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俺は猫とメンヘラがキライだ。  作者: 反射的な司馬懿
緩やかな修羅場

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友隆の困難18

 俺はモヤモヤとした気持ちを抱えつつ、自分の課へと戻った。


 遠目から見て、呑気に休憩してるのは俺だけの様子。


 ま、そういう圧力を全く感じない訳じゃないけどね。俺はやる事やってるし、先輩方のお茶汲みしてるんだからどうこう言われる筋合いもない。


 そんなセルフ言い訳をしつつ椚先輩に無言でコーヒーを出す。


 サンキューポーズ的なのを取って、無言だ。


 つーかもう食い終わって、PCの画面を睨みつけていた。


 飯を食べる速度が速いって仕事に有利かもしれんな……。で、こっちの先輩はタラコのおにぎりが開封されたまま、袋の上に載ってると。


 そっと、お茶を置くと縋り付くような目で俺を見てくる。


 俺はプイと、無視して緑町さんのデスクへ向かった。



「お疲れさまです」



「お疲れさま、ごめんね、ほんと……」



 何が緑町さんの罪悪感をそこまで煽るのか、俺は結構疑問に感じる。



「薄い感じで申し訳ないんですけど、一応ミルクティーです」



「えー!!ありがとね!!嬉しい!!」



 俺はにっこり微笑みつつ、チラリと緑町さんのPCを覗き見た。



「……」



 んー、これだけじゃ何の仕事かわからねぇな。


 諦めて席に戻り昼飯を取る。


 午前中、結構巻いたから案外何でも出来ると思うんだけど。


 緑町さん外のタスク補佐だと又聞きで仕事することになるもんなー……こっそり聞きたいんだけど、どうするか……。


 俺がそう考えあぐねいていると、俺の携帯が震える。


 確認すると椚先輩からだ。


 本人の方を見てみるが、一瞥もなし。


 ひとまず開くと社用メールを確認しろと。


 まだ俺休憩中なんだけどな……まぁいいですよ、確認しましょう。



「……」



「ちょっと、椚先輩」



「休憩終わってからでいいから、十五時までそっち頼むわ」



「終わらなかったら継いでいいんですか?」



「……終わらせてよ」



「……」



 緑町さんのタスクを投げられたが、最終更新が朝開いたっきりで何も進んでいない。


 急務じゃないが明らかに主軸の優先的タスクだ。



『緑町さん、朝から何やってるんですかね。

なんか、押し付けられてません?』



 俺は自分の懸念を払拭すべく、椚先輩の携帯にメールを入れた。



 すぐに既読は付いたが、返信はなし。


 まぁ、確認したってことは椚先輩も思うことがあって俺に振ってきたんだろうからな。


 当人の緑町さんの様子をもう一度見ると、やはり焦りが顔に滲んでいる。


 このタスクを進めなければならないのに、それが出来ないという焦りなのだろうか。


 となれば、納得が出来る。



『勝手に入っちゃって大丈夫ですか?』



『チェック者が俺だから』



『了解〜』



 なんのその、帰ってくるメールはすぐ帰って来るもんで。


 俺は時計に目をやり、蕎麦の汁を捨てに行く時間を惜しんでごくりと全て飲み干した。






**********





 時刻は十五時二十分。


 あー、重い、意外と重いぞ。


 神経がすり減る。


 俺の業務の進捗を考えて同じ区分の業務は纏めて行う為PC、2台使い。


 これが裏目に出たか?


 頭がとっ散らかり始めてる。


 椚先輩にパス出来そうかも、わからねぇ。


 つーか、緑町さんが更新に気付いてないからまだ、別の業務を進めてるってことだ。


 俺がやる、俺がやるんだ。



「……」



「えっ!!」



 そう決心していた矢先、緑町さんから声が上がった。


 俺が視線を向けると目が合う。



「あれ、富海君??」



 やべ……



 俺はシーっとジェスチャーをすると緑町さんも気付いたようだ。



 すぐにパッと視線を外して、モゾモゾとしている。


 俺がメールを確認するとやっぱり緑町さんだ。



『富海くん、間違ってるよ!

それ私のタスクだから』



 いいえ、間違えてやった訳じゃないんです。


 あー


 どうして察してくれないんだ〜



『自分のタスク大丈夫?!

代わりに手伝うよ?!』



 俺は目が線になった。


 そんな事言ってる場合か?


