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俺は猫とメンヘラがキライだ。  作者: 反射的な司馬懿
緩やかな修羅場

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友隆の困難38

「すいません、話しても良いですか?」



 男ども三人はコクリと頷き、緑ちゃんを見た。



「あっいや、そんな注目されても……」



「緑町、いいから」



「あ、はい。えと……私、どこかで自分の仕事が遅れがちな言い訳を求めていたのかもしれません、だから…………池國先輩のした事を許せないとか、そんな風には思えません」



「緑町さんそれは」



「富海、黙って」



 恩田さんが言葉を挟もうとした友隆を制止する。そして緑ちゃんは友隆の方を見て頷く。


 俺にも分かったし、恩田さんにも伝わっただろう……『分かってる』だから自分の話を聞いて欲しいって頷きだ。



「でも、それが課にとっても、会社にとっても、良くない事だと理解しています。恩田さんが仰るように良い事、悪い事の区別として池國先輩はやっちゃいけない事をしました……」



 そこでふぅ、と息をつき忘れ去られていたココアの缶を口元に傾ける…………180°って感じで。



「これ飲みな」



 中身がほとんど入っていない事を察して、恩田さんが口をつけなかったコーヒーを差し出した。



「やや、大丈夫です、ちょっと喉が……」



「あんだけ泣いたらそりゃ喉も渇くでしょ」



「我慢できますから!」



「俺は椚さんと飲むからいいよ」



「ゲッ……」



 恩田さんは、俺の悲鳴をサラリと受け流して自分の水筒の蓋の部分を俺に差し出す。



「うわ、何すかその可愛いの」



 ピンクのウサギ……子供向けの小さな水筒だ。この人変なオジサンだったのか?



「娘のお下がりかな、エスプレッソを入れるのに丁度いいんだよ」



「へー」



「な、なにも椚先輩が口着けたの貰わなくてもっ、これ、じゃあ半分頂きます! 」



「へー……」



「うん、じゃぁそうしよっか」



 円形に並んだ椅子の間、恩田さんと緑ちゃんはコーヒーを行き来させる。


 そして俺は友隆の脛を、軽く蹴った。


 何笑ってやがる……コノヤロー!



 すかさずゴクリと緑ちゃんはコーヒーを飲み、また息が詰まったのか先程よりも大きく呼吸をする。



「はい!大丈夫です!それで、えっと……えと、ちゃんと……ちゃんとします。当たり前の事が出来てなくて……私が現状どこまで仕事が出来るのか、きちんと評価して頂けるよう行動します!」



「こいつ新卒のガキみたいなこと言ってますよ、椚さん」



「わー!えっと、具体的に……具体的にはですね、ちゃんと声を上げます!そうならないように、ちゃんと断らなきゃいけない仕事は、断ります!」



「ですってよ、椚先輩」



「お前ら何で突然、意地悪しだすの?」



 緑ちゃんの顔が真っ赤だ。


 でも先程と違うのは涙に結びついていないこと。


 困り果てた顔をしながらも、緑ちゃんは俺らの言った事がちゃんと伝わっているという事を教えてくれたんだ。



「すいません……椚先輩……」



「よろしい、業務配分の見直しは一度する。それプラス恩田さんの補佐としてフォローの仕事を一任します」



「よろしくお願いします!!恩田さん!!」



「緑町、世話かけさせんなよ。バシバシ振るけど自分の仕事を滞らせないようにな」



 恩田さん自身もそう来ると思ってくれてたんだろう。異論はないようだ。


 そして緑ちゃんはまた…….だが、顔を素早く拭って恩田さんに手を差し出した。


 恩田さんは差し出された緑ちゃんの両手をそっと包み込んだ。


 俺はこの二人の関係性は全く知り得なかった。


 一匹狼、他人に触れず仕事をして来た人が歩み寄るんだ。


 言葉では言い表せないものがあるんだろう。


 今回助けてくれた理由もそこにある……。


 俺自身も緑ちゃんの機微には注意を払ってたつもりなんだけどな……恩田さんは情が湧いたなんて言ってたけれど。


 いや、本当に情かもしれない。


 きっと恩田さんは優しすぎるんだ。


 それにいちいちかまけてたら仕事にならない。


 家族も守らなきゃならない。


 だから、一本の線を引いた。その線を超えない限り、入らない限り自分は何もしないと。


 これもひとつの対応として間違っているなんて言えないから。

 


 そんな中友隆は首を揺らしてみたり、肩を鳴らしてみたり……こいつはどうした?


 ーー時たま緑ちゃんに視線をやってはチラチラと。



「あ」



「どうしました?」



「いや……」



「須藤先輩も、三枝さんも遅いなって」



 うっすらと扉の外に影が見えた。

 

 成程。二人ともこの空間に入れずに居たって訳ね。

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