表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/8

解説

この小説の核は**「視点の操作による叙述トリック」です。

読者は“私”という語り手を無条件に信じがちですが、本作ではその語り手が実は“彼女”であった**、もしくは、“私と彼女が最初から同一存在だった”という構造が仕込まれています。


重要なポイント:

•読者が受け取る「記憶」や「証言」は、すべて語り手の主観を通じて提示されている

•“彼女の声”がレコーダーから流れる描写や日記の文面が、じつは語り手の内面の反映でもある

•名前の記憶が最後まで曖昧なことで、読者が語り手の実体を明確に定義できない

•最終章で提示される遺書が、「誰が誰だったのか」の読みを根底から覆す“入れ替えの証拠”になる


本作のタイトル「名前のない遺書」は、消されたアイデンティティと、語り手の正体を読者自身に判断させる余白を象徴しています。




〔登場人物リスト〕


■ 私(語り手)


本作の語り手。記憶喪失の状態で物語を始め、失踪した「彼女」の記憶や痕跡を探しながら、次第に自分の存在に疑念を抱いていく。

※物語の構造上、語り手の正体は終盤で反転します。


■ 彼女


失踪した“同居人”。記録上では語り手と似た容姿・声を持つが、外見も人格も異なる存在。

物語の途中から、彼女が「語り手のもう一つの人格」か、逆に「語り手こそがコピー」だったのではという二重構造が明かされていく。


■ 警察官(捜査担当)


語り手に対して彼女の失踪事件の事情聴取を行う。冷静かつ理知的な立ち位置を保ち、物語の事実関係を少しずつ提示するが、最終的には「証明不能な事件」として捜査を打ち切る。

ここまで読んでくださって、本当にありがとうございます。


『名前のない遺書』は、私にとっても非常に挑戦的な作品でした。

真相が最後の数行でひっくり返るように設計しつつ、それまでのすべての描写に“二通りの意味”があるように書くというのは、まるで文章で迷路を作るような作業でした。


ミステリー小説の面白さのひとつは、「物語の外にある真実に気づく瞬間」だと思います。

今回の作品が、あなたの心に「誰かの視点を信じること」の怖さと美しさを残せたなら、これ以上の幸せはありません。


いつかまた、「あなたが誰かを信じた瞬間」に、もうひとつの物語が生まれることを願って。


――柳


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