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俺は猫とメンヘラがキライだ。  作者: 反射的な司馬懿
緩やかな修羅場

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友隆の困難37

「で、緑ちゃん。後出しで申し訳ないんだけど、池國には何らかの処罰が言い渡される。これは変えられない」



「……はい」



「インセンティブの返還とかは、もしかしたら難しいかもしれないけれど、極力……」



「いや、それは……別に」



「なんでよ、難しくないでしょ」



 恩田さんがその内容に納得がいかなかったようだ。すかさず声を上げる。



「それは緑ちゃんが申し立てるなら」



「それは…………えー?」



 俺と緑ちゃんを交互に見てどうやら緑ちゃん自身にそのつもりがない事を恩田さんは察したらしい。



「恩田さん、俺らだったら怒り狂って言えるだろうけどほら……」



「悲しいのは、あんまりエネルギーにならないっすよね」



 ここで友隆が割って入る。



「なんだよ、そりゃ」



「そもそも緑町さんに怒りがあったら、こんなんなってません」



「……」



「……」



「お前、それはちょっと……」



「何ですか?怒りのエネルギーは結構イケてますよ」



「富海は何の話をしてるの?」



「猫の話だな」



「違いますけど……緑町さん兎に角ですね、池國先輩の処罰を負い目に感じる必要ないんですからね」



「なんだよ、それは俺が言おうとしたのに」



 恩田さんは冗談めきつつ緑ちゃんを気遣っている様子だ。



「ともあれさ、請求については無理強いしないから。逆恨みが恐いとか感じる部分もあるだろうし、告発者も恩田さんで会社には報告するからね」



「それは……恩田さん、申し訳がないので……」



「緑町、俺の責任は俺が負う。俺の責任に口を出さないでくれ」



「ちょっと、当然の事なのにカッコよく言いますね?」



「それは椚さん程じゃないから」



「……緑町さんはちゃんと納得出来た?」



「えっと……納得……納得っていうのは……」



「これまで緑ちゃんがよく頑張ったって事。ちゃんと、現状の棚卸し……今度しようね」



「それは、えーと……」



「緑町、お前が思ってるほど仕事が出来ないとか、そうじゃないよ。今まで、よくやり遂げてたよ」



「……そんな、事……えっと……」



「緑町さんの家で自分の仕事をやればいいって考え、マジで異常ですからね、お二人はその点を今仰ってるんですよね?」

 


 混戦する話の中で友隆がオブラートに包まずにズバッと言うものだから俺も恩田さんも呆気に取られてしまう。


 こうも泣き姿を見せられたらさ、そんな風には言えないよ。


 立場としては指摘しないといけない訳だけど、追い詰める可能性も天秤にかけなきゃならない。


 緑ちゃんは涙を流す、止める、堪えても出ちゃう。


 そんな様子だから褒めつつ、遠回りに俺と恩田さんは指摘はしてるつもりでしたよ?



 「富海君……」



 緑ちゃんはまた、涙を溢しつつ友隆に……



「ありがとう、言いにくかったでしょう?それを、それを、それを……」



「落ち着いて、大丈夫。それで、緑町さんの価値はきっと変わらないんです」



「えと、え……と……」



「仕事が出来ようが、そうでなかろうが、緑町さん自身の価値は変わりませんよ?」



「……それは……」



「緑町さんは、緑町さんですからね。繕っても繕わなくても、一緒ですから。無理する事に意味はありません……えーと、」



「ごめん、ごめんねぇ……富海君……」



 なんだよ、指摘する風で超優しいじゃねえか。まぁ、お前にとって緑ちゃんは先輩だ。


 仕事の出来栄え云々なんて言えない代わりに人としての話を選んだんだろう。こう言うところが、モテ要素なのか?友隆。


 これじゃ完全に手籠にされちゃうよ。


 あーやだやだ。



「まぁ、緑町。自分の仕事の範疇で、しっかり仕事をしよう……家で仕事をやってくるってのは、評価対象外だからな」



 そして恩田さんがしっかりと仕事としての位置付けを説明をする。



「はい……」



「酷い先輩が居た事は確かだ。でもその対応を緑町自身も間違えないで欲しい」



 緑ちゃんはコクコクと頷き、どうにか泣き顔を立て直そうとしているようだった。



「仕事の正当性がわからない年齢でも社歴でもないだろ?少しでも異変を感じたらそれは多分間違いじゃないんだよ」



 俺は言葉を挟む事なく、恩田さんの言葉を聞いていた。


 そうやって、もし異変を感じたなら。


 何かあっても大丈夫、何でも相談してくれ……俺だったら、そんなような言葉をかけていたかもしれない。


 

「ちゃんと、まずは自分で対処しろ。それで揉めるんなら椚さん、俺でも……富海でもいい。まず揉めたって事実を作ってくれ」



「恩田さん揉めるまでいかんでも、ねぇ……不安があったら取り敢えず相談……」



「揉めると言うのは例え話ですから.……まず緑町は自分で声を上げられるようにならないと、これからも困りますよ」



 友隆もうんうん、と頷いてやがる。



「……その通りかも知れません、いえ……分かってるつもりでした、なので自分が悪いって」



「…………」



「ぶっちゃけ上司が椚さんなら、何でも助けてくれると思うよ。でも頼れない、頼りたくないが先行して、とんでもないとこまで来ちゃってるからね」



「ハイ……」



 そうだな、全て自分で片付けろって事じゃない。


 必要な時に、誰かを『頼る事』が選択出来る。緑ちゃんに足りてなかった部分。


 きっと恩田さんは、頼れないっていう弱さも指摘しているんだろう。


 

「ま、俺も先輩としてやる事はやるよ。ぶっちゃけ面倒事の火種を大きくしてくれるなよって事で」



「恩田さんがその時にちょっと突っ込めば良かったのに」



 またまた、優等生友隆、流石の発言だ。


 でもそれは誰にでも出来る、やらなきゃいけないって事じゃないからな。



「いや、がっつり突っ込まないと、どうにもならんかったでしょ……そこまで恩田さんがやる義理はないよ」



 俺のフォローに恩田さんと目が合ったが、苦笑いだ。



「過ぎた事だし、その時に有耶無耶にされないよう確認を取るってのはかなり難しかったと思う。だから恩田さんが声を上げたタイミングは間違ってなかったよ」



「ま、それは結果論ですけどね……」



 恩田さんは自嘲を含みながらフッと笑いつつ手元を揉んで遊んでいる。


 俺らが当人を置いて勝手な話を繰り広げてる間、緑ちゃんは平常心を取り戻しつつあった。


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