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「ふむ、戦うのだな?」
「これでも勇者としてここへ来てるんでね。覚悟は出来てる」
「そうか」
魔王が笑ったその瞬間。バァンという破裂音が唐突に室内に響いた。
ローブの中から煙が上がる。チラリと覗くのは黒光りした銃口。
「ふむ、面白いおもちゃじゃな」
当然の如く、魔王は身じろぎ一つしない。
「怪我どころか、当たってもいないか」
弾が当たる直前。魔力の壁が出来ていた。恐らく結界を張っているのだろう。
「それで終わりかの?」
俺の言葉に対して、退屈そうにあくびで返す。
「まさか」
蛇腹状の剣と黒い水晶球をローブから取り出し、剣の柄に水晶球を取り付けた。
「これならどうだ!?」
水晶と共鳴し、黒く染まった剣を鞭の様に振る。勿論ただの蛇腹剣ではない。魔道具を取り付けた属性付与蛇腹剣だ。
剣は有らぬ方向に飛んで行くが、物理学に反した動きで魔王の方へと伸びていった。
「追尾蛇腹剣!」
頬杖を付きつまらなそうにしている魔王。しかし、その目はしっかりと蛇腹剣の切先。黒い玉をみていた。
蛇腹剣の切先が魔王の前に張られた結界に触れると、結界が割れた。
「対結界用兵器。結界破!」
結界が割れた隙間から蛇腹剣が滑り込み、魔王目掛けて飛び込んで行く。
「中々優秀なアイテムな様じゃが」
不規則な動きの蛇腹剣だったが、薄く赤色に光る刀によってあっさりと弾かれた。
今のは……明らかに何もない場所から現れた刀。
「空間魔法か?」
「まぁ似たようなもんじゃな」
「さすが魔王。剣に結界なんでもござれか」
蛇腹剣をもう一本ローブから取り出す。こちらも黒色だが、付いている水晶は別だ。
魔力封じ。触れた魔法を霧散させる魔道具だ。
両手で蛇腹剣を振る。蛇腹剣は上から下から、時には後ろからフェイントも織り交ぜて振るうが、魔王は座って頬杖を付いたまま片手に持った真紅の刀で軽々と弾く。
「ニ本じゃ歯が立たんか……なら」
両手に持った蛇腹剣を宙に投げる。蛇腹剣はそのまま宙に浮いて魔王を狙い続ける。そして新たにもう二本。炎と氷の水晶が付いた蛇腹剣をローブから取り出した。
「四本! 更に!」
取り出した蛇腹剣を同様に放り、ダンベルと砂時計を取り出す。
「重荷! 遅延!」
床に置くと、淡く発光し、魔王の動きが一瞬だけ止まった。
「む?」
「重力魔法と時間操作魔法の魔道具だ。加えて」
ガチャン! と音を立ててローブから出したのは、古くの文献に残されたものを改良したガトリングガンという魔道具だ。
「線と点と面。三種の攻撃に耐えられるかな!?」
四方から迫り来る蛇腹剣に、前から永続的に放たれる無数の銃弾。重力と時間操作によるデバフの中凌ぐなど、魔王にも突破は不可能。
「ふむ、面白い」
———かに思われた。
紅の一閃。
紅い斬撃が全てを切り裂いた。
「はは……流石魔王だな」
ガシャガシャと宙に浮いていた蛇腹剣が落ち、マシンガンが壊れた砂時計とダンベルの残骸の上にバラバラとなって崩れる。




