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勇者に非ず  作者: 天空 浮世
魔族とゴブリンは全く別の生き物

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「……久しいの。――ネクティスよ」


 ルミエーラは老人の横に置かれた椅子に座ると、そう呟いた。


「えっと、その、師匠はもう何年も起きてないんです。すみませんが、隣の部屋に……」


「ここは良い町じゃな。わざわざあの森で眠った甲斐が有ったってもんじゃ」


「……やっと、俺の願いを叶えに来たのか?」


 ルミエーラの声ではない、しゃがれた老人の

低い声が響いた。


「え、どうして――」


「ま、似たようなもんじゃな」


 ジェヴィがその場に崩れ落ちた。


 ネクティスはルミエーラをじっと見据えてゆっくりと起き上がった。ルミエーラは特に驚きもせず答えた。


「師匠!」


 その場にペタンと崩れていたジェヴィが、泣きながらネクティスに抱きついた。


「おぉ、すまんな。心配かけて」


「師匠! 師匠!」


 ジェヴィは子供のように、えんえんと泣きじゃくる。


「……にしても」


 しばらく泣いていたジェヴィが、ネクティスの膝の上で寝てしまったのを確認すると、ルミエーラはネクティスの顔をじろじろと見て、ニヤリと笑った。


「ネクティスよ。お主老けたのぉ」


「そりゃあれから千年だ。老けもする。そういうお前は随分と若く、いや……幼くなったな」


(われ)にも色々あるんじゃ」


「……彼はどうしたんだ?」


 少し部屋を目で見渡してネクティスは聞いた。


(じん)は我の弟子じゃよ、お主を真似して、我も一人だけ弟子を取ることにしたんじゃ」


「なるほどな……今度は最後までしっかり面倒見てやれよ」


「無論じゃ」


「そうかい。で、君がジンかい?」


「は、はい」


 優しい声で呼ばれるが、俺は完全に気圧されていた。カチカチな動きでネクティスの前に立つ。


「ふむ」


 鋭い目が全身を突き刺すように観察する。


「俺と同じ、英雄の目だ」


 ふっと優しく微笑んだネクティス。皺枯れた手で頭を優しく撫でられた。


「彼女は魔王らしく自己中心的なやつだが、根は良い奴なんだ。よろしく頼むよ」


「はい……ん? 魔王?」


「なんだ、聞いてなかったのか?」


「魔族ってのは……魔王?」


「違う」


 予想外の内容に思わずルミエーラを見ると、首を横に振った。


「元魔王じゃ。今は何者でもない」


「いや、変わんねぇだろ……」


 腰に携えた剣に手を掛けた。一瞬で張り詰めた空気となるが、ルミエーラもネクティスも特に気にした様子はない。


「やるなら相手くらいはするがの?」


「……いや、やめだ」


 剣を腰に戻す。


「一応クラスメイトを助けて貰ったしな。それに、教わるなら魔王くらい強い方が良い。もちろん強いんだもんな? 元魔王さんよ」


「……はぁ、何度も言わせるでない。無論じゃ」

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