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俺は猫とメンヘラがキライだ。  作者: 反射的な司馬懿
緩やかな修羅場

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友隆の困難17

「戻りましたー」



 特に誰宛でもなく俺は課で挨拶をする。


 俺の存在にぺこりと一瞥する緑町さん。



「緑町さん、トーストと、これは……ハム卵サンド、どっちがいい?」



「えっあっ……トーストって……」



「えーと、フレンチトースト」



「フレンチトーストがいいな」



 俺はフレンチトーストと、紅茶を渡す……あ、



「すいません、ミルクティーでしたね」



「うーうん!!フレンチトーストは紅茶だよ!!ありがとね!!」



 間違えちゃった……余計なことに神経持ってかれてたもんな。ごめんね、緑町さん。


 俺はお釣りとレシートをそのまま渡して、一旦席に着く。


 買ったものを並べて、椚先輩の方に目をやった。


 ま、俺休憩中だし。


 どれにしような……っと、そんな遊びしてたって誰も咎めない訳で。



「……富海、富海」



「はい?」



 声がする方に目をやると椚先輩を呼び止めた先輩だ。



「おにぎり一個売ってくんね?」



「ハハ……オフィスで商売するとクビになるんで」



「朝食いそびれててさ、もう俺限界なのよ」



「じゃあ、伝書鳩やってくれます?」



「……」



 俺は椚先輩に渡すと決めた蕎麦と、サンドイッチを積んでタラコのおにぎりを先輩に渡す。



 先輩は受け取ると同時に椚先輩の方に目をやって、口をへの字にした。



「……」



 おっかねぇよな、俺もそう思うんですよ。


 そんな時にどっちの麺かなんて聞けるはずもないわけで。



「富海、飲み物は?」



「ほぇ?ないんですか?」



「椚先輩の……」



 そこまで話してる間に俺らの心臓はびくりとする。



「おい!!テメーはながらで飯食ってる場合か?!休憩すんなら、休憩しろ!!友隆!俺、蕎麦じゃない方がいいから!」



 うへーとばっちりかよ。


 俺がそんな気持ちを込めた目で、椚先輩を見てしまったせいか言い直してきた。

 


「えーと、中華冷麺、キクラゲが美味しそう……」



「……」


 

「キクラゲ好きだから、そっちくれね?」



 直ぐに冷静そうじゃん。


 そうなると飲み物も用意してあげたくなるもんで、俺は椚先輩に冷麺を渡して給湯室に向かうことにした。


 先輩はごめんなさいポーズを俺に向けてる。


 なーにやらかしたんだか、この人は。


 

「先輩は、飲み物いります?給湯室のなんでお茶かコーヒーですけど」



 つい、意地悪く聞いてしまう。だまって持ってきてやればいいのにさ。


 先輩は声に出さずに口をパクパク。


 俺は分かったふりして課を出た。





**********




「お疲れさまです」



「お疲れさまです……」



 給湯室に入ると、そういう管理をしてくれてる部署の女性がいた。



 俺はカップを3つ取りコソコソと……



「あのー利用はひとり、一日一回にして下さいね。減りがはやいんです」



「……すいません、先輩の分なんで」



「皆さんそうおっしゃるんですけどね……」



「……」



 俺、この人苦手……ってか、キライ。


 いっつもプリプリ怒ってるんだもん。



「利用記帳に名前書くんで」



「そうですか……」



 うっぜーー!!人疑っといてその言い草かよ。


 俺は飲み物を汲む前にほぼ使われていない利用記帳者に先輩方の名前を漏れなく記帳した。


 そして、汲んでいるとその女性が記帳名を確認している。



「あら?ご自身の分は?」



 俺は何だと視線を向ける。


 

「申し訳ありませんでした、記帳名と減りが全く!違うので……」



「そうでしょうね、その記帳簿知ってる人のが少ないんじゃないですか?」



 女性はハーと、ため息を吐いた。



「経費の見直しは常々なんです、利用する方にも管理の協力はして頂かないと……」



 そうね、そういう事ね。


 あんまり使いすぎると言われるっていうか、実際の利用者と記帳者が乖離してたらルールを破って使用してるんじゃないかって話になりますよね。



「……部署で通達しますよ」



 なんでか分からないが、女性は目を丸くして俺を見た。



「あの、富海さん、すいません。私、こんな仕事ばかりで……」



 エー


 何何、何でよ……。


 

「……」



「……ぐすっ」



「えーと、……大丈夫ですよ」



「……」



「……」



「すいません……」



「分かりませんけど……けど、だいたい何とかなるもんで……」



 あー俺何言ってんだろ、こんな無責任な事言って大丈夫かしら?



「……ふふ、困らせて、ごめんなさい」



 まだ涙を浮かべつつも、笑顔を作って俺に見せる女性。


 愛だったら、ギュッと抱きしめて頭をポンポンすれば終わりなんだがな……って、俺は何を考えてるんだ。



「あの、取り敢えず俺行くんで……なんかあったらまた」



「富海さん、同期では有名人なんですよ」



「は?」



「頼りにするので、また……」



「あ、はい。お疲れさまです」



 俺は後ろを見つつ、給湯室の扉を閉めた。



「……」



 うーん、結局名前は出てこなかったぞ。でも言われると同期だったかな?長らく嫌いなカテゴリに入れてたからちっとも、なんとも……。


 つーか、有名人てなんのこっちゃ。

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