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僕は鳥を通じて伝えるべき事をどうにか伝えることができてほっとしていた。
状況を理解した両親はすぐにあちらこちらに指示を出し、行動を起こし始めた。
既に私兵を集めて待機させていたようで、そちらを動かす準備を整えながら、デュランとマリーにはローズ邸へ向かわせ、自分達はひと足先に王宮へ向かうと出て行った。
デュランとマリーはローズ邸でローズ様とアナベル嬢の無事を確認してからボーデン家が味方についた事を伝え、その後両親を追って王宮に向かうことになっている。
父上は王太子殿下がクーデターを起こしてすぐの今、少しでも味方を得たい時だろうから、そこを交渉に使って僕を解放させる予定だと言っていた。
ローズ様とアナベル嬢は王家に近寄らず邸に留まるように伝えよと指示を受けている。
祝福の力を使って長時間意識を共有させていると集中力も途切れ意識を持っていかれそうになる。
鳥やてんとう虫を描き出した時は何かが体の中からごっそりと引き抜かれたような感覚がしたが、共有を続けるとじわじわと削り取られていくような感じがする。
この何かが空っぽになった時きっと意識を失うのだろうなと思うが、今は限界まで共に行動したいと気力を振り絞る。
アナベル嬢とローズ様のことが気になっていた僕はデュランとマリーについていくことにした。
小回りのきく小さめの馬車に乗りローズ邸への道を駆け抜ける。
マリーは最初ボーデン家に残るように言われていたのだが、自分も動かないと気が済まないと頑なに譲らずデュランと行動している。
マリーにそんな頑固な一面があったなんて今まで知らなかったから驚きだ。
無事帰り、皆に直接ありがとうと伝えたい。
心の底からそう思った。
ローズ邸の門に着いて執事に取り次いでもらおうとしていたところでアナベル嬢が走ってこちらに向かってきた。
「デュラン!マリー!」
「アナベル様!アナベル様とローズ様にボーデン家より言伝があり参りました。少々お時間を頂いてよろしいですか?」
マリーが出来る限り平然とした振りをしてアナベル嬢に向かい微笑むと、アナベル嬢は辛そうな顔をして首を軽く振った。
「マリー、申し訳ないのですが、お祖母様は先程王宮に向かわれました。私は残るように言われたのですが…」
アナベル嬢が話しながらついとデュランの肩に止まる鳥に目を向け、一瞬驚いた表情をみせる。
「アルフレッド様、ご無事ですのね。」
ため息のように掠れた声を口から漏らしたアナベル嬢は崩れるように膝をつき顔を覆ってポタポタと涙をこぼした。
「アルフレッド様…よかった…」
子供のように泣くアナベル嬢に駆け寄って涙を拭き、抱きしめて慰めたい気持ちが湧き出てきたが、鳥の体ではどうすることもできない。
アナベル嬢の肩に止まりできる限り優しく嘴で髪をすいていく。
少しするとアナベル嬢は指先で涙を払い、大きく深呼吸をしてから気を取りなおしたように立ち上がった。
「お見苦しいところをお見せしました。
私達が王宮に行かねばアルフレッド様を害すると書簡が届いたのです。
アルフレッド様の髪が切られて同封されていました。
ただの脅しだと思っても不安で…
このままでは実際にアルフレッド様に害が及ぶ恐れもあると王宮に向かうことにしたのですが、お祖母様は私を連れて行ってくれませんでした。
今回は私たちの問題にアルフレッド様を巻き込んでしまい何とお詫びを申して良いのか…」
「アナベル様とローズ様はボーデン家でお守りするよう仰せつかっております。旦那様と奥様が王宮に向かわれましたので、ローズ様もアルフレッド様も心配いりませんよ。」
「アナベル嬢はこの邸にいてください。ボーデン家の私兵も一部通りに配置しますので。俺達はこのまま王宮に向かいます。」
マリーとデュランが慰めるように交互にアナベル嬢に語りかけると、アナベル嬢の目に強い光が宿り黒真珠の瞳が見開かれる。
「いいえ…いいえ!私もご一緒させてください。私だけここで安穏としている訳には参りません。
万が一お祖母様やアルフレッド様に何かあったら私は生きていられません!」
ローズ邸の使用人やデュランとマリーがアナベル嬢をいくら嗜めてもアナベル嬢は譲らず、懐から出したナイフで自らの体に傷をつけようとまでした。
気迫に押されたデュランが最初に折れ、決してそばから離れないように言含めてアナベル嬢を馬車に乗せた。
マリーはデュランと顔を見合わせて小さくため息をつき「気持ちはわかるものね」と呟いていた。
マリーといいアナベル嬢といい普段穏やかな人ほど頑固な一面を持ち合わせているのだろうか。
ローズ様が王宮に向かったとなってはここで時間を取るわけには行かないと言うのもあっただろう。
兎にも角にも僕達は王宮へと急ぎ向かい、その途中で限界が来た僕はついに意識を手放した。




