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お祖母様が1人で王宮に向かうと聞いた時、私は一緒に連れて行って欲しいとお願いした。

私が付いて行ったところで何の役にも立たないかも知れないが、お祖母様の事もアルフレッド様の事も心配でじっとしていられなかったからだ。


ひとりでこの邸で護られていたって、お祖母様やアルフレッド様に何かあったとしたらどのみち私は王宮に向かう。

そう主張したけれどお祖母様は「この邸にアルフレッド様から連絡が来るかもしれないから」と私を説得した。

私も一度は納得したが、1人邸で待っていると悪いことばかりが頭に浮かんできて、やはりついていくべきだったと何度も後悔した。


我慢できなくなり、小さなナイフと笛を懐にこっそり仕舞い込んだ所で、門のところに馬車が停まったのが窓から見えた。

ボーデン家の御者だ。

走ってその馬車のもとへと向かうと、馬車から降り立ったのはデュランとマリーだった。

そしてデュランの肩にはアルフレッド様の祝福を纏った鳥がとまっている。

アルフレッド様は無事なのだ!


これから王宮に向かうという2人を必死で説得して馬車に同乗させてもらうと、鳥が私の膝に乗ってきた。


「アルフレッド様、酷い目にはおあいになっていませんか?」


尋ねると鳥は軽く首を振り小さくため息をついた。


「まあ、鳥なのにため息なんてつけるのね!私が強引で呆れてしまわれました?

でも嫌なのです。何もわからず待っているのが1番怖いのです。」


鳥はまたため息をついた。


「アルフレッド様は女神の祝福を気付かれていませんか?」


鳥が頷いたのを見て安心した私はその鳥をそっと撫でた。


「よかった。それならば私達に何かあったとしてもアルフレッド様は助かるはずです。」


鳥は目を尖らせて首を振った後軽く私の髪を引っ張った。


「冗談です。私達だってただ黙って王家の思うようにはされませんわ。」


また鳥を撫でると鳥は少し安心したように喉を鳴らし動かなくなった。

デュランは「大概こいつ寝てるんですよ。」といいながら、その鳥を優しく布で包み胸元に抱えた。


王宮の門の前に着くとデュランが馬車から出て行こうとしたので、私はそれを制して馬車から顔を覗かせた。

マリーとデュランの話ではクーデターが起きたとのことだったから、王宮は今警戒を強めているだろう。

使用人でしかないデュランが出て行っても追い返される可能性が高いし、元々呼び出しを受けている私が出た方が話が早いと考えたのだ。


「ジェンダー公爵家のアナベルです。」

そう名乗って王家からの書簡を見せると門番はすぐに道を開けて通してくれた。


幼い頃から年に何度か女神の間に来ている私は、それなりに王宮の中には詳しくなっている。

いざという時の逃走経路を頭の中で組み立てながら、途中の部屋にお祖母様やアルフレッド様の気配を探す。

案内の侍女が先導し、デュランとマリーは私の付き添いとして後ろを歩いている。


デュランの抱えた鳥は目覚める気配がない。

この鳥がアルフレッド様の居場所を教えてくれると有難いのだけれど。


控え室に通され侍女が出て行ってからも、私達は口を開かずただ視線を交わした。

デュランの剣は取り上げられてしまっているが、幸い私の懐のナイフと笛は気付かれていない。

私はそっとデュランの側により、ナイフを手渡してから笛を手の中に握り込んだ。


間も無くして侍女が戻ってきて、私一人でついてくるようにと告げた。

そうなるだろうと馬車で話していた通りだ。

応接室に案内されると、中にはお祖母様と王太子殿下、数人の騎士が向かい合っていた。


お祖母様は予測していたのか、私を見て驚いた様子も見せずに優しく微笑んだ。


「アナ、こちらへいらっしゃい。」


「アナベル嬢もようやく来たか。待ちかねたよ。」


この男が私達を潰そうとしている。

そう思うとお腹の中が熱くなり叫び出したくなったが、私は何とか感情を抑えてお祖母様の横に立った。


「さて、ご存知かもしれないが、この度私が王の座を継ぐこととなった。そこでジェンダー家の処遇について話し合うために来ていただいたのだ。」


「潰す気しかないくせに白々しい。」


お祖母様が吐き捨てるように言うと、王太子殿下は白薔薇が花開くように美しい笑みを浮かべた。


「ははは!その通りだ!もうこの国に女神の祝福など必要ない。お前達の存在は混乱しか生まぬ。」


「王妃様のことは残念でしたが、私たちを憎むのは逆恨みもいいところです。私達は国のためだけに力を使い、ただ静かに生きてきただけですわ。」


「母上…そう、母上のこともひとつのきっかけではあるが…母上は他国の生まれだからな…


私はずっとこの国を見てきて違和感を感じるのだ。

この国だけが豊かで災害もない。

それはお前達の力かもしれないしそうでないかもしれない。


どっちにしろこの国は昔も今も恵まれている。

ただ、他の国が辛い思いをしていてもどこ吹く風だ。

他国にだって人は生きているのに、自分達だけが良ければいい。

助け合えば少しは世界が全体が幸せになるかもしれないのに。

努力せず恵みを享受しているだけだから傲慢になりくだらぬ内輪揉めで仕様もない浪費を繰り返す。」


「だからと言ってこの国の恵を捨てる必要がございましょうか。」


「この国の豊かさが女神のおかげだとしたら、お前達を廃した後国は荒れるかも知れない。

もしそうなったら私は知恵を絞り民と共に苦しみながらこの国を発展させていこう。

そもそも私が何もしなくても、お前達の血筋が途絶える日が来るかもしれない。

その時になされるがまま絶望するよりも、立ち向かう気概のある私が今自らその状況を打開した方が未来は明るいと思わないか?」


「私達を擁したままで、その未来の対策を考えれば良いではありませんか。」


「過去の歴史を学び己の眼で見てきて不可能だと悟ったんだよ。」


「これまでがダメでもあなたなら出来るかもしれないでしょう。」


「お前達がいる限りどうしても私の邪魔をする者が出てくるのだ。

お前たちを廃しても国が豊かなままならば女神など眉唾だとわかるだろう。

そして祝福の力を利用しようとするものはいなくなる。

どちらに転んでも私とこの国の遠い未来のためにはお前たちの存在はない方がよい。」





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