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「森に入ってから、絶対に気を抜くんで無いぞ」
森に入る直前。ルミエーラから耳打ちされた刃。
とりあえず、周囲を警戒しながらいつ、何があっても良いよう素振りをしていると、唐突な風切り音。何かが、目先を掠めて飛んでいった。
飛んだ先を見ると、ジェヴィがルミエーラに押し倒されていた。その後ろの木には、矢が水平に突き刺さっていた。
悪寒が走る。直感で剣を振り抜くと矢が弾かれた。
「その調子じゃ」
矢の速度は速いが、集中して視れば、弾くことの出来る速度だ。
「それ、前に進むのじゃ!」
ジェヴィを担いだルミエーラに背中を押されて、矢の飛んでくる方へと進ませられる。
「おい! 弾くので手一杯だが!?」
目を見開いて剣を振り回す。前に進むごとに矢の速度は段々と上がっていく。弾くのも精一杯で、生傷が増えてきた。
「!?」
突如、真右から飛んできた矢をルミエーラが腰に下げた小さな籠で弾いた。
「気を抜くなと言ったじゃろ。相手は二人じゃ」
前の矢を弾きながらも右横に意識を向けていると、今度は左から矢が飛んできた。
「っぶね!」
ギリギリで気付き、今度は自身で弾く。その間も前方からは、矢が止めどなく放たれていた。
軽傷で森を抜けると、草原に二人の男女が立っていた。
「あいつら、俺の同郷だ」
自身より大きな弓を持つ小柄な女子は仁美 矢見もう片方は船頭 航機という方位磁針を持った糸目の男子だ。
「おい! 俺だ! 同じクラスの刃だ!」
手を上げて無抵抗を示すが、仁美の番えた矢は無慈悲にこちらを向く。その目はうつろだ。
躊躇なく飛ばされた矢を剣で弾く。
船頭が指をクイっと動かすと、後頭部に強い衝撃が走った。ガクンと下に向けられた頭の上を弾いた筈の矢が掠める。
「気を抜くなと言っとるじゃろ」
ルミエーラが俺の頭を籠で殴ったらしい。もし、そのままだったら綺麗にヘッドショットだっただろう。
「すまねぇ。あいつら……俺と同じか?」
「うむ、洗脳されとるの」
「そうか」
俺は自分の頬を叩く。
「っしゃ。もう騙されねぇぞ」
矢は軌道の歪みを隠すのをやめた。船頭は指を上下左右に素早く動かす。それに合わさって矢の動きも変則的に変わっていった。
「っく!」
不規則な動きに合わせて矢の威力も上がっており、剣が重く弾かれる。
「ルミエーラ! 俺があいつらを抑えるから! 解呪してやってくれねぇか!?」
防ぐだけで精一杯だというのに、柄にもない事を口走ってしまう。別に二人と特段仲が良かった訳ではない。それでも助けない理由にはならない。気合いで体を前へと動かす。
「ジ、ジンさん! これっ!」
担がれたジェヴィの声に振り向くと同時に、飛んできたそれを反射的にキャッチした。




