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俺は猫とメンヘラがキライだ。  作者: 反射的な司馬懿
緩やかな修羅場

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友隆の困難39

「いつぐらいから?」



「えーと、俺が気づいたのは緑町さんが泣いてた頃……気にしてられませんでしたよ」



「それっていつだよ」



「緑町、須藤と三枝も来てるけど、大丈夫そうか?」



「え!!大丈夫ですよ?!」



 緑ちゃんは状況が飲み込めたのか、慌てて立ち上がり、ドアを開けた。



「わっ!!」



「あ、すいません、ごめんね、三枝君も」



 恩田さんはやれやれと言った感じでスマホを開き身支度を整え始めた。



「ーー恩田さん、帰ります?」



「俺はもう用がないからね、須藤のお説教とか三枝の担当振りは椚さんの仕事だし」



 そうだ、緑ちゃんの補佐に三枝を付けてたが、外して完全な二人チームに暫くはしたい。



「俺、お説教ですか?」



 お説教というワードに反応してビクビクしながら戸の前でこちらを見る須藤。



「いや、大丈夫かな?どう?」



「ん、まぁ……お咎めなしで戻れる道はないからな」



「え!!!!」



「それ須藤先輩の話じゃないです、ワザと言わないでくださいよ椚先輩……」



「えぇ〜なになに……緑町ちゃんの話じゃなかったんですかぁ〜」



「また長くなりそうだから、じゃ、椚さん遅くなるかも知れませんけど今日中には連絡しますね」


 

