友隆の困難33
「お疲れさまです!!」
俺はいの一番声を上げた。
完全コンプ、定時きっかり。見直しの逆算時間ぴったり。俺はうっかり、シャノのご飯……と即座に帰ろうとしてしまったのは内緒だ。
ま、一番乗りの役目は必要でしょう、と緑町一派の周囲を見渡すと皆渋い顔をしている。
いやいや俺はいつも、定時に帰宅する男でしょ?
ここで手伝いましょうか?なんて違和感だよな。
「……」
「お疲れさまでした!お先に失礼あす!」
勢いの良い声に振り向くと、緑町さんだ。
ちょっと噛んでた気もする、そしてなんと言うヤケクソ感……。
多分、結構前から仕事終わってたんだよね、緑町さんは。
課長のデスクで配分見ちゃったし。これは椚先輩が大分ゆとりを持たせていたんだと思うけれど。
「富海君!良かったらさ!コウヒーでも!どう?」
嗚呼、なんて言う下手くそ。恩田さんの演技が帳消しになるぞこりゃ。
「こらこら、富海が別れたばっかだからって、がっつくなよ」
恩田さん、フォローまで……
俺、なんか感動してます。
「ぬぁ、なななななななな、?え?!は?止めてください!そういう言い方!!富海君違うよ?!」
あー、頭痛い。ほんっっと、緑町さんてば……そんな誤解誰もしないって。
皆苦笑いを浮かべてる。
結果オーライ、これからの集会なんて想像も出来ないだろうな。
ふと、椚先輩に目をやると何やら紙を握りつぶしている。
「……」
んー、あんま緑町さんからかいすぎると怒るよね。
でも今回のは仕方ないじゃん。
俺はやれやれと、一先ず緑町さんを置いて課を出た。
そこは待って『コウヒー』を飲みに行くふりした方が良かったか?
いやいや、あくまで自然体だろ。
いつもの通りなら、緑町さんが焦って付いてくる訳で。
「と、富海君、まってぇ〜〜」
はい、これでちゃんといつも通りですよ。
「すいません、緑町さん」
「いや!こちらが!!」
「よく分かんないけど……」
俺はつい笑ってしまう。
ホント、この人一生懸命だよね。
「忘れ物してませんか?」
「え?!あー!ストールが!!あ、あ、」
「緑町さん落ち着いて」
「あ、そうだね、明日でいいかな!」
俺はこの『明日』という単語に何故か安堵した。そう、明日があるんだよ。
「場所分かります?」
「えーとね、第四はちょっと離れてるけど大丈夫!昔……富海君が入る前だね、うちの課が専用で使ってた所だから」
「へー……離れてますね」
「昔は今みたいにパワーがなかったんだよ、皆んなで大移動だったんだから」
「……そうですか」
「うん、前の課長が辞めて、一先ず椚先輩が代行やってた時代かな?それも異例の抜擢で!」
「なんか話長くなります?」
「あー、えーと、別に椚先輩の事話したい訳じゃないよ?!」
「ハハ……ちょっと意地悪でしたね、今のは」
「んーん、なんか懐かしくて」
「そうですか」
「……」
「……」
「……」
「あのさ、富海君」
「着いたら、ちゃんと聞きますよ」
「……そうだね、ごめんね、富海君にはなんか、先に話したくて」
「……イイってことよ!!」
「こらぁ!調子に乗って!私一応先輩!歳上!」
「いや、すいません」
「……ごめんね」




