前世6
ベガの結婚相手である王子は、パッと見美男子であるとはいえ冷たい風貌で、私は少し不安を感じていたがすぐに杞憂である事がわかった。
冷たそうな顔つきに反して王子は情熱的にベガを愛し、大切にした。
王子は良き王となり国を治めた。
民の声を拾い上げ、問題のある地へは自ら足を運ぶ。
そんな王を私は好ましく思い、アルフレッドの家族の住まうこの地を守るために少しだけ力を貸した。
ベガと王の間には男子が2人生まれ、アリーも女子を2人授かった。
アルフレッドの血が後世に残って行く事に安堵しながら私は王とベガを見守った。
ところがベガの生んだ2人の王子が成人すると王位継承権争いが勃発した。
第一王子が貴族を味方につけ、第二王子が教会を味方につけ影から表からお互いを攻撃し始めたのだ。
第二王子が味方につけた教会は王宮内にもじわじわと入り込んで行き、宗教を掲げてもっともらしい甘言を用いて民すらも味方につけて行った。
そして私の気付かぬうちに、教会はアルフレッドの色を持つベガと私の姿に目を付け、アルフレッドの奇跡を声高に主張しながら私を手中に治めようと画策した。
アルフレッドが亡くなった後もその力を吹聴して教会の地位を上げるために利用していたのは私も知っていた。
苦々しく思いつつも関わらないでいるうちはまだ良かったのだが、いよいよそうも言っていられなくなってきたのだ。
ある時寝ている私に近付いて来た神官を見た瞬間、私が押さえつけてきたどす黒い感情が再び爆発した。
その男こそアルフレッドを刃にかけた男だったのだ。
私が全身に力を激らせ唸り声を上げると周りの空気が見えないナイフのように男に襲い掛かり、男はズタズタに引き裂かれた。
部屋自体も壁が崩れ、物は壊れ、床は剥がれ今にも崩れ落ちそうになっている。
もう一度大きく咆哮をあげると、アルフレッドが死んだあの日のように稲光が走り、雨が降り、風が吹き始めた。
このままではこの国を滅ぼしてしまうかもしれない。
そう思っても荒れ狂う心を制御する事ができない。
感情のまま私は3度目の咆哮をあげた。
窓が割れ風と雨が吹き込む部屋に立ち尽くしていると、ベガとアリーが駆け込んできた。
2人とも濡れるのも構わず、風に足を取られながら私の元に来て、私を両脇から強く抱きしめた。
「ビアンカ、大丈夫。私がビアンカを守るから。」
ベガがあの時と同じ台詞を言ったのを聞いた途端私の心はスッと凪いで落ち着いて行った。
私は鼻先を2人の頬に順番に擦り付けてからぺろぺろと舐めた。
2人は私の身体に手を回したまま体を少し離して私の顔を覗き込んで微笑んだ。
「ビアンカが壊したい世界なら壊してもいいよ。」
アリーがそう言って私の頭を撫でた。
アリーは御使の力を受け継いでいるせいで私と気持ちが通じやすいし、私の事も何となく理解をしているようだった。
この子達がいる世界を壊すわけにはいかない。
でもアルフレッドのいない世界にもう未練がない。
私はアルフレッドが再び現れるまで深い眠りにつくことにした。
アリーに額をつけて気持ちを伝えると、アリーは「わかった」と頷いた。
ベガの鼻先を一つ舐めるとベガはポロポロと涙を流した。
私は光を放出しながら小さく小さくなっていき、手のひらに収まるくらいの大きさになった時意識を失った。
「こんな姿になっても私達を守る力を出してるよ。ビアンカらしいね。」
「そうなの?ビアンカはいつも私達を守ってくれたものね。」
「お父さん代わりだったよね。」
「メスなのにね。」
ベガとアリーは小さくなったビアンカをいつまでも優しく撫でていた。
その後王の力により教会は取り潰され、第二王子は廃嫡された。
小さなビアンカは王宮の奥に部屋を作られ、そこでいつまでも眠ることになった。
アリーやベガは動けなくなるまで毎日のようにその部屋に行きビアンカに声をかけ、その子供達もまたその部屋を訪れるようになった。
「ビアンカがまたお父様と会えたら、きっと世界が変わるわね。」
ベガは死ぬ間際にそう言って微笑んだ。
アリーは御使の力を受け継いだ子供に、力の扱い方を教えながら歳を重ね、ビアンカが寂しがらないように、出来る限り頻繁にその部屋で力を放出してビアンカに語りかけるようにと遺言を残した。
完結です!お付き合い頂きありがとうございました!




