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ガゼボで休憩をしながら僕とアナベル嬢は軽く衣装合わせを行った。

我が家も公爵家だし、デザイナーを呼んでドレスを作らせてもらうのが筋だと思うのだが、ヒューランド殿の目を誤魔化すために贈り物はしないで欲しいと言われているし、実際時間も足りない。

お互い手持ちの服からデザインと色を相談して決めることになっている。


「女性はプロムの花なのでアナベル嬢がお召しになる衣装に僕が合わせます。どのような物を予定されていらっしゃいますか?」


「そうですね…こちらに伺う前にシェリーとも相談していたのですけれど、卒業生ですしあまり派手なものもどうかと思いますので、グレーか薄いブルーのシンプルな物にしようかと。

アクセサリーはブルーでしたらアルフレッド様の瞳の色に合わせたエメラルドを、グレーでしたら髪の色に合わせたシトリンをつけようかと思うのですが、どうでしょうか?」


「アナベル嬢はお美しいですから何を着てもお似合いになられるかと…。」


「アルフレッド様はお好きな色はございまして?」


「そうですね…僕は、黒が好きでしょうか。」


「それでしたら、私はブルーのドレスにいたしますから、アルフレッド様は黒のタキシードになさってください。黒とグレーでは流石に暗くなってしまいますもの。」


「アナベル嬢がグレーのドレスを選ばれるのでしたら白いタキシードを着ますよ。」


「一生に一度の卒業プロムですもの。お好きな色に包まれている方がきっと楽しく過ごせますわ。黒になさってくださいな。」


好きな色と言ってもそれほどこだわりがあるわけではないのだが、アナベル嬢に押し切られる形で僕は黒のタキシード、アナベル嬢は薄いブルーのドレスを着ることになった。

形はシンプルな物だと言っていたので、それほどお互いの格好がちぐはぐになることはないだろう。


「アナベル嬢がエメラルドを身につけてくださるなら僕は黒真珠のアクセサリーを用意しましょう。」


「まあ、ありがとうございます。お互いの瞳の色のアクセサリーを身につけるだなんて、恋人同士のようですわね。」


「…っ!」


ふふふ、と笑う彼女の言葉に、顔に血が集まるのを感じる。

今までマリーの色を身につけようなんて思ったことはなかったし、マリーの纏う色にも気をかけたことなどなかった。

そもそも恋人という物に具体的なイメージを持っていなかったのだと気付かされた。

来年のプロポーズの参考にしようと心に誓う。


「…衣装は大丈夫そうですね。それではダンスの練習をさせていただいても?」


僕は赤くなっているかもしれない顔を見られないように少し俯いて紅茶を飲み干した。


「もちろんですわ!そのために来たんですもの。お兄様以外の方と踊るのは初めてなので失礼をしたらごめんなさい。」


アナベル嬢はエスコートする間もなく立ち上がり頬にかかった髪を軽く払った。

まだ夏の気配を残す太陽の光に銀色の髪がきらきらと照らされて、僕は一瞬目を奪われた。


「美しいな…」


思わず呟いた声は小さい物だったはずなのに、デュランは目を見開いてこちらを見た後ニンマリと笑った。


そういうのではない。

僕だって美しい物は美しいと感じる感性は持っている。

花や宝石を愛でるのと同じで他意があるわけではない。

しかしアナベル嬢の目の前でそんな事を言うわけにもいかず、僕は不貞腐れた顔でデュランを睨むしかなかった。


その後、僕たちはダンスルームへと向かい、ダンスの練習を始めた。

シェリル嬢がピアノで曲を奏でてくれるのに合わせて、僕とアナベル嬢はステップを踏む。

僕はダンスの授業では動きが硬いと注意されがちだが、楽しそうに軽やかに踊るアナベル嬢に引っ張られて、いつもよりも柔らかく踊れているような気がする。

本来ならば僕がリードしなくてはならないところであるのに、ついついアナベル嬢のペースに乗せられてしまうのだが、それが逆に心地よい。


「アルフレッド様はダンスもお上手なのですね。」


「そんなことは…従姉妹のエリザベスくらいとしか踊ったことがないので、気になることがあれば仰ってください。」


「ふふふ。私もお兄様としか踊ったことがないんですよ。お兄様ったらいつも私をぶんぶん振り回すものですから、こんなふうに楽しくて踊りやすいのは初めてですわ。」


「そう言っていただけると気が楽になります。」


「まあ、そんなに重く考えていらっしゃったの?ダンスは楽むのが1番大事だと私は先生に教わりましてよ?」


2〜3曲続けて踊ったところで休憩になったが、アナベル嬢は疲れた様子もない。

貴族令嬢としてそのような姿を見せないように教育されているのかも知らないが、笑顔を絶やさず姿勢も凛と伸びたままだ。


「アルフレッド様、アナ様はピアノがとてもお上手なのですよ。今日は私が伴奏をさせていただきましたけど、アナ様のピアノを聴くと踊る気がなくても勝手に身体が動いてしまうのです。」


「まあ、シェリル。大袈裟よ。アルフレッド様、本気になさらないでくださいね。」


「いや、シェリル嬢の伴奏も相当でしたから、そのシェリル嬢が言うのであれば素晴らしい腕前なのでしょう。もしアナベル嬢がお嫌でなければお聞かせ頂けると嬉しいのですが。」


「もう!シェリーったら!シェリーが余計なこと言うから!」


「アナベル嬢、アナベル嬢がお嫌でしたら無理はしなくとも…」


「えー、俺聴いてみたい!」


「デュラン!」


「少し恥ずかしいですけれど、今日は青い蝶も見られて楽しかったですし、お礼と言ってはなんですが一曲だけ披露させていただきますわね。」


アナベル嬢はそう言ってピアノの前に座った。



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