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昼下がり、蝉の声がうるさくて、家にいるのが嫌になった。
「散歩でも行くか」と声をかけると、ひよりちゃんは少しだけ眉を動かした。
「いいよ、暇だし」
並んで歩く道すがら、ひよりちゃんはずっと無言だった。
俺も、何を話せばいいかわからないでいた。
「ねえ。あんたってさ、友達いるの?」
「唐突だな。いるよ、たぶん」
「ふーん。なんか、ぼっちっぽい」
「ひよりちゃんに言われたくはないな」
「うるさい。それより、ひよりちゃんってなに? ちょっとなれなれしくない、あんた?」
「他にどう呼べと?」
「お姫様」
くすっと笑って、ひよりちゃんは「はい、決まりね」と指で俺を差す。
どうやら決定事項のようだ。