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勇者に非ず  作者: 天空
魔族とゴブリンは全く別の生き物
8/33

08

「いらっしゃ〜い」


 路地裏にひっそりと建てられた宿屋に入ると、うつ伏せになった茶髪の女性が受付に座っていた。チラリとこちらを見ても、僕達の容姿や、人を背負ってる事には何も言ってこない。


「四人分頼むのじゃ」


「はいよ〜一部屋一泊銀貨四枚ね」


 受付に銀貨が八枚置かれた。黒い鎧の人の手には気付いたら皮袋が握られていた。鎧はフルフェイスで、見上げても顔は見えない。


「あ、えっと僕のも……?」


「その程度気にするでない。ここは年上に甘えとくのじゃ」


「年……上?」


 一瞬僕よりどうみても幼い彼女を見たが、すぐに鎧の人を見て納得した。ここまで一言も喋らないから怖い人なのかと思ったけど、案外良い人なのかもしれない。


「で、では……お言葉に甘えて」


「部屋はふたつで頼むのじゃ」


「は〜い」


「え、ふたつって」


「うむ。(われ)とファントムで一部屋。お主ら人間で一部屋じゃ」


「えっ?! あっ! その」


「部屋は二階ね〜」


「うむ」


 抗議しようとするも、手を掴まれて連れて行かれた。


「我らは隣の部屋におる。其奴(そやつ)が起きたら呼ぶのじゃ」


 ふたつあるベッドの片方に少年を寝かせると、二人は行ってしまった。


 えぇ……どうすれば良いの?


 ベッドで寝息を立てている少年の隣に座り、一人唸りながら頭を抱えた。


「ん、……ここは?」


「あ、お、起きましたぁ?」


 僕はビクンと飛び跳ねて、フードを深く被る。起きたばかりの彼は怪訝(けげん)な表情をして口を開いた。


「誰だ? あんた……」


 少年は立ちあがろうとしたが、顔を(しか)めて頭を触った。


「僕はジェヴィ。魔道具師(まどうぐし)だよ。えっと、あんまり急に動かない方が良い、と思うです……」


 僕はフードの中からポーションを渡した。


「これは」


 瓶に入った緑色の液体が揺れて、チャプチャプと音を鳴らした。


「えっと、ポーション。それ飲めば治ると、思うます?」


 久しぶりの会話に少し(ども)る。緊張しすぎて言葉もめちゃくちゃだ。


 怪しそうにこちらを見てくる目は変わらないが、一度喉を鳴らすと、一気にポーションを飲み込んだ。


「んっ! 美味いな」


「でしょ! それ、僕が頑張って味改良したんだよ!」


 興奮して勢いよく彼に近づく。外れそうになるフードを慌てて深く被り直して離れた。


「あっ、つい。ごめんなさい。えっと、傷は大丈夫ですか?」


「あぁ、ジェヴィのお陰で傷も痛まなくなった。ありがとうな。俺はジンだ。よろしくな」


 警戒した視線は薄れ、穏やかな表情だ。


「記憶が曖昧なんだが、俺を殴ったのって……ジェヴィ?」


 (いぶか)しげな表情で僕を指差す。


「ち、違います! えっと、少し待ってて下さい!」


 僕は慌てて手を振って部屋を飛び出した。


「彼、起きました!」


 隣の扉を開けると、ベッドの上でくつろいでいた彼女はパッと起き上がって、部屋の隅に直立した鎧の人と共に部屋から出てきた。

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