表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺は猫とメンヘラがキライだ。  作者: 反射的な司馬懿
緩やかな修羅場

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

83/127

友隆の困難31

「友隆、ありがとな〜助かったよ」



「……随分と軽い感じに聞こえますけど」



「あらっ!!大変だったでしょ?!感謝のお礼のチュ!!」



「……」



「昼休憩どうぞ、少し長めに取ってきて構わないからな」



 ーーったく、何なんだよこの人は。


 正直イラッとも出来なかったぞ。その余裕感に安堵しちゃうんだよなー。


 池國先輩と恩田さんの事について聞きたい気持ちはあるけれど、聞いたところでって感じだし。


 池國先輩が帰された理由なんて……1、仕事を出来そうにないメンタル状態、2、謹慎レベルの実態あり。


 こんなトコだよな。


 どちらにせよ、もう俺に出来る事がないじゃん。


 お役御免、バトンタッチも終了して……ちょっと詰めた俺のタスクを午後に通常どおり、こなせば完了だ。


 つっても先の戦いを終えて、もう腑抜けちまったけどね。


 慣れない事とはいえ午前中だけで、てんてこ舞いだった事を考えると……やっぱ椚先輩は凄いんだなーと。そんな感想を抱くばかりじゃん。



「……じゃ、俺休憩いってきます」



「おう、いってらっしゃい」



 そう返事をしてくれる椚先輩はPCに目を落としたまま……思いのほか進捗が良くなかったんかな。


 お礼は言われたけど、内容については良いとも悪いとも評価なし。まぁ、頑張ったのは皆んなだし。


 よく頑張ったぞーって褒めて欲しかったのかな……俺。


 子供じゃあるまいし……仕事なんだから、さ。



「友隆」



「は、」



 俺がドアを開けて外に出ようとした所だ。



「お前は、凄いやつだよ」



 俺は半開きのドアの前で止まってしまった。



「えーと、それは?また冗談?」



「そんなわけあるかい」



「いや、俺じゃないす」



「そーゆーとこ!」



「……」



「今のは良い意味だぞw」



「あ、そうすか……」



 俺が解せずにいると、フォローが野次的に飛んできた。



「皆さんに……たぶん、ご迷惑を掛けなくて、よかったです」



「業務として振ったから、後でフィードもするから安心しろ」



「はい!」



 俺ってば、人間で良かった。


 後でご飯やるから安心しろって言ったって、シャノは貰えるまでずっと欲しがるもんな。


 後で貰えるぞ、俺のご飯。評価が。


 俺は急激に萎んだ風船から、飛び立つ身の軽い風船に変化した。


 そんなんで、外へ出ると目の前に緑町さんがーー



「あっ!!」



 来てもおかしくない存在のはずなのに、つい驚きの声が出てしまった。


 緑町さんはシーというジェスチャーをした後、ぺこりと頭を下げてきた。



「富海君、おはよう、お疲れさまです」



「おはようございます!お疲れさまです!」



「だから、シーってば、なんか声が大きい……」



 考えてみると、俺の声は通路中に響いてる感じ……だったかも?



