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俺は猫とメンヘラがキライだ。  作者: 反射的な司馬懿
緩やかな修羅場

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友隆の困難23

「……」



「……」



「あ、ズリー」



 椚先輩は徐にタバコを出し火をつける。

 

 と、同時に空っぽの箱をわざとらしく俺に振って見せてくる。その様子に案の定……俺は若干絶望。


 ーーと、思いきや新たな箱を取り出し、俺の目の前に置く。ただの意地悪だった。



「買っちゃったんですか」



「もう何箱目だってーの」



「……そうすか」



 俺は若干、苛立ちつつもクッキーを食べ終えて、コーヒーを啜る。


 そして念願のタバコに火を付けた。


 あっという間に、二人の周りへ煙が立ち込める。


 この空気感、目の前が実際にモヤ掛かるだけじゃない。脳内も煙に巻かれてなにやら気持ちがいい。


 

「……もう止められねーわ、お前のせいで」



「俺は暫く貰いタバコで凌ぎます」



「バッカやんねーよ、お前も道連れじゃ」


 

「シャノにタバコは毒なんで」



「そうかよ」



「……」



 椚先輩はタバコを二吸い程度で潰して、鞄から何やら一枚の紙を取り出す。


 俺もこのまま侵食されてはいけないと火を消した。


 そして差し出された紙面に目が丸くなる。


 上から下まで繰り返し隅々まで内容を把握したらまさに絶句。


 紙面は全員のタスクコントロールの時間割が一枚の紙に纏まっているもの。


 紙面自体に驚いた訳じゃない。



「俺にこんなん見せていいんですか?」



「別に……各自は把握してるもんだし」



「この斜線分が、緑町さんに振られてたやつですか?」



「少なく見積もってな……」



「16時間……」



 8時間労働で言うところの二日分が緑町さんに振られていた。



「緑町の行が足りなくて二段になっちまったよ」



 椚先輩はカラカラと氷を回してグラスを弄ぶ。



「……俺の仕事量少なくないっすか?」



「いや、お前の時間配分はリーダークラスの計算で圧縮されてるだけだから」



「給料上がります?」



「お前、考課の度に給料上り続けてるだろ、そんなやつ滅多にいねーから」



「へー凄いじゃん」



「……んで、どうよ」



「……俺の仕事の出来栄えは、椚先輩のおかげですよ」



「それは〜今度じっくり聞かせて」



「入社前にずいぶん習得させて貰いましたから」



「社外秘漏洩でクビに成りかねないから、その辺は頼むよトモくん」



「はい、で、想像通りの人もいましたけど……」



「おう、俺も同意見」



 冗談はさて置きだ。お互いちゃんと分かってる。



「これ……めっっちゃ悪質ですね」



「そう見えるよな」



 すぐに元の話題に戻る。

 書類のチェック者は原則ひとりだ。



 チェックのチェックをすると三名の時間がコストになる。


 その為、補佐業務のチェックは振った張本人の先輩や上司、何れかのひとりで完結するようタスクは決められていた。


 にも関わらず、椚チェックや課長チェックの業務を緑町さんにやらせて、チェックの名目で受け取り、そのまま上司に上げている。


 緑町さんの業務内容を見るとそうとしか読み取ることが出来ない。



「えーと、一応確認しますけど……これ間違いはないです?」



「課長のIDなら全部見えるんだよ」



「あー……」



「けどな、こういう使い方は想定されてないの、代理承認の為に使用するもんだから」



「だから、この情報を突きつける訳にもいかないと?」



「……課長次第だな。言い方はどうとでもなるけど……」



「なんすか?けどの先」



「ほら、緑ちゃん……課長に嫌われてるし」



 あー


 俺も大分心当たりがあって、ここで難しい話だと飲み込めた。


 何が難しいって、課長も椚タイプなのよ。緑町さんがつっけんどんする標的なわけで。



「緑町さん、煙たがられてましたよね」



「おー何か、緑ちゃんって一定の領域超えるとただ可愛げ無くなるんだよな……」



「椚先輩は言われてもしょうがなくないっすか?」



「友隆!それだ!」



「何が……」



「俺は畏れ多い先輩とは違う、つーか緑ちゃん同期なんだよ」



「はぁ……?それは知ってます」



「俺は社長の甥だ。超王子様だ。わかるか?」



「……」



「俺に先輩と敬称を付けてくるオッサン達。そもそも俺の先輩か同期なんだよ」



「……あっ!!」



「なんだよ」



「いや、課長に椚さんは幾つなんだって、聞かれた事ありますよ」



「……俺、そんな老けてる?」



「言動が寒いオッサン臭いんで」



「…………そうか」



 なんだよ、哀しげにすんなよ……笑い堪えるのに必死だわ。



「つまりだな、俺の先輩呼びはあだ名と一緒な訳」



「で、なんなんすか?」



恩田(おんだ)さん、いるだろ?俺の大先輩なわけよ」



「あー唯一常識的に緑町さんに仕事振ってますね」



「ソコじゃない!結局俺はあの課では王子様なんだよ!」



 まじで何言ってんだコイツ……。



「お前、今何言ってんだコイツって思っただろ?」



「……」



「……」



「……」


「…………んー俺もよく分かんなくなった」



「王子様として緑町さんは助けたいけど、社長の甥っ子パワーじゃどうにもならない壁があると」


 

「はい!その通りなんじゃないでしょうか、友隆君!」



 俺はその言葉にもう一本タバコに火を付けて、大きくため息を吐いた。




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