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「今日、精神魔法無効化の魔道具を貰ったんだよ」
「無効化? そんなん……はぁ、もう良い。宿屋戻るぞ」
船頭は暫く唸ると、路地裏を進み始めた。
路地を抜けると一度鐘が鳴る。日は既に傾いていて、夕陽が鮮やかに中央広場の噴水を照らしていた。
「あ、お帰り〜」
宿屋に着くと、受付で仁美が食事を貰っていた。
お盆に乗っているのは山盛りの唐揚げ。
「ねぇ見てよこれ! 凄くない?」
押し付けられた唐揚げ。香ばしい匂いが鼻をくすぐる。
「すごいすごい。とりあえず部屋行こうな」
目をキラキラとさせる仁美を落ち着かせ、自室に向かう。
山盛りの唐揚げが乗った机を囲む。
過酷な訓練に加えて昼からお菓子しか食べていない胃が暴力的な匂いに空腹を訴えてくる。
「そんじゃ、頂くか」
「頂きます!」
一番に唐揚げに飛びついたのは仁美。唐揚げを笑顔で頬張り、ハフハフと口から蒸気を出していた。
「明日も訓練なんだよね?」
「だな」
まだ湯気の立つ唐揚げを口に入れる。
「っでもさ! 結構楽しくない? 能力も上手くなってる気がするし!」
唐揚げを飲み込んだ仁美。その手はもう次の唐揚げに伸びていた。
仁美の能力は弓と矢の強化という非常にシンプルなものだった。船頭と二人でルミエーラと模擬戦をしていた時も、何本も木をへし折っていた。勿論、ルミエーラに傷一つ付けることすら叶わなかったが。
「確かに強くはなってる気はするな」
たった一度の訓練だったが、ルミエーラから教わった身体の使い方は非常に為になるものばかりだった。
「そう言えば訓練後にギルドって所に連れてって貰ったよ! これ、ギルドカード!」
仁美は勢いよく四角い板を取り出した。石で出来たそれには、ヒトミヤミと彫られていた。
「へぇ、凄いな」
仁美から受け取る。石で出来た質素な見た目だが、意外と頑丈だ。
「そういや、二人はこれからどうするんだ?」
「そりゃ、この町で暮らすさ」
「え!? 戻らないの? まだ結構な人数残ってるよ?」
「駄目だ駄目。あんな全員洗脳済みの場所に帰りたいのか? 絶対駄目だ」
「むぅ……分かったよう」
キッパリと言い切る船頭。むくれつつも仁美はそれに頷く。
「任せとけ。あいつは俺がどうにかするからよ」
「ありがとう……なんかお腹いっぱいになったら、眠くなってきちゃった」
眼を擦る仁美にカードを返す。気付けば皿は空だ。ふわぁと気の抜けたあくび。こちらまで眠くなってくる。
「それじゃあ、私達隣の部屋行ってるね。お休み〜」
「おう、お休み」
仁美と船頭が部屋を出て行く。
静かになった部屋。日課である剣の手入れをしようと剣を抜き——。
待てよ、……私達? あいつら同じ部屋で寝るのか? それは、良いのか? こう、色々と。
俺はそれ以上考えるのをやめ、剣の手入れに戻った。




