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意識を集中して両手で目を覆うと瞼の裏に昨日の鳥の視野が開けてきた。

どうやら僕と繋がっていない間は動いていないようだ。

キョロキョロと首を回すとどうやらデュランの部屋にいるらしい。

時計を確認すると朝の8時過ぎである事がわかる。


ぴょんぴょんと飛び跳ねながらデュランの枕元に近寄った瞬間、デュランがガバっと飛び起きて鳥を掴んだ。


「おい、俺の言ってる事わかるか?」


鳥は頷く。


「俺の言葉もアルに届けられるか?」


また頷く。


「手紙を書けばいいのか?」


首を傾げる。


「このまま話せば伝わるのか?」


また頷く。


「わかった。」


デュランは大きく頷いてゆっくりと話し始めた。


「昨日お前が持ってきた手紙を読んで、旦那様と奥様に全てお話しした。」


鳥は頷く。


「旦那様も奥様もものすごく驚いて、そしてアルから絵を取り上げたことを後悔なさっていた。」


鳥は首を振る。


「そして今度こそアルの気持ちもアル自身も守るとおっしゃった。」


また首を振る。


「昨日の段階で王家には苦情を申し立てた。」


頷く。


「ローズ様とアナベル嬢に関しては、正直動きあぐねている。どのように動けばいいのか判断がつかないんだ。」


頷く。


「今の所、まずはローズ様にコンタクトを取ってみようかという話にはなってる。」


首を振る。


「ダメなのか?」


頷く。


「どうして?」


首を振る。


「とりあえずローズ様に接触しないようにした方がいいのか?」


頷く。


「昨日と状況が変わったのか?」


頷く。


「また手紙を持ってこれるか?」


頷く。


「わかった。それまでジェンダー家に関しては動かない。それでいいな?」


頷く。


「アルは…アルは本当に無事なんだな?」


二度頷く。



遠くで階段を登って来る靴音が聞こえてくる。

今度こそメイドが食事を運んできたのだろう。

僕が共有を解き格子扉に顔を向けると、昨日と違うメイドが朝食を差し入れてきた。

濡れた手拭いも添えてある。


「ありがとう。」


メイドは何も言わず礼をして昨日の夕食のトレーや盥を持って下がっていった。


朝食はパンとサラダとオムレツとフルーツのようだ。

今朝も紅茶のポットが一緒に置かれている。

僕は手拭いで手と顔を拭いてからトレーとポットを机に運び朝食をとった。


あとでデュランに手紙を書かなくては。

そう思っても自分の考えが纏まっていない現状で何をどう書けばいいのか思い付かない。

アナベル嬢の事もローズ様のことも心配だ。

直接話す事ができれば良いのだが…


食事を摂り終えてから体力が落ちないようにまた少し身体を動かした。

部屋は静かで外の音を拾うことすら出来ず、僕の発する呼吸や衣擦れしか聞こえない。

この部屋に1人でいると本当に世界から隔離されたような気分になる。

もしこの共有の力を使えなかったら、心が折れてしまっていたかもしれない。

何もかもこの半年、僕に色々と教えてくれたアナベル嬢とローズ様のおかげだ。


これまで2人から与えられた優しさや労りに裏心あるようには思えない。

王太子殿下の言った、ローズ様が僕を引き込んだと言う言葉に少し引っかかるものを感じていたが、そんな事どうでもいいような気がしてきた。

受け取ってきたものが全てで真実なのだから。


僕はソファに深く腰掛け軽く頭を振ってから、今度はてんとう虫と意識を共有した。

昨日の部屋には誰もいないようでしんと静まっている。

てんとう虫が動こうとしたところでメイドが何人か入ってきた。


「あら、てんとう虫がいるわ。」


「本当ね。外に放してあげましょう。」


てんとう虫は窓からポンと放り投げられてしまった。まあいい、どうせ部屋から出るつもりだったし。

てんとう虫が羽を広げて宙に飛び立つと数人の女性がお茶会をしているのが目に留まる。


王家は継承権争いでごたついているというのに優雅なものだな。

そのまま通り過ぎようとしたところ、ふとテーブルの上の皿のひとつに感じるものがあり引き寄せられる。

気が付かれないようにそっと近付くと、やはり皿の上の小さな焼き菓子からローズ様の祝福の気配が漂っていた。


ローズ様がどういった祝福をのせているのかまではわからないが、王家はローズ様の力を知っているし警戒だってしているはずだ。

こんな王宮の奥にまでモノも人も潜り込ませる事ができるできる力をローズ様が持っていることに改めて衝撃を受けた。

ただ隠居しているご婦人と言うわけではないのだ。


何となく感心していると、ふと僕の名前が聞こえた。

アルフレッド、と確かに誰かが言ったのだ。

ご婦人が何かの噂話でもしているのかと耳を澄ませると、テーブルからもっと離れたところでやはり僕の名前が聞こえる。

アルフレッド、アルフレッドと何度も何度も繰り返されて、まるで僕を呼んでいるように聞こえる。


その声に誘われるように飛んで行くと、周りを柵で囲われた小さな庭にたどり着いた。

王宮の奥の部屋から直接出入りできるようになっているのか、扉がその庭に面して設置されており、その扉からは庭の中ほどまで通路が作られている。

その庭はまさにローズ邸のあの部屋と同じように、様々な祝福の気配が色濃く残って辺りに漂っていた。

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