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俺は猫とメンヘラがキライだ。  作者: 反射的な司馬懿
緩やかな修羅場

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友隆の困難28

 結局朝はやってくる。別に俺が何かしたって訳じゃない。


 けれども若干の憂鬱は分かち合うもの。無関係じゃないとは、そういう事だ。



「早い……」



 俺は自然と覚めた目で、時計を確認する。


 アラームの鳴る一時間も前じゃねぇか。


 思いの外、頭はスッキリ、身体はずっしり。


 

「……シャノ、はよ」



 俺の夜更かしに付き合ってくれたのか、シャノには少し早かったようだ。


 俺は二度寝したら怠くなる事間違いなし。


 そう決心して、起きる事に決めた。


 俺の上で腹を出して眠っている処を邪魔しないよう、俺はそっと足を引いて布団から出る。


 飯から始めると、たぶんガバッと起きちゃうもんな。


 それは悪い事だと、ある程度の支度とトイレ掃除だけ済ます。


 コーヒーを飲みながら、時間を潰していると俺の部屋から悲しそうなアオ〜アオ〜という声が聞こえて来た。


 何事かと部屋に行くとシャノは短い声で、アンアンと犬のように鳴きながら足に纏わりついて来たのだ。



「どうしたんだよ?置いてかれたってか?」



 ドアが閉まりきらないよう、ストッパーをしていたが、シャノにはよくわからなかったようだ。



「随分甘えんぼなんじゃねぇの?」



 俺は多分へらへらしながらコイツに接している。


 可愛いと思えば思うほど、留守番も心配になっちまう訳で。



「……まぁ、飯食って機嫌なおせよ」



 俺は早起きのゆとりで朝のこのひと時を楽しむ事が出来ている。


 あげすぎないように、皿の目盛りを超えないようにカサカサっと餌を出すと頭が突っ込まれて都度飲み込まれてしまう。


 

「どのぐらいあげたか分かんなくなっちゃうだろ」



 いつまで経っても慌てて食うんだから、これは性格なのか本当に飯が足りてないのか……いやいや、最近重たい気がするぞ。


 甘やかしに気付かないふりをして、ちょっと多めにやっちゃてるんだよな。


 俺はポンポンと頭を触り、その場から離れる。


 そして転がすと餌がちょっとずつ出るおもちゃを洗い今日のおやつを補充した。



「よし、」



「……おやつ足りなかったらごめんな」



 こんな事を言っても仕方がないのだ。


シャノは秒速で餌を食べ終えて、カーテン際でベタっとしている。


 俺は俺で、朝食の時間が早まると腹が減るのも早くなる。


 だからシャノの気持ちは分かるつもりなんだ。


 今の俺に出来る最大限の事はやってるつもりだよ。


 

「だから許してな?」



 シャノは最近お決まりのフス……というため息を漏らして伸び散らかってる。





**********




「おはよーうございまーす」



 俺は遅くも早くもなく、いつも通りに出社した。そこに何か策略があった訳じゃないが……



 ーー何だこの空気感は。


 来ている面子に変わりない。俺が出社する時間に、いつもの人達が揃ってる。


 あ、緑町さんは直行業務だからな。


 それを除いて、という事。


 だいたい俺が出社して、最後に椚先輩だ。



「…………」



 おかしい、まだ何も始まってねぇはずだぞ。


 知ってるからこその思い込みか?



 ……いや。


 気付いてしまった、この空気感の正体に。


 恩田さんだ。



「おはようござ…………」



 やべ、これに触れるのは危険だ。


 俺はただの挨拶にも関わらず、言いかけた事を悔やむほど。



「ああ、富海、おはような」



俺はこれまでにない恩田さんの雰囲気に言葉を返せずにペコリと頭を下げた。



「おい池國(いけぐに)はっきり言えよ」


「椚先輩も来ちまうから、ここで収めようぜ」



 何が起こってるんですか……恩田さん。


 俺は恩田さんの方を見るのが恐くて、池國先輩の方に視線をやった。


 正直青ざめてるっていうか、ここまで気まずそうに出来るかってぐらいに表情がヤバい。



「…………あの、」



 俺です、恐る恐る声を出したのは。


 ギロリと恩田さんは俺の方を見据えて何も言わない。


 ここで黙るとより恐い。



「俺、離席しましょう……か?」



 いやいや、俺以外にも同僚はいるんだよ。なのに皆、一様に空気を装ってやがる。



「富海、来る途中に緑町に会わなかった?」



「……」



 全く予想外のパスだ。恩田さんも知ってるはずだろう。椚先輩が今日、緑町さんを直行にした事を。


 ここで黙るな、何を言い淀む事があるんだ。


 俺は一拍答えられずにいたが、それは恩田さんのプレッシャーからだと言い訳出来るだろう。



「ぃぇ…………」



「富海、あの御徒町の案件覚えてるか?」



「あーはい、池國先輩が……着工、して、た、」



 俺は恩田さんの様子から自分がおかしな事を言っているのだと気付き、途中からカクカクのPCのようになってしまう。



「なぁ、池國俺だけじゃないぞ。この案件はお前の案件だって富海も記憶してる、どうなんだよ?」



「……えー……あーぁの……それは……」



 何が起こってるのか、予測が出来ない。


 おそらくは、いや、絶対に緑町さん絡みなんだよ。


 だから俺が知るはずもない緑町さんの所在をあえて聞いてきたんだ。


 だが、そこから先が思考停止するほど……


 マジで!コワイ!!



「お前さ、恥ずかしくない訳?ここでこんな話したくないけど。緑町が仕上げた案件盗ったんだろ?」



「……それは、あぁーそんなつもりじゃ…………」



 もう震えるね、俺も震えますよ。それは分かりますよ、池國先輩。



「こーいうの、初めてなわけ?なんか、思い返すと緑町のチェック入れたような案件お前の名前になってね?」



「いやっ…….!そんなハズはーぇー……」



 ーー成程?


 恩田さんは、池國先輩の案件を押し付けてたって話じゃなくて、緑町さんの案件を盗ったって言う方で攻めてる訳か?


 俺は椚先輩からタスクリストを見せて貰ったから、その誤解はない。


 だが押し付けたにしても盗ったにしても池國先輩からは言い訳出来ない訳だ。



「…………」



 この膠着状態が無限に続くようで、そうじゃない。


 そうこうしているうちに、始業5分前になろうとしている。


 つまり椚先輩がいつものようにギリギリ出社してくるって事。


 このいつも通り戦法は俺と一緒なわけで。



「お前さ、黙ってないでーー」



 何とか言えよって所で、課の扉が開く。


 はい、時間切れです。



「……はよ」



 テンション低低の椚先輩がやってきました。



「……」



「…………」



「あ?」



「……」



「……どした?」



「……」


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