 だ、か、ら、押し付けられるんですよ。


 そう心の中で思っても、とてもそうは言えない。


 俺は何と返信していいのか分からず、沈黙を貫いた。


 とは言え、このまま停滞させても仕方のない事。


 椚先輩の方を見ても視線は交わらない。


 こそこそと仕事をする理由。


 結局助け合いだなんだと言っても、特定の人を手伝うと嫌な矛先が向くもので。


 業務評価にも繋がるからタスク外の事は基本許されていないんだ。


 それが暗黙の了解、不平不満を生まない為の平等なタスクコントロール。


 の、はずなのに……立場の弱い人に押し付けて仕事が進んでいない事を隠す奴がいるんだ。


 結局のところ、変わってなかった。


 緑町さんがパンクしかけてた時、確かな救済があったはずなのに。


 補佐役ってのを隠れ蓑にして、いくらでも押し付けが出来るってか……。


 俺は過去を振り返り、募る想いを抱えながらも手を動かした。


 結局、緑町さん自身も変わる必要がある。


 こう考えたら、俺の出来ることなんてほんの僅かな部分なんだよな。


 俺は仕上がった緑町さんのタスクを椚先輩にあげた。


 その直後だ。



「緑町!今日の進捗は?俺がチェックの担当あっただろ!」



「あっ、ハイ!!えっと……富海君が……」



 俺は今どんな表情だろうか。


 いや、ここは通じてるんだけど、緑町さんに伝わってねぇ……ていうか椚先輩、そのキレ方は可哀想だ。



「……」



 けれども俺は傍観した。


 だってコレ……演技じゃん。



「は?富海じゃねぇよ、緑町、朝から何やってんだ?」



「……えっと、休んでたんで仕事が……すいません、言い訳で……それも私の責任です……」



「上がってるタスクに手がついてねぇだろ、その他になんの仕事があるんだよ?」



「…………それは……色々、その……」



「色々ってなんだよ、全部ほったらかしじゃねぇか。まだ具合悪いんか?」



「…………」



 他のやり合いなら外出てやってくれと俺は言ってたさ。


 こんなんされたら、全員仕事になんないもん。


 つーか気付いて!これ演技だから!

 気付けるよ!気付ける!自分のタスクページ見てるでしょ!!該当業務、椚先輩に飛んでるでしょ!



「ま、良いわ。今やってる業務転送しろ、中身みりゃ誰担当の仕事してるか分かるからな」



「……」



「俺も忙しいんだけど、何やってる訳?」



「…………あの、具合が悪くて……何も……帰ります。富海君に引き継ぎます……」



 緑町さんは、顔を真っ赤にして涙を堪えてる。


 俺に引き継ぐのかぁ、そうか、もうあなたの仕事は終わりましたよ。


 もくもくと、帰り支度をしてキーボードを震える手で拭いている。


 でも、そこでも具合が悪いって……そう言うしかないか……そうかな。


 何となく庇いたくても庇えない。


 だって仕事だからな……。


 出来ない事は出来ない、そう言わないと。キャパを超えて仕事を持ったら他人に迷惑がかかる、会社に迷惑がかかる。


 でも、それは個人の仕事の受け持ちの話だよな。


 でも、他人から、先輩から頼まれた仕事は断れないよな。


 そうだよな。


 俺にはわかんねぇけど。



「緑町さん、あの」



「……お疲れさまです」



「ハイ、気をつけてくださいね」



 緑町さんはこくりと頷いて、足早に退勤した。



「……」



「……」



 静まり返る課内。


 気まずい雰囲気が流れて各々捗らないだろう。


 突然の出来事に俺も面食らってる。


 いや、これで良かったんだと思いたい。


 緑町さんを庇う形で追求したら、多分良くないことが起こる。


 だから椚先輩は自分が嫌われたって良い、緑町さんを傷つけたっていい。


 緑町さんを傷つける事で、この先に救われる。


 それでも緑町さんが、辞めたりしないと。


 頑張ろうって思う人だって信じてるから、酷い言い方が出来るんだ。



「……」



 いや、ダメだろ。

 これじゃ、緑町さんからしたらキレ散らかされただけじゃん。


 

「椚先輩、ちょっと酷いです。コンプラ大丈夫ですか?」



「俺は業務の確認と体調の確認をしただけだ」



「……」



「緑町、まじで何してた訳?もう夕方なんだけど。業務は直接確認するから、富海は自分の仕事進めろ」



「……そうですか」



「……」



「あの、椚先輩すいません。緑町、そんなに立て込んでると思わなくて……俺、資料作成お願いしてたんですけど……」



「……いつ期日の?」



「週明けで……」



「なんて言ってお願いしたんすか?」



「……いや、急ぎじゃないからお手隙でって……」



「……そうですか」



 居た堪れず白状しだす先輩がひとり。


 そして再び静まり返る。

 

 んー、絶対他にも居るはずなんだけどなぁ……緑町さんに当たりがキツイA、B的な。

 


「あ」



 ブーと静まり返った課内にスマホの音が聞こえる。


 音の所在に目をやると、緑町さんのデスクだ。


 

「俺、追っかけてみますよ」



 すぐに状況を把握した俺は、パッとスマホを取って課を駆け出していた。


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