「はい、お手数おかけしますが……お力添えください」



 俺は席を立ち恩田さんに礼をした。


 緑ちゃんも習って後ろからペコペコと忙しなく礼をしている。


 恩田さんを見送っている間に友隆が入れ違いの須藤と三枝を席に着かせてくれて、資料を振って見せても良いのかとジェスチャーを送ってきた。


 俺は一瞬悩んだが、今後の展開を考えるとそれも必要だろうと頷く。


 三枝が資料を持ち、須藤先輩が覗き込む形で内容を見始める。


 緑ちゃんは恩田さんの姿がなくなるのを確認すると、すすっと椅子を二人に近づけて前屈みで質問に備えた。


 二人は目を白黒させながら、ため息をついてみたり、驚愕といった表情を浮かべたり……三枝はやたらと眼鏡をくいくいと……



 友隆はスマホでシャノピの画像を見始めている。


 ポカっと頭を叩いて、俺は睨む。


 すると小声でポソポソと。



「いや、緑町さん猫好きみたいなんで、可愛い写真でも送って元気づけようかと……」



「お前は小学生か?」



「帰った後どうせ泣くでしょ」



「……お前は彼氏か?」



「殺気が漏れてる」



「達人同士、やるか?」



「達人じゃなくても、殺気ぐらい感じますって」



 俺らは俺らで、ウィスパーボイスを駆使しながらくだらないやり取りをしていた。


 勿論、三人の様子に集中してるからこそ、中身のない話をするわけで。



「誠さんが説明してあげればよかったのに……」



「ん、緑ちゃんが自分で説明しようと思ったんだ。それは汲まないとな」



「自分で声を上げるの一歩目って事ね」



「そう言う事だな、この時間で覚悟を決めてるよ、緑ちゃんは」



「ついぞウギャーって泣いてた人とは別人……」



「富海君やめて!!」



 緑ちゃんが即座に振り向き睨みを利かす。


 そら全く聞こえてない訳じゃないわな。こいつも大概デリカシーがないのに、なーんか俺とは違うよね。



「よく言い聞かせます」



「お前が富海だろ!」




「こんな重大な事件の話してるってのに……よくそんなふざけて……」



 ワナワナと立ち上がる三枝から抗議が飛んで来る。


 いや、俺ら真剣に話してただろ。だから入ってこれなかったんじゃねぇのか……。


 色々想う事があるのか眼鏡を上げて、三枝は目頭を押さえている。


 須藤はキョロキョロと、助けを求める相手を探しているがここは課内じゃない。


 俺らしかいないの、なんならお前がなだめろよ。



「……三枝君、違うよ。二人はワザとふざけてるから、富海君に言ったのはちょっと秘密にしておきたい事だったからさ」



「……はい」



「座って?ごめんね、時間取らせて……」



 同時に須藤先輩にも頭を下げる。


 対比で見ると緑ちゃんってホントお姉さんキャラなんだよな。三枝は弟キャラだったのか。


 俺が青ざめつつ俯瞰していると。



「三枝って結構男前なんだな」



  友隆がまた、訳のわからん事を……



「え、なに……」



 眼鏡を上げたまま、シパシパと瞬きをする三枝。



「いや、お前それ随分古い眼鏡だろ。眼鏡かけると目が小さく見えてさ、元の目は結構カッコいいのな」



「わっホントだ!」



 緑ちゃん、乗っかんないで……



「ぇ、いや、そんな……」



 三枝は上げたまま忘れてた眼鏡を恥ずかしそうに掛け直した。



「わっ!!元に戻った!!」



「やめて、緑町ちゃん……」



 須藤がなにやら笑いを堪えている。


 そしてまだまだ友隆の天然が続く。



「ほら、三枝しょっちゅう眼鏡くいくいやってるじゃん。なんかもう歪んでんじゃないの?変えたほうがいいよ」



「うん、そうだね……次の休みの日に買いに行くよ」



「おう、そうした方がいいよ」



「……終わったか?」



「あ、ハイ」



「……ったく、須藤、三枝。内容は理解できたか?」



「えーと、因みにこれは誰?」



「そんなん分かってるでしょ……」



「何だよ三枝、生意気だな。確認は大事だって教わらなかったか?」



 ムッとした顔で、須藤が三枝を睨んだ。分からんでもないが、俺は別の引っ掛かりを持つ。



「須藤、お前なんか他に心当たりでもあるのか?」



「え、いや……池君だけじゃないよねっていう感じから……これが池なのかなっていう確認で」



「……」



「ん、まぁ三枝も言ってたけどな。多かれ少なかれってやつで……その部分はこれから変えていく」



「本当に、申し訳ありません……!!」



 やっぱ、自分が迷惑かけたって思っちゃうよね、緑ちゃんからしたらさ。



「いや、助け合いの範疇がいつの間にか一方通行の押し付けになるかどうかの境界がうやむやだ。特にうちの課はフォローの体制も人が増えて来て混戦してる。そういうのを見直さなかった責任もな……」



「……緑町さんすいません」



 三枝が先陣をきって緑ちゃんに謝罪した。


 続いて須藤が頭を下げてから。



「緑町ちゃんごめんね、こんなに大変な事になってるなんて思わなくて……他には大丈夫?」



「いや、池……その先輩以外にここまで丸投げされらような事はありませんでしたから」



「そっか……緑町ちゃんが友隆みたいな異常な奴じゃくなて良かったですね」



 途中から、俺へと須藤が話を振ってくる。



「友隆みたいなのが抱え込んで、仕上げて来た挙句に爆発霧散したら……うちの課はたちまち塵芥だったな」



「なんの話ですか」



「……」



「…………」



「……ふっ」


「ふふ、あはは……さっきら、もう、私の事笑わそうとしてますよね?」



「いや……ごめんね、ホント、そういうところだよね、ごめん」



 こう、泣き笑いみたいになっている緑ちゃんを見て俺は胸がキュッと苦しくなった。


 

「いえ、たまに付いていけないんですけど……私も爆発霧散しなくて良かったです!」



「なんか、シャレになりません」



 三枝が複雑な顔で緑ちゃんを見ている。お前も付いてこれないタイプだよな。


 うん、でもお前は冗談が通じない仲間として緑ちゃんはある種、救われてるかもな。


 今日は暴走せずいてくれてるし、ちょっと見直さないと。


 俺も仕事としてって言いつつ。


 好きな女の子には何でもしてあげたいなって感情が先行してたかも。


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