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身支度を整えて応接室まで行くと、確かに使者と思われる上品な装いの男が1人座っており、その後ろに騎士の制服を纏った体格のいい男が3人立っていた。

こちらが動揺をすれば痛くもない腹を探られることになる。

僕は落ち着くように自分自身に言い聞かせながら、敢えて驚いた表情を作った。


「お待たせいたしました。王宮からの使者殿がいらしたと伺いましたが、いったいどういった用件でしょうか。」


「朝早くに押しかけてしまい申し訳ございません。火急の用件で参りました。こちらで詳細を話すわけには参りませんので、ご同行願えますでしょうか。」


使者は立ち上がり、丁寧ながらも有無を言わせぬ様子で僕に詰め寄ってくる。

気が付かれないように小さく息を吐いた後、僕は使者に向かって軽く礼をとった。


「私ごときに何のご用件か想像もつきませんが…ご一緒いたしますのは問題ございません。」


「では。」


使者は一刻も惜しい様子で騎士たちと共に僕を部屋の外へと追いやり馬車へ乗り込ませた。

両脇と目の前に騎士が座り、無礼は働かれていないものの、まるで護送されているかのようだ。

両親が見たらショックで倒れてしまうかもしれない。

2人が朝早く領地に旅立っていていなかった事が幸いだったと思うと同時にどうしようもない心細さも感じる。

もはや僕一人の問題ではないし、僕の力ではどうしようもないかもしれない。

やはりもっと早くに話しておけばよかったのか。

今更ながら自分の至らなさを感じて唇を噛み締めた。


小1時間ほど馬車を走らせると王宮の門へ到着したようだ。

御者と使者が門番と二言三言言葉を交わすと門が開き、馬車はさらに進んで行く。

来週舞踏会で来る予定だった王宮にこんな形で来ることになるとは、と歪んだ笑いが口に浮かぶ。

たった1日で随分と状況が変わったものだ。


馬車はどんどん進み、本殿を通り過ぎてさらに奥の塔にたどり着いた。

王宮の塔は問題のある高位貴族を幽閉するための場所だと小耳に挟んだ事がある。

しかし近年この塔が使われたと言う話は聞いた事がない。


僕は犯罪者として幽閉されるのだろうか。

たまたま祝福を身に宿したというだけで。

自分で望んでそうなったわけではないのに理不尽にも程がある。

しかしローズ様は処分される可能性についてもお話しされていた。

もし御使の可能性があるとバレたならば、僕は処刑されてしまうのかもしれない。

幽閉ならば処刑よりはマシなのだろうか。

思考はぐるぐる巡りながら悪い方向へと向かっていき、絶望感に押し潰されそうになる。


塔の前で馬車は止まり、僕は両脇を騎士に抱えられながら馬車から降ろされた。

ますます犯罪者の連行のようだ。

家を出てから、使者も騎士も、誰も何も話さない。

少しでもいいから情報が欲しいと思っていると、右側の騎士が僕の耳元で微かにささやいた。


「しゃべるな。後で来る。」


その騎士とは全く面識もないし、その一言からは、何もわからない。ただ、口調からは僕を労わるような響きが感じられた。

僕にだけ聞こえるように話した事から、敵ではないような気がする。

僕は表情を変えず、その騎士に抱えられた腕を軽く押し付け了承の意を伝えた。


塔の中に連れて行かれた僕はその天辺にある格子付きの部屋に入れられた。

部屋自体は絨毯が敷かれ、ソファやベッドや机があり、生活に不便は無さそうではあるが、入り口で閉ざされた格子には太い鎖が幾重にも巻かれ、大きな錠がかけられている。


ここにきてはじめて格子の外にいる使者が慇懃に口を開いた。


「この度はこのような場所に留まっていただくことになりまして誠に遺憾でございます。後程やんごとなきお方からお言葉を賜ることになりますれば、しばしこちらにてお休みくださいませ。」


「…。」


僕が返事をするのも待たずに使者と騎士たちは踵を返し塔を降りて行った。

あの右側の騎士から何かしら動きがあるだろうかと注意深くみていたものの、その騎士も振り返りもせず使者の後ろを着いていく。

やはり味方だと思ったのは勘違いだったのだろうか。


1人残された僕は全身の力が抜けて崩れ落ちるようにソファに倒れ込んだ。

ソファに体を預け、両手で顔を覆い何度も深呼吸を繰り返しながら落ち着け、落ち着け、と自分に言い聞かせる。

何もわからない状況が余計に不安を掻き立てるが、両親、マリー、デュラン、アナベル嬢、ローズ様と大切な人たちの顔を思い浮かべているうちに少しずつではあるが勇気が湧いてきた。

僕は1人じゃない、愛する人達も愛してくれる人たちもいるのだから、投げやりになど決してなってはいけない。

顔を覆う掌をそのまま頭に滑らせて髪をぐしゃぐしゃと掻き乱してから僕は意を決して体を起こした。



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