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「じゃ、あとはよろしくね」と叔母さんは言い残し、車のエンジン音とともに去っていった。
残されたのは、麦わら帽子に白いワンピース、そして不機嫌そうな顔の少女。
「……あんたが面倒見るって? へぇ、終わったわねこの夏」
小六とは思えぬ口ぶりに、俺は思わず笑ってしまった。
「終わるかどうかは、俺次第だろ」
「ふーん。せいぜい頑張ってよ、保護者さん」
少女――ひよりちゃんはそう言って、庭先の蝉の鳴き声を背に、家の中へと消えていった。
俺の、そしてひよりちゃんの、八月が今日から始まる。