20
「降参降参だ」
ローブが前から背中にかけて縦に裂ける。
俺は両手をひらひらと上げながらその場に座る。
「うむ、最後のは面白かったぞ」
満足気に頷く魔王。
「そりゃどーも……で、なんで俺を殺さなかった?」
ルミエーラの放った斬撃は確かにネクティスの体を通った。しかし、斬撃はネクティスだけを避けてローブと魔道具のみを切り裂いていた。故意的に避けられた。そうとしか考えられない。
「我は別に殺すとは一言も言っとらんぞ。そんな事よりお主の事を聞かせてくれんかの」
玉座から一瞬にしてネクティスの眼前に迫り、好奇心いっぱいの目でネクティスを見つめた。
情報を抜く為に生かしたのか。とも思うがその馬鹿みたいに純粋な好奇心いっぱいの目にネクティスは毒気を抜かれてしまう。
何処に行ってもその頭脳と発明品を狙った人間の媚びや妬み、泥々とした視線を浴び続けていた。
ネクティスにとってその純粋な目は、かつて道端で魔道具で芸をして日銭を稼いでいた頃、誰もが軽蔑の視線を送る中、子供だけが向けてきた無邪気な視線の様で、とても興味を惹かれた。
「……えっと、俺についてか?」
「うむ、弟子はあれだけなのか? 人間は上位の者ほど弟子を多く持つのじゃないのか?」
扉の前。簀巻きで暴れる灰色のフードを指差す。
「俺は一人しか弟子は取らないと決めてるんだ。教え切れないからな。あいつはジェヴィ俺の三人目の弟子だ」
「三人目か。他の弟子はどうしたんじゃ」
「全員死んだよ」
「ほう……わざわざ弟子を助けようとするお主の弟子がか?」
後ろの簀巻きに一瞬視線を送り首を傾げた。
「全員向上心の塊かってくらいに無茶な実験に挑んで死んでったよ」
天井を見上げため息をつく。
「俺の夢はな……弟子に看取られる事さ。師匠の方が長生きってのは褒められたもんじゃねぇ」
「それが主の願いか」
「そうなるな。もう充分聞いただろ。早く俺の願い叶えちゃくれねぇか?」
ネクティスは覚悟を決めて首を差し出す。
「うむ、そうじゃな。叶えてやろう」
剣が上に振り上がる。振り下ろされた剣がネクティスに迫り来る。剣が身体を貫く直前で弾かれた。
「まだ何か隠しておったか」
「残念ながらまだ死ぬには若いんでね!」
正真正銘最後の切り札。完全反射の盾を持って、ジェヴィか俺の前に立って剣を弾いた。
「またな魔王!」
ジェヴィから転移の腕輪を受け取ると、魔王城から自国へと戻った。




