友隆の困難16
今日は外で食いたい気分だったんだけどな。
そしたら昼休憩取りきれねぇし、俺もコンビニで買って帰るかな……。
そんな事を思いつつ、まず緑町さんご要望のパン、ミルクティーを見繕う。
なんだかんだ、そういうお使いには慣れてるつもりで他人の食べ物だ。気をつかうんだなーこれが。
パンも惣菜パンか菓子パンか聞いてくれば良かったよ……。
おつりが変になるから選んでもらう方式も難しくね?
俺はどっちでもいいからなー同じ値段のものねぇかな……。
そんな思考を巡らせていると、響いてくる罵詈雑言。
なんたってそんな声を張り上げるような事があるのかね?
俺と同じようにスーツをキメてて、きっと同じオフィス街の井の中に住むものなんだろーけど。
赤の他人に正義感みたいなの発揮するほどじゃねぇし、怒鳴ってんのは異常だと思うけど、怒鳴るほどの何かがコンビニでも起こりうるんかとも思うな。
そう聞き流しつつも、俺の耳おっきくなってるよ、これ。
「フー……」
俺はレジ近くの甘味コーナーで立ち止まり、ついつい話の内容を聞いてしまう。
「だからぁ、いつも買ってるんだよ?その買ってるお客様が居るってわかってねぇのか?なんで発注してねぇんだよ?」
「いえ、そちらの商品は発注してるはずですが、今日は売り切れたようで……」
「はず?はずってなんだよ?確認しろよ、伝票あるだろ?そもそも多少売れたってな、いつも買ってるお客様に行き渡るように管理しねーとダメだろ?確認しろよ」
「申し訳ありません!!確認します!!」
「あたりめーだ!!事実を述べろ!なんだよハズってのはよ!!そもそも管理ができてねぇんだ!馬鹿!!」
「…………」
うっわー……こんなキチ○イいる?マジでこえーわ。間違っても取り引き先に当たりませんように〜これはまじで祈るぜ。
そう祈りつつ、無意識に手にしていた2個入りのケーキを俺はカゴに入れてしまう。
悪いけどスーツを着た俺は助けてやれないよ……売り上げ貢献してあげるからさ。つーかお店の人も謝んなよ、そいつの言ってる事おかしーだろ。
こういうの助長させてるのまじ良くねぇわ。
ま、そうは言えない世の中なんだろ。お客様は、ほにゃらら様……謙虚な日本人の間でどうしてこうも広まったかね。
こんな感想を抱きつつも時間は止まらないので、着々とミッションをこなしていくわけで。
順番で待つようだったら、俺がキレ散らかそうかな…….このほにゃらら様に。
いやいや、もう大人だからね。
俺は結局緑町さんのパンは、二通りにして安い方で会計して選んで貰う事にした。
そんで椚先輩の飯も手が離せないパターンのパンやおにぎり、普通に食うパターンの物を選ぶ。
余ったやつは俺の腹行き。
温めると収拾つかないので、ざる蕎麦、中華冷麺……ま、蕎麦食う誘いもしたし文句言わねーだろ。
たばこを追加するんなら、ガムでも食わすか……。
シャノと遊んでやれない時に、おやつでもやるかって気持ちを思い出しちまうぜ。
そんなこんなでカゴはそこそこいっぱいだ。
レジに並ぶと、まーーーーださっきの野郎がいるじゃねぇか。
隣のレジは小銭が詰まっちゃったわけ?
ガチャガチャやってて、直ぐに空きそうにない。
キャッシュレスっていいもんなんだね。強盗も入れないだろ。
そのうちキャッシュレス強盗とか出てくんのかね?
「……」
「…………」
「………………」
「……」
俺もそこまで急いでないけどさ、昼休憩は限られてるもんで……。
前の輩も、トントンカウンターに指をやってるよ。
「……」
そして俺の後ろに、ひとり、ふたりと。
「……」
「…………」
「ハァ…………すいません!!お店の方いらっしゃいませんか?!」
俺、自分の出した声の大きさにびっくりしちゃったよ。突然声張り上げたもんだから。
「すいませーーーーん!!」
ああ、心臓が驚いてる。
つーか、はずかしいよ、視線あびるんだが。
俺は前の男をなき者にして叫んだ。だってこいつ何も商品持ってねーし。
「レジめっちゃ並んでます!!すいません!!お願いします!!」
男は少し、びくりと肩を震わせたように見えた。
ふはは……たじろいでやがる、なんなら横にずれて前を開けるようにするやんコイツ。
「すいません、もう少々……おまちくださ……」
お店の方は顔を出しつつも男の顔を見たのか、どんどん小声になっいくわけで。
「あの!!何かご用ですか?!先に構いませんか?!」
俺は男の顔を見据えて言った。
「ぁ……ハイ……」
もう、俺を止めることは出来ないぜ。
「順番譲ってもらったんで!!お会計お願いします!!」
「あ、え、あっと……」
「ありごとうございます!!袋付けて下さい!!」
俺はお店の方からも選択を奪う。
「はい、いらっしゃませ」
もちろん打ち込んで貰ってる間、この輩のフォローもするわけだ。
「すいません!!譲って貰って!!ひとつ後ろになっちゃいますね!!」
「ぇ……ああ、まぁ、あ!!ぁ……どうぞ、どうぞ……」
この間に4人。後ろには並びが増えていた。
男は、気が弱そうに並んでる人に順番を譲り、もう列からは外れて完全に横にいる。
「……」
そこにい続けるって事は、まぁーーだやる気か?
「店員の方も大変ですね!!おかしな人来たりしますか?!」
「えっ、いや、はい、いえ!!」
俺の語気に釣られてる。
後ろからというか、隣からもクスクスと笑い声が聞こえる。結構こいつ管巻いてたもんな。皆さん周知のようでなによりだ。
「ありがとうございます!!いつもこのコンビニに助けられてます!!また来ます!!」
俺はもう役者だ。
つーかアドレナリン的なもんが出てる感じで、止まらない。
「列譲って貰ったんで、これ、差し上げます。急いでたんで助かりました!」
俺は会計を済ませて、その言葉に『当該男』がおそろおそる差し出した手にガムを思い切り叩きつけるよう渡す。
そう、渡したんだよ。
最後ににっこり、睨め付けたら終了だ。
椚先輩、俺揉めてません。
手を出すなんて、そんな事しません。
俺は颯爽とそのコンビニを出て行ったつもり……だ。
「……」
「ハッ……」
俺はひとり笑いが溢れた。
コンビニから数歩のところで、立ち止まり後ろを振り返る。
結局逆恨みとか、こう、……受け皿になっちまうのはお店の方だからな。
俺に出来ることは、したつもりだったけど大丈夫だったかしらね。
ーーま、いっか。
つーか、隣のレジの人。
ありゃ、途中で解決してたね。
ファインプレーじゃん?
俺、なんかいつも通りかも。
いや、もうね、絶好調、戦う心の準備出来てるわ。




