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勇者に非ず  作者: 天空 浮世
魔族とゴブリンは全く別の生き物

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24

「もう夕方か?」


 気付かないうちに相当経っていたのか、俺は外を確認するが、空はまだ青い。


 カーン。一度鳴った鐘が再度鳴る。


「二回……」


 ジェヴィが薬から目を離して不安そうに呟く。


「二回鳴るとなんかあるのか?」


 鐘がまた鳴る。三度目だ。


「鐘は鳴る回数で意味が変わるんだ」


 ネクティスが上着を羽織りながら答える。


「一回は夕刻を知らせるもの。二回は数匹の魔物などの小規模な災害。三回は数十から数百の大規模な災害。四回以降は——」


 その瞬間、鐘がけたたましく何度も鳴り響いた。


「町の存続が不可能な規模の災害だ」


「な、なにが起きたの?」


 製薬を中断したジェヴィが俺の服をぎゅっと掴む。


「二人とも、ギルドに向かうぞ」


 白い上着を羽織ったネクティスを先頭にギルドに向かう。町は警報があれだけ鳴り響いたのにも関わらず、ギルドまですれ違うのは衛兵や冒険者ばかり。民衆はまるで消えたように居なくなっていた。


 不気味なまでに静まり返った町とは反対に、ギルドは怒声と喧騒に塗れていた。


「状況は」


 ネクティスは駆け回る職員の一人を捕まえる。


「ネクティス様!? どうしてここに!?」


 一瞬だけ喧騒が収まり、全員がネクティスに向く。


「そんな事は良い。それより何があった?」


「はい! 正門からゴブリンの大群がこちらに向かっていると、報告がありました!」


 若い青年の職員は背筋をピンと伸ばして説明をする。こちらを見ていた人々もまた動き始めた。


「その数およそ数百から数千にわたるとの事、到着予想は後一時間前後です!」


「正門だな。すぐに向かう。着いて来れる者は着いてこい!」


 ギルドの中にいた冒険者が声を上げてネクティスに続く。


「ジェヴィの師匠。凄い人だな」


「うん! 師匠は凄いんですよ!」


 俺達も正門に向かう。


 外には何十人もの衛兵と冒険者が平原の先を睨んでいる。その視線の先、一面に広がる草原は一見いつも通りだ。


「なぁ、本当に——」


 疑問が止まる。誰一人として口を開かない。静かな草原に小さな地響きが鳴り響く。ドドドドと、重機を思わせる地響きは段々と大きくなり、地平線の先から土煙が立ち込め始めた。


「総員、戦闘準備!」


 ネクティスの声が鋭く響く。ガチャガチャと剣や鎧の動く音。


「ふぅ、間に合ったのじゃ。我も久しぶりに戦いたいからの」


 ひりつく空気を裂いてルミエーラがぴょこんと現れた。


「おい、戦うって、それでか?」


 思わず俺はルミエーラの手元を指差す。ルミエーラが持っていたのは、古い民家などでしか見ない竹箒。赤のワンピースも相まってその風貌は何処かのお店の看板娘だ。


「うむ、宿で貰ったのじゃ」


 まだ色々と言いたいところだったが、仕方なく言葉を止めた。ゴブリン達の進行速度は意外にも速い。


「ジェヴィも来て大丈夫だったのか?」


 これまでジェヴィが戦っているところは見ていない。


「こ、後方っ支援なら! 僕にも、手伝わせて!」


 緊張した様子のジェヴィだが、その目はしっかり前を見据えていた。


「無理はすんなよ!」


 再び前を向く。前方の土煙が突風により晴れる。一面の濃緑。草原より濃い緑の魔物が地平線を文字通り埋め尽くしていた。


 醜悪な見た目。鼻は飛び出し、目は白濁としている。腰の歪んだ小人。まさしく俺の知っているゴブリンそのものだった。

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