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ジェヴィの荷造りを終えた俺達は噴水広場まで戻って来ていた。夜は深まり祭りも終盤。屋台も畳まれており、残すはネクティスを埋葬するのみだ。炎の魔法で照らされた棺桶に花束が何束も積まれていく。
「ルミエーラたちはまだか?」
長く続く列にはルミエーラの姿だけでなく、船頭と仁美の姿もない。
列の最後には、花束の山が出来ていた。人の列がなくなったのを確認して、最後にジェヴィが花束をネクティスの手元に置くと、棺桶を閉じた。結局、ルミエーラは最後まで現れなかった。
「ったく、どこ行ってんだあいつら」
棺桶は町の北側。共同墓地まで運ばれた。棺桶を運ぶ大男二人の後ろには、町中の人々が行列となって続く。墓は他より少しだけ豪勢な大理石で出来ている。
「さようなら、師匠」
棺桶が墓に入り、土がかけられる。火の魔法もなくなり、完全な暗闇になった墓場だったが、ヒュ~という音が鳴り、パンっという破裂音と共に空が赤く輝いた。
突然の出来事に空を見上げると、飛んで行った火球は空で弾け、円形のきれいな花火を咲かせた。
「花火!? それも演出か?」
「いえ……こんな予定、それに花火? これがそうなの?」
目を見開いて固まるジェヴィ。ジェヴィじゃないなら、考えられるのは一人しかいない。花火の光で、城壁に人影が鬱tる。逆光で誰かは分からないが、その立ち姿は三つある。
「なぁ、本当によかったのか?」
城壁の上、打ちあがる花火の軌道を修正しながら船頭が聞く。
「良いにきまっとるじゃろ。我からの選別じゃ」
「ひーん。怖いよぉ」
仁美は矢の先端に取り付けられた火の玉におびえている。
「ほれ、さっさと放つのじゃ。渡したユラン分の働きはしてもらわんと困るのじゃ」
「わ、わかったよ~……」
仁美はしぶしぶ三本の矢を打ち上げる。それを等間隔に船頭が誘導することで真っ黒な夜空のキャンバスに赤い花火がきらめく。
「どうじゃ、送別にはぴったりの花じゃろ」
「まぁ、確かにきれいですね」
夜空に輝く花火は朝日が昇るまで上がり続けた。
翌朝、宿屋で目覚めた刃は動き始めた朝の町に出かけた。
町は昨日の騒々しさをすでに片づけられており、普段の生活に戻っている。脳裏に残る昨日の騒々しさをアップデートするように、俺は町をゆっくりと歩く。
って、俺はなんでここに来てるんだ?
気づいたら、俺はジェヴィの家の前に立っていた。特に用もないし、宿屋に戻ってもうひと眠りしようかとしたら。
「え、ジンくん!?」
扉が開いて、ジェヴィが出てきた。
「お、よ、よう、昨日は寝れたか?」
驚きで、意味の分からない世間話が口から飛び出す。
「うん。寝れたよ。ルミエーラさんに呼ばれたんでしょ? 入ってよ」
「お、おう?」
特に呼ばれた記憶もないが、俺は促されるままに中へと入った。
「うむ、時間通りじゃな」
リビングに入ると、ルミエーラが紅茶を飲んで寛いでいた。
「何してんだ? こんな朝っぱらから」
「葬式も終わったのじゃから、出発に決まっとるじゃろ」
ルミエーラは紅茶を飲み干すと、俺の横を通りすぎて玄関に向かう。
「なに突っ立てるんじゃ。行くのじゃ」
「もうかよ、準備とかあるだろ、剣だって宿に置いたまんまだしよ。ジェヴィだってまだ準備あるよな?」
「えっと、僕は昨日言われたから……」
気まずそうに視線をそらされた。どうやら知らなかったのは俺だけらしい。
「ほれ、分かったら早う行くぞ。それにお主の荷物なら、問題ないのじゃ」
玄関の外で、ガタガタと音が鳴る。扉を開くと黒い鎧のファントムが馬車の御者台に座っていた。
「ほれ、乗るのじゃ」
押し上げられるようにして、馬車に乗る。席には俺の剣と荷物が粗雑に置かれていた。
「次の目的地は、ルマールじゃ!」
馬車に飛び乗ったルミエーラが言うと、ファントムの鞭で馬車が動き出した。




