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アルの手紙を持ってきた鳥は俺が気がついた時には人形のように動かなくなっていた。

良く見ると胸が動いていて呼吸しているから生きてはいるようだ。


アルは描いた絵を具現化できるようなことを言っていたから、きっとこれが祝福の力なのだろうと言う事はすぐにわかった。

でも、見れば見るほど生きている鳥にしか見えない。

アルの生み出したものを見るのは初めてだったが、本当にすごい力を持っているのだと改めて気付かされた。


とりあえず、また何かを伝えてくる可能性を考えて俺は鳥を常に抱えて動くことにした。

途中で見かねた母さんが布を使って器用に鳥を俺に背負わせてくれたので、全く不便なく鳥と行動することができた。

寝る時はベッド近くのテーブルにクッションを置いてその上に横たえた。


アルから次の連絡が来るかもしれないと思うと気が張って明け方まで眠れなかった。

そのせいか寝坊してしまったようで、部屋の中はかなり明るくなっている。

寝返りを打った瞬間、鳥がこちらに向かってくるのが見えて慌てて鳥を捕まえた。


鳥は喋る事はできないが、意思疎通は可能で、ほんの少しアルの状況がわかった。

無事だと言う事に安心しながらもやっぱり心配で、アルを連れ去った王家に対しては時間が経つに連れ苛立ちが募ってくる。

幾らかの質問に答えた後にまた鳥は動かなくなった。

昨日から何も食べていないし飲んでいないが大丈夫なのだろうか。

念のためヒエやアワをいくらか布に包んでポケットに入れ、また鳥を背負った。


昨日の出来事はまさに晴天の霹靂だった。

最初王宮からの使いが来た段階でただ事ではないとは思ったが、使用人の俺達が下手に反抗するわけにも行かないし、その日のうちに帰ってこられると考えていたのだ。

ちょうど奥様と旦那様が領地に向かってしまい、不在だったのも不運だった。


犯罪に関与していた可能性があるからしばらく王宮から返すわけには行かないと通達が来た時は皆言葉を失った。

体のいい理由を付けてアルを閉じ込めたのだとすぐにわかったからだ。

無体を働く事はないと言っていたがそんな事信じられるか。


アルが連れ去られてまだ2日しか経っていないのにもう何日も経ったように感じる。

奥様も旦那様もアルからのローズ様と接触するなとのメッセージを受け取って、今は待つと言っているがもどかしそうだ。

きっと本当ならば今すぐにでもアル奪還に動きたいのが本音だろう。


ボーデン家は国で5本の指に入る貴族で、権力もあるし、王家だって蔑ろには出来ないはずだ。

いざとなれば全ての力を使って、この国を捨てる覚悟でアルを迎えに行くのだと思う。

そしてお二人が着々とその準備を進めているのも俺は知っている。


もちろん俺や母さんだって同じ気持ちだから、いつでも動けるように準備だけはしている。

しかし渦中のアルが動くなと言う事は何かしら考えがあるのか、問題があるのか。

さっきの鳥とのやり取りではそこまではわからなかった。


母さんはおっとりしていて優しい人だが、ここにきて意外にも芯の強い苛烈な性格が顔を出し始めている。

1番我慢できなさそうなのがまさか母さんだとは思わなかった。

シャツとズボンに着替え短剣と槍を持って出て行こうとしたのを奥様が止めたほどだ。


母さんの様子を見に部屋に行ったところで背負っている鳥がモゾモゾと動き出し俺の腕をつついた。

布を広げてやると首を回してあたりを確認してから本棚に飛んでいき、一つの本を足で蹴るような動きをしている。

その本を取り出してやると、それは国語辞典だった。


鳥は嘴を器用に使ってその本を開き1番最初にのっているアルファベットの一覧表のページを開いた。

俺と母さんが覗き込む中で鳥はアルファベットを嘴で示して言葉を伝えてくる。

そのことに気がついた母さんが慌てて奥様と旦那様を呼びにいった。


「ちょっと待っててくれな。俺達が聞いたことを伝えるより皆で聞いた方が効率がいいから。」


『ああ』


「アルはちゃんと飯食ってるのか?」


『食べてる』


「暴力は振るわれてないか?」


『ない』


「お前はアルの祝福なんだよな?」


『ああ』


「今すぐ助けに行きたいよ…」


『落ち着け』


そんなやり取りをしているうちに母さんが旦那様と奥様を連れて戻ってきた。

鳥は昨日からの出来事や今置かれている状況、昨日の伝言の意味などをひとつずつ説明してくれた。

嘴で指し示すという方法は時間がかかる物だったが、俺たちは集中してその言葉を拾っていった。


「王太子殿下がクーデターを起こして王となったのか…王弟殿下か王太子殿下どちらかが近々動くとは思っていたが早かったな…」


「ジェンダー家を潰すためにアルを利用しようとしているなら、私達がジェンダー家と接触しようがどうしようがもう関係ないじゃないの。守りたいと言うならばすぐにでも連絡を取るべきよ。」


『王太子殿下がどう出るかわからなかったので』


「ジェンダー家に関してはどちらにしろ変わらないだろう。アルがダメなら他の家族なり知り合いなりを餌にして引っ張り出すだろうからな。接触しなければ我が家に火の粉がかからないと言うだけだ。ジェンダー家を守る事にはならないぞ。」


『なるほど』


「お前を導いてくれたジェンダー家には私達も恩がある。ここは私達に任せなさい。」


『すみません』


「すまないことなんて何もないわ。あなたは何よりも大切な私達の息子なのだから。あなたの祝福から目を逸らした私達が間違っていたの。これから挽回するから見ていて頂戴。」


奥様はそう言って鳥を撫でた。

たぶんその鳥はアル本人ではないと思うが…

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