよ。
最悪の場合、授業に参加できなくなることもある。我が子にそういう目に遭って欲しくないから、親のネットワークで「ペットボトル持ってない!?」なんて探すんじゃないですかね。
「でもペットボトルが必要だって伝え忘れたのは子供ですよね? だったら、自分が恥をかくのは仕方ないんじゃないですか?」
ああ、そういうところなのかもしれませんよ。男性社会の生きづらさの正体って。
「と、言いますと?」
女性って、助け合う関係が多いんですよね。
さっきのペットボトルもそうですけど、突然地震が来て、子供を迎えに行かなきゃいけなくなったときなんかも、知ってる子を預かるようなことがある。
普段やりとりしてるから、そういうことができるんです。
でも男性だと、どちらかというと──助け合うというよりは、ライバル関係になっていませんか?
「そう……ですかねぇ。会社では助け合って仕事してますよ。仕事を割り振って……いや……。ライバル視している部分も、あるかもしれませんね。でもそれは、女性だって同じじゃないですか? だってどこどこの誰ちゃんはお受験するんだって、とか」
ああ、お受験。
まあ、そういう方もいますねぇ。
「あれ、本当に訳がわからないですよ。近所の誰かがお受験したからって、自分の子にもお受験させるのって。塾とかもそうですよね?」
ああ、そういうのはあるかもしれませんね。
ただ、周りの人にちょっと年上の子がいる場合……何年生から塾に行くといいよとか、勉強が難しくなるとか、そういう話が出てきます。
今は少子化の時代じゃないですか? だから情報共有が必要になってくるんだと思いますよ。
「勉強は親が教えればいいじゃないですか。専業主婦なんてヒマなんだから」
Wさん、鎌倉幕府、何年開府ですか?
「え? 1192年」
今は1185年と習うんですよ。
そんなふうに、親の習ってきたことと、子供の習ってきたことが違っていることもあります。
計算の仕方とかもそうですね。
そうなってくるとですねぇ、学校での勉強だけでは足りない、覚えられない子たちは、塾で教えてもらうことになるんです。
「そういうものですか……」
そうみたいですね。
私は独身なので、実感としてはないんですけど……周りの話を聞いている感じだと、そうです。
「……それにしたって、男は出世のプレッシャーがありますよ。なにかと競争を求められます。家族を養っていかなきゃいけないってプレッシャーは、相当なものです。弱音や愚痴を吐くな、男らしく……。そんなふうに言われてしまう男だって、生きづらいです」
そうですね。私もね、そういうマッチョな価値観の中でジタバタしていた経験はありますが……。
女性が生きづらいというのを非難するんじゃなくて、性別関係なく、生きやすいようになるのが、一番いいんじゃないかと思いますけどね。
「生きづらい」と言っているのに、「お前は楽してる!」って言うから、揉めるんじゃないですか?
「……そういう軽口とか皮肉とか、だんだん言いづらくなってくんですかね」
いや、それは関係性によりますよ! 親しければ、軽口叩くこともありますからね。
私はまあ、こうしてパーソナリティやらせてもらっているので、割と誰彼構わずで、軽口叩いてますけども。わははは!
「……いや、冗談ですよ。忘れてください」
えー? 本当にそうですかぁー?
怨霊となって出てくるくらいだから、無念がばっちり残ってるんじゃないですかー?
そうやって虚勢を張らなきゃやってられない部分も、あったりしませんかー?
「いや、もう私も若くありませんからね。ロートルですよ。時代がそういうふうに変わってきてるんだなぁって……。死んでますからね、私。死者には、世の中の変化は関係ないことです」
……そうですね。Wさんはお亡くなりになっています。
「ああ、でも……。私が突然死して、家のローンを支払わなくてよくなったとホッとしている家族を見るのは、ちょっと複雑でした。すごく助かる制度なんですけど……なんだか……私の死を喜んでそうに見えてしまって」
……ああー……それはあるかもしれません。
「ちょっとしたヒガミみたいなものです。私、生前は結構頑張ってマイホーム建てたんだぞって。家族は『おつかれさまー』なんて言ってくれましたけど……でも、私が頑張るより、亡くなった方が早く問題が解決してしまった。はは……ははは」
風が吹いて、葉っぱのざわめく音や、木々の隙間を通り過ぎる音が聞こえてきます……。
うーん……男の哀愁ですねぇ……。思わずトレンチコートの襟を立てて歩きたくなるような音です……。
Wさん、本日はお話を聞かせてくださって、ありがとうございました。
さて、それでは本日の『怨霊の背景を探る!』のコーナー、まとめです。
……『隣の芝生は青いもの!』……家事分担してても、自分ばかりが家事してる! ってなってしまうこと、ありますよね。
自分の労力は大きく、他人の労力は小さく見えがちなものです。
うまいこと、協力していけたらいいんですけどね。
さて。この『怨霊の背景を探る!』のコーナーでは、今後も怨霊の方々の恨みつらみについて、お話をうかがっていきます。次回もお楽しみに!