「いや。すいません」



「お昼休憩?」



「はい、今から行きます」



「そっか……カツのサンドイッチ買ってきたんだけど」



「え、」



「冷蔵庫入れとくから、持って帰って?」



「はい、何でまた……」



「えーと、何となく……えーと、ほら飴のお礼!」



「飲み物だけ買って、お昼に頂きますね」



「うん……」



「あっ」



 そんなやり取りの最中、俺が緑町さんから視線を外し前を向いたので緑町さんも釣られて振り返る。



「おはよう、緑町」



 そういや、椚先輩しか戻ってきてなかった。特段気にするような事でもなくて気が付かなかったよ。



「おはようございます!すいません!」



「なにが?直行出勤でしょ?」



 おー、さすが恩田さん。緑町さんが直行業務の理由を察して謝ってきた事は知らんぷりだ。



「つーかお前らこの入り口付近でたむろすんな」



 そう言い先に追い払ったのは俺じゃなく緑町さんの方だった。課に入れと手をはらう。


 それを受けて緑町さんはさっさと課に入って行った。



「富海、休憩行くんだろ?」



「はい」



「鰻重買ってきたから、あとお茶も」



「えっ?!うな?!」



「そう『うな』買ってきたからさ、一服すんならしてきて、戻ってこい」



「は、はーい」



 何だ何だ?恩田さんから何か貰うなんて初めてだぞ。つーか、そんなキャラじゃないじゃん。


 いやいや、そんなキャラじゃないっていうのは俺の思い込みだったと今日知った訳で。


 やだ〜嬉しい。課を出た手前……ちょっとタバコ吸って、そっこー戻ろうそうしよう。






**********





「おはようございます……」



「お?お疲れー緑ちゃん急にごめんね」



「え?いや、全然構いませんでしたけど」



「いや、助かったよ。今日の友隆のタスクだと午前中の外回りはキツかったからさー」



 瞬間、ぷっと恩田さんが吹き出した。


 こら〜そこで何故反応するかね?俺は若干、恩田さんに睨みを効かせる。



「昼休憩取ってきた?」



「いえ、今から頂いて良いですか?」



「そら、勿論だけど先に報告貰ってもいい?」



「え、でも、椚先輩休憩中じゃ……」



 そう、食べ損ねた昼食の代わりに俺のデスクには恩田さんが買ってきた食い物が広がっていた。


 

「いやー、休憩後に小腹が空いてさ、仕事しながら……許容される程度にね」



「俺はちょっと多めに取って、PCは触りませんよ」



「あーそうですか、ご自由にどうぞ!」



 俺と恩田さんの絡みが珍しいのか、緑ちゃんキョドキョドしてるよ。



「じゃ、じゃあ……仕事中という事なんで、ご報告しますね」



「お願いします」


……


…………


…………


……



「ーーと、いう感じで。サブスクでの値引きはご承知のようでしたが、都度契約で今一度見積もりが欲しいそうです」



「あらーわがままねぇ、お相手さん資料も持ってるはずだから顧客価格で再提示しろってことかしら?」



「えーと、すいません……そこまでちゃんと伺いませんでした」



「うん、OK!後で友隆の寝技で現状契約のままいけるっしょ!!」



「ね?ねねね寝技?」



「あっえーと、寝技って言うのはそう言う意味じゃないよ?」



「じゃ、じゃぁ……どういう意味なんですか?!」



 あちゃーいらん事言ったわ俺。


 適当になんとかなる程度だよって伝えたかっただけなんだけど。


 こう、うまく言えんな。


 プライベートでゴルフに行くのも、食事すんのも総称『寝技』なんだけど。


 いや、主語が友隆だから反応しちまったのか?この人は。



「えーとね、アナタは特別な顧客なんですよっていうアピールの意味」



「何をするのか聞いてるんです……」



「えーとね、例えばトモだったら行きつけの飴玉をお土産に渡すって事かな」



「……」



「ん?」



「……そうですか、すいません上手く取りまとめられなくて」



「いやいや!結構面倒くさいからね、ここの人。むしろ本音を引き出してくれたおかげで突然切られるって事を防いでくれたんだよ!」



「はい、富海君への引き継ぎは……」



「あってかこれ、緑ちゃんの案件に書き換えたんだっけ?」



「そうですけど、お伺いをしただけなんで」



「んーじゃまぁ、折衷案で俺が貰うね」



「そうですね、資料作成は椚先輩がしたんですからそれが一番いいと思いますよ」



「はーい、じゃ緑ちゃんの今日のタスク上げといたから、確認したらお休憩どうぞ」



 緑ちゃんはぺこーっと、いや、パターンって畳んだ座椅子みたいにお辞儀をして自分のデスクへ戻って行った。


 普通に業務こなせてるのに、力不足だったって思っちゃいましたよね……今のやり取りだと。


 これだとキャパ以上の仕事をぶん投げられ続ける環境が改善してもなかなか自信は取り戻せないかな。


 そんな風に俺が考えを巡らせてると、何やら視線を感じる。


 恩田さん……そんな呆れた顔して見ないでよ。


 はいはい、仕事しますから。


 つーか、そういう資料作成をお前はやってるのか?ってそういう顔ですね。


 身内ノリのお仕事って、最早お仕事じゃありませんよねー分かってます。


 今だけはどうか、お許しください。


 俺は謎のブイサインを恩田さんに送ると、やれやれといった様子で首を振った。


 フツーよりもちょっと早めに終わらないと夜の会議が捗らないしな……さて俺も気合い入れてやりますか。

 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