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僕は便箋にペンを走らせ一羽の鳥を書き上げた。


意識を飲まれないように注意して願いを祝福にして絵に乗せる。1人でするのは初めてだったので簡単な鳥の絵にもかかわらず時間がかかり、描き終わった後は汗でシャツが背中に張り付いていた。


ペンを置くやいなや、紙の中の鳥はブルリと身を震わせ浮かび上がり、便箋から頭を覗かせた。

鳥の身体全体が紙の中から出てきたのを確認して、その鳥をそっと撫でる。

柔らかい羽毛に硬い嘴、実在する白い鳥のようだ。

おそらく成功だ、そう思い鳥の足に手紙をくくりつけ窓から放つと、鳥はまっすぐ空へ飛び立って行った。

ものすごい疲労感を感じ、ソファに横になって右腕で目を覆うように肘を曲げると瞼の裏に王都の街並みが見えた。


あの鳥にのせた祝福は『共有』。

あれは僕の目となり耳となり手足となり動いてくれるはずだ。

まずは手紙をデュランかマリーに届ける。

ローズ邸は見張がいる可能性が高いのでもう少し時間をかけたほうがいいだろう。

この鳥が捕まって手紙が見られると詰む。


それにしてもあんな鳥一羽描き出すだけでこの疲労感だ。国を潰すために兵士を次々と創り出したなんてやっぱり眉唾物だったに違いない。

おそらく『使役』を祝福に乗せれば作れなくはないが、使役するには自分の意思をそれぞれに都度伝えなくてはならない。

何百体もの土塊で作った兵士に意思を伝達するなんて出来るものか。


そんな事を考えているうちに視界にボーデン家の屋敷が見えてきた。

くるくると円を描きながら庭の木に止まると、やはり邸は騒然とした様子でメイドや執事が慌ただしく行ったり来たりしている。

馬車が止まっているから、領地に向かっていた両親も呼び戻されたのだろう。


注意深く屋敷の中を覗き込んでいくと、デュランが自室でウロウロと歩き回っているのを見つけた。

おそらくこの状況に動くに動けないイラついているのだろう。

僕の鳥がデュランの部屋の窓をつつくと、デュランがハッとしたように顔を上げた。

何度もつつきながら足についた手紙を見せるように持ち上げると、デュランは慌てて窓を開けて鳥を中に招き入れた。


鳥がデュランに向けて手紙の括られた足を差し出すとすぐにデュランはその手紙を取って読み、部屋を駆け出した。鳥はデュランの肩に止まっている。

デュランはマリーの部屋に行き、マリーにもその手紙を見せた後、今度は2人で両親のいる部屋へと向かった。


両親は居間にいたようで、母上が酷く青ざめた顔でソファに座っていて、父上がその隣に寄り添い肩に手を置いて母上を慰めているように見える。


僕が目を閉じたまま手を動かし両手で耳を塞ぐと、今度は両親とデュラン、マリーのやりとりが聞こえてきた。


「アルから手紙が届きました。」


「手紙が?どうやって?」


「この鳥が運んできたのです。おそらく祝福の力を使っているのでしょう。」


「祝福…女神の祝福を?あれは禁じていたではないか。」


「それに関してはお伝えしなくてはならない事が色々ありまして…」


「まずはその手紙を。『王家には力はバレていない。しかしアナベル嬢とローズ様に危険が。両親に全て話して協力を仰いで欲しい。僕は王宮の塔に幽閉されてしばらく出られる様子はない。今のところ命の危険は感じない。』一体全体どう言うことなんだ。何故こんなことに…っ。」


「幽閉だなんて…!あなた、アルはどうしてこんなことに?…っ。ううっ…」


「デュラン、マリー私達の知らない事を全て話せ。」


「かしこまりました。」



ボーデン家との連絡は取れた。

僕は耳から手を離して目を開けると、机の上にある便箋に目を向けた。

鳥が描かれ、飛び出して行ったその便箋は何も描かれていないまっさらな状態になっていたが、うっすらと白い光を発しているように見える。


僕はその便箋を引き出しにしまい、次の便箋に今度は小さなてんとう虫の絵を描いた。

今回ものせる祝福は『共有』。

少し王宮内の情報を得たい。


しかしさっきの鳥で気力も体力も奪われたようになっていて、頭はガンガン痛むし心臓も壊れそうなほど激しく鼓動を刻んでいる。

すぐに意識を持っていかれそうになるのを堪えながらてんとう虫を描き上げると、鼻から血が滴り落ちてきた。

その血はちょうどてんとう虫の上に落ち、白黒のてんとう虫に赤い色が付いたと思った途端、てんとう虫は飛び上がり勢いよく窓の外へと出て行った。


てんとう虫は色がついたからなのか、それとも2度目だからなのか、共有能力が鳥よりも強いようだ。

強く意識しなくても同じものが見えるし、聞こえてくる。


しかし王宮の中に入ったのまではよかったが、僕は内部の構造を全く知らない。

どこに王がいるのか、広い王宮の何十もある部屋を一つ一つ探すしかないのは途方もない作業だ。

そうは言ってもやらねばならないのだ。

僕は自分の両頬を強く叩き気合いを入れるとまた意識を集中していった。


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