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勇者に非ず  作者: 天空 浮世
魔族とゴブリンは全く別の生き物

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「がっぎっぐっ」


 突然の衝撃に吹き飛ばされた俺は、ゴブリンを何体も巻き込みながら吹き飛んだ。


 暫く吹き飛んだ先でやっと止まる。俺はすぐに立ち上がって集まって来たゴブリンを切り裂く。


「戻ったぞ!」


 ゴブリンの壁を抜け、ネクティス達の元に戻る。


「うむ、早速じゃが、我の代わりにネクティスを助けるのじゃ」


 ルミエーラの視線の先では、ゴブリンとネクティスが目にも止まらぬ速さで一進一退の攻防を繰り返していた。


「あそこ入るのか? 俺が?」


 俺が入ったところで何が変わるのか、むしろ邪魔なのでは?


「大丈夫じゃ。慣れればそう速くない」


 ゴブリンを片手間に突きながら俺の背中を押す。


「ほれ、はよ行かんとネクティスが死ぬぞ」


 常々思うのだが、ルミエーラの死生観はどこかおかしい気がする。


「……分かったよ」


 重い腰を持ち上げ、ネクティスの元へ向かった。


「助太刀する!」


 ギリギリ見えるゴブリンの攻撃を止める。武器は他のゴブリンと変わらない棍棒だが、攻撃の重みは全然違う。


「もう戻ったのか! 助かる」


 ネクティスはジンが吹き飛ばされず、攻撃を防げているのを確認して数歩下がる。


「すまんが、そのまま少し耐えててくれ!」


「了っ解!」


 速すぎて分裂したように迫る攻撃を弾いて応える。仁美(ひとみ)の矢より全然速い攻撃だが、なんとか捉えられていた。


「良いぞ、そのまま」


 後ろでガサゴソと動く音が聞こえる。ゴブリンの攻撃は、不規則な軌道で襲い来る。


「どっかで見た様な動きだなぁ!」


 素早く不規則な動きは仁美と船頭の連携攻撃に似ている。速度こそこちらの方が速いが、もう動きにも慣れた。少なくとも防ぐだけなら問題ない。


「ギッギリ……」


 攻撃が通らない事に苛立ちを募らせたのか、ゴブリンは少し下がって歯軋りしている。


「ナゼ!」


 突然の知性ある声。


「ワレワレノギャマヲスル!」


「な、なに言ってんだ?」


 ゴブリンから放たれたそれは鳴き声などではない。明らかに意思のある言葉。


「耳を貸すでないのじゃ」


「ギギャ!」


 ゴブリンは叫ぶと、またこちらに向かって来た。


「ッくっそが!」


 知性のなくなった叫びに反して、その攻撃は苛烈さを増していた。分裂したかの様に振られる棍棒がフェイントを交えて襲い来る。それはこれまでに出た、どの剣道大会の猛者より恐ろしい。


「流石に、速すぎ、だろ……!」


 速度だけでなく、威力も増して段々と棍棒を防ぐのも厳しくなり、剣で受けるも剣ごと後ろに吹き飛ばされる。


「良く耐えたな」


 ネクティスに受け止められる。頭をポンっと叩かれ、俺の前に立った。


「お陰で準備出来た」


 ネクティスは黒い稲妻の走る小さな拳銃をゴブリンに向ける。


「俺の生涯きっての最高傑作。魔王の代わりに喰らいな」


 黒い稲妻が銃口に集まり、一際大きな光を放つ。


「ギッギギャ?」


 銃口から出て来たのは黒い球体。それがフワリと浮きながらゴブリンにゆっくりと向かっていった。


「ギャ、ギャッ!?」


 浮かぶ球にゴブリンが棍棒で触れると、棍棒が黒い球に吸い込まれた。


「おい、なんだよあれ」


 ゴブリンがこれまでのどの攻撃より速く逃げようとするが、既に手遅れ。身体(からだ)がどんどんと吸い込まれ、渦巻き状に吸い込まれてしまった。


「ブラックホールじゃねぇか……」


 何も残さず消えたゴブリンに冷や汗が流れる。


「これだけじゃない。あれは吸い込んだものの味を覚えるんだ」


 ミニブラックホールは先程までの鈍間な動きから一変。獲物を狙う獣の如きスピードで、今なお町へ進むゴブリンへと向かって行った。

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